浅野中学校は東大をはじめ難関大学への進学率が高い、中高一貫の男子校です。この記事では浅野中学校を目指す家庭に向けて、国語・算数・理科・社会の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも浅野中学校ってどんな学校?
浅野中学校は1920年、実業家浅野總一郎によって創立された学校です。難関大学の合格率が高く神奈川男子御三家のひとつに挙げられます。その偏差値や進学実績の高さから学業面が注目を集めがちですが、学校自体は、学業・部活動・学校行事の三本柱を軸に据えています。実際、部活動の加入率は非常に高いです。
「九転十起」と「愛と和」を校訓に掲げていて、大きな目標に向けて失敗を恐れず努力を重ね、横のつながりだけではなく縦のつながりも大切にして、生涯の友を見つけられる学校生活を目指しています。
カリキュラムは六年間を見据えたもので、どの教科も効果的な内容になるよう編成されています。体系的なグローバル教育にも力を入れていて、特徴としては、全員で学習するプログラムから、積極的に参加する生徒を対象としたプログラムへとステップアップしていく点が挙げられます。日常生活や授業での基礎的な教養に始まり、語学実践、グローバル実践、海外アカデミー研修と移行していくのです。
難関校への進学実績も高く、2024年度の東京大学への進学者数は現役37名、既卒8名で45名。国公立医学部医学科は現役11名、既卒4名で計15名でした。一橋大学は現役11名、既卒2名で計13名、東京工業大学の現役合格者数は現役10名、既卒3名で計13名。私立大学では慶應大学が現役126名、既卒23名で計149名。早稲田大学が現役100名、既卒29名で計129名です。
大学名 | 合格者数 | 合計 | |
---|---|---|---|
現役 | 既卒 | ||
東京大学 | 37名 | 8名 | 45名 |
国公立医学部医学科 | 11名 | 4名 | 15名 |
一橋大学 | 11名 | 2名 | 13名 |
東京工業大学 | 10名 | 3名 | 13名 |
慶應義塾大学 | 126名 | 23名 | 149名 |
早稲田大学 | 100名 | 29名 | 129名 |
浅野中学校の入試概要
浅野中学校の入試について見ていきましょう。
2025年度の入試
2025年2月3日月曜日に試験を行います。出願期間は2025年 1月 8日水曜日9:00から2025年1月31日(金)14:00までです。受験料は30,000円に設定されています。募集人数は240名です。合格発表と入学手続きはどちらも2025年2月4日(火)9:00~16:00にインターネットで実施。タイトなスケジュールなので注意が必要となります。
2024年度の入試倍率
受験者数は1429人合格者数595人で、実質倍率は約2.4倍です。なお、合格者平均得点率は70.4%、合格者最低得点率は63.5%でした。過去数年と比較すればやや高めの数字ですが、浅野中学校の場合、年度ごとの得点率の開きは比較的小さいです。七割を目安にして臨むのがよいでしょう。
受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|
1429名 | 595名 | 約2.4倍 |
浅野中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
浅野中学校の一般入試における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
速読のスキルを求められる国語
国語は配点120点、試験時間50分で、大問は三つです。大問一は漢字の読み書きです。大問二、三が読解文となっています。浅野中学校の国語の特徴として一万字を超える文章量が挙げられます。
難関校の中でも多く、速読が欠かせない分量です。また、言葉の知識についての問題が読解文の大問で出題されます。説明記述は50字前後の字数指定が多いです。選択問題は選択肢の文章が長めの問題がよく出ます。
算数は年度ごとに難易度に差あり
算数は配点120点、試験時間50分で、大問は五つです。大問一は計算問題と小問集合で、大問二以降は単元別の出題となっています。グラフに書き入れる問題や説明を解答用紙に書き入れる問題もあり、ただ答えだけを書けばよいわけではありません。
なお、浅野中学校の試験において、算数が一番年度によって難易度の差が出やすい科目です。油断せず注意して臨みましょう。
理科は計算問題が数多く出題
理科は配点80点、試験時間40分で、大問四つです。各分野から各大問に問題が落とし込まれています。問題のレベルは基礎から思考力を問うものまで幅広く、計算問題もよく出ています。
とりわけ、化学・物理分野からは計算問題の出題が多いです。地学・生物からも出題されます。時事を切り口にした問題もあります。
社会は総合問題で網羅的に出題
社会は配点80点、制限時間40分で大問は二つです。大問が二つしかないことからもわかるように、分野ごとに分かれているわけではありません。2024年度は大問一が総合問題で、大問二は公民分野でした。
大問一は選択問題がほとんどで、大問二は記述問題が一問だけです。大問一では、知識問題以外に思考力問題や計算問題も出ます。大問二では百字以内で論述する力を問われるので対策が必要です。
- 国語の文章量は一万字を超えるため速読が必須で、言葉の知識問題や長い選択肢が特徴
- 算数は年度によって難易度に差があり、グラフへの書き入れや説明問題が出題される
- 理科は基礎から思考力を問う問題まで幅広い分野から出題され、計算問題では化学・物理分野からが多い
- 社会は分野をまたいだ総合問題が特徴的で、記述問題や論述力を問う問題が出る
浅野中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
浅野中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
速読を身につけよう
国語は速読を身につけましょう。文章量が一万字を超えるので、問題量からしても一分あたり750~800字を目指したいところです。
物語文でも説明文もスラスラ読めるようにします。文字を目で追う作業については、子供の得意不得意は大きく分かれます。できる大人から見れば「なぜ詰まるんだろう?」と不思議でしょうが、漢字が読めても文章それ自体をスラスラ読むのが不得意というケースは多いです。
読むのが苦手な子供に関しては、まずは定規を文章の横に添えて、自分がどこを読んでいるのかを見失わないよう工夫してあげてください。読む速度を一気に上げるのは難しいので、段階的にレベルアップしていきましょう。
記述は短い字数の中に
記述の問題数は少ないです。そのため、要点だけをまとめれば大体指定字数内に収まります。ポイントをとりこぼさずにまとめる技術を身につけましょう。
漢字の読み書きをマスターして
大問一はすべて漢字の問題で、読み書き両方が出題されます。読みも書きも失点しないよう勉強しておきましょう。難易度としてもあくまで標準レベルなので、漢字をやり込んでいる受験生であれば確実に解けるはずです。
読みやすいとはいえない
物語文を出題する学校では、意識的に子供が主人公の物語を選ぶことがあります。しかし、浅野中学校の場合はそうではありません。むしろ小学生が主人公ではない物語をあえて読ませることで、想像力を問おうとしている感さえあります。
年齢や立場の違う主人公をメインに据えた物語を読みこなす作業は難しく感じるでしょう。直感的にわからない主人公だからこそ、心情の変遷を丁寧に追っていく必要があります。心情描写に傍線を引き、時系列順に整理しながら読み進めていきたいものです。
- 速読を身につけ、一分あたり750~800字を目指す
- 記述問題は要点をまとめる技術が必要で、物語文では想像力が必要になるため類題に慣れておく必要がある
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
計算問題では失点しない
大問一にある計算問題は失点しないようにしたいところです。計算問題は多くの子供が「解ける自信」を持っています。
しかし、いざ解かせてみると失点する子供は多いです。頭で解き方を理解できるのと、実際に解いて正解を導き出すのは別です。不定方程式を解けるようにしておきましょう。
分数・小数・カッコを使う計算なので、ケアレスミスしやすいです。注意して臨んでください。
小問集合の中には難しい問題も
大問一では小問集合も出題されます。小問集合とはいえど、問題文が長いもの、難易度の高いものも混ざっているので注意が必要です。また、小問集合でタイムロスをしない処理能力も求められます。
説明記述問題が特徴的
浅野中学校の算数では説明記述問題が出題されます。2024年度はチェスの駒をルールに従い動かす問題でした。過去問をやり込んで解き慣れておきましょう。
頻出単元は立体図形、規則性など
頻出単元は立体図形や平面図形、規則性などです。よく出題されるので、解いておきましょう。体積や相似を使った計算など、過去にはさまざまな問題が出題されています。問題集の応用レベルまで解けるようにしておきましょう。
受験問題集で出題される典型的な問題も少なくありません。得点できる問題を見極めて解いてください。
小問の流れを追いかけて
大問二以降の問題では、小問ごとにヒントを散りばめていることがあります。一つの小問を解くことで次の小問の解法が導き出される内容です。そのため、順を追って解いていくとよいでしょう。
- 算数では計算問題で失点しないようにし、特に分数や小数の計算ではケアレスミスに注意する
- 小問集合の中には難しい問題があるため、過去問や問題集を通して問題文を読み取りながら迅速に解く力を養う
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか、
各分野からの出題に対応できるように
生物・物理・化学・地学の各分野から出題されるため、満遍なく対策することが必要です。生物分野や地学分野は細かな知識を問われる傾向にあり、物理・化学分野は計算問題が多く出題される傾向にあります。満遍なく勉強して対応できるようにすることをおすすめします。
写真・絵・図表・グラフが多い
理科では写真や絵、図表、グラフといった資料がたくさん提示されます。問題を解くにあたりそれらの資料から必要な情報を読み解くことが大切です。理科の問題は資料が多いため、枚数も多く、なかなか終わりません。資料の読み込みに手間取らないようにしましょう。
また、資料が多いとそれだけで難しそうだと身構えてしまいがちです。しかし、よく見れば問われている内容は基本的な知識の問題もあります。焦らずよく読んで解いてみましょう。
難易度の高い問題と易しい問題が混在
理科の入試の特徴として基本的な知識を問う内容と思考力を問う内容が混在している点が挙げられます。時間は限られているので、優先順位がカギです。特に計算問題は点差がつきやすい傾向にあるため、解けるものはすべて解くようにしてください。
時間内に解ききるのが難しい問題は後回しにします。その見極めができるように過去問をやり込んでください。
- 理科は生物・物理・化学・地学の各分野から出題されるため、満遍なく勉強し、特に計算問題の対策を中心にする
- 資料を読み解く力をつけ、難易度の高い問題と易しい問題を見極めて優先順位をつけられるようにしておく
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
大問二の記述問題で得点できるかがカギ
社会の大問一は選択問題がメインで、大問二は記述一問のみです。大問一でいかに失点しないかに加え、大問二でいかに得点するかが問われます。特に大問二は差がつきやすいです。
2024年度はSDGsの問題でした。日本の消費が抱える課題と消費者として意識すべきことについて100字以内で説明する問題です。ヒントとなる資料が四つ載っているので、そこから情報を読み取り答えなければなりませんでした。いかに資料が用意されていても、日頃から社会問題に興味がないとよい解答にはならないでしょう。時事への関心が問われます。
大問一の思考力問題で得点を
2024年度の大問一は、計算問題一つ、数を書かせる問題が一つ、それ以外は選択問題でした。選択肢の一文一文が長い問題が多く、知識だけではなく思考力も問われます。点差がつきやすいので、過去問を解いて慣れるところから始めましょう。
「適切なもの」「適切でないもの」
選択問題では「適切なもの」「適切でないもの」をそれぞれ見つけ出さなければなりません。基本的に「適切なもの」を選ぶときはそのままのフォント、「適切でないもの」を選ぶときは太字のフォントで問題文が書かれています。前の問題に引っ張られやすいので、誤らないよう注意しましょう。
- 記述問題でいかに得点できるかがカギとなるため、資料から情報を読み取る力と社会問題への関心を持つことが大事
- 思考力問題では過去問で出題傾向を掴み、「適切なもの」「適切でないもの」を見極める力を身につけておく
思考力問題で確実に得点を
浅野中学校の問題は、七割を目指して解けるように仕上げたいところです。基本問題で失点せず、思考力問題では一問でも多く得点するようにしましょう。科目ごとの対策は以下のとおりです。
国語は文章量の多さに対応できるか、小学生目線では実感するにも難しい内容をどう理解するかが問われます。速読を身につけ、さまざまな文章を読み、登場人物の心情の変化をまとめられるようにしてください。
算数は説明記述問題が出題される点が特徴的です。過去問を解いて出題傾向を把握し、対応できるようにしましょう。
理科は難易度の高い問題と易しい問題が混在しているため、優先順位を見極めてください。計算問題は数が多く点差がつきやすいので、ケアレスミスをしないように気をつけながら解ける問題はすべて解いていきたいところです。
社会は選択問題がメインですが、最後に記述問題があります。記述問題で得点できるよう時事問題を勉強しておいてください。日頃から社会問題に関心を持つようにしましょう。
どの科目でも、知識だけではなく思考力を問う内容が多く出題されるので、対応できるように準備しておいてください。