御三家のひとつとして知られる麻布中学校は、自主性を重んじる学校です。東大をはじめ旧帝大への進学率も高く、多くの家庭が麻布中学校への入学を目指しています。では、どのように勉強をすれば合格を勝ち取れるのでしょうか。この記事では麻布中学を目指す家庭に、科目別の勉強法を紹介します。
そもそも麻布中学校ってどんな学校?
麻布中学校は、東京都元麻布に位置します。1895年創立の麻布尋常中学校から始まる、130年近い歴史のある男子校です。難関大学への進学率の高さで知られていて、2023年の東大の合格者数は現役53名、既卒26名の計79名に及びます。
麻布中学校は生徒の自主性を大切にする校風です。服装をはじめ、生徒の裁量に任せています。一学年の人数は約300名で、7クラスに振り分けられるため、ひとクラス40余名で構成されています。
麻布中学校の入試概要
麻布中学校の入試について見ていきましょう。
2022年度の入試
ここでは、2022年度に実施された入試の詳細について紹介します。入試は2023年2月1日に実施されました。出願918名、受験者数880名、合格者数365名。200点満点で受験者の最高点は157点、最低点は105点です。国語・算数・社会・理科の筆記試験のみで、面接はありません。確実に合格を狙うなら、過去問で六割(120点)は得点できるように仕上げておきたいところです。
スケジュールがタイトなので要注意
2022年度の麻布中学校の入試スケジュールは、2月1日入試、2月3日結果発表、2月4日入学手続き、2月11日入学許可者説明会でした。タイトなので取りこぼしがないよう気をつけましょう。特に入学手続きをしなかったり説明会に欠席したりすると入学できないので注意が必要です。
2月1日 | 入試 |
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2月3日 | 結果発表 |
2月4日 | 入学手続き |
麻布中学における国語・算数・理科・社会の出題傾向
麻布中学における四科目の出題傾向を紹介します。
国語は小説の大問だけ
国語は60点満点で設定されています。麻布の国語といえば、長文を読ませる出題で有名です。年によって長さは異なりますが、だいたい8000字程度は覚悟しておきましょう。
毎年、出題されるのは小説だけなので、論説文や随筆文が苦手な子供には向いています。記述式の問題が多く、解答欄の枠内に答えを収めなければなりません。字数制限がないからといって、短すぎても長すぎてもNGです。過不足ない解答が求められます。
漢字の書き取りや文章を抜き出す問題、選択問題もありますが、とにかく記述力がなければ麻布中学の問題には太刀打ちできません。配点も記述に重きが置かれています。
算数は独自性の強い問題
算数も国語と同様、60点満点です。大問が六つ出題されます。出題内容としては、数の性質・速さ・規則性・平面図形が中心です。もちろん、その他の分野からの出題も多いですし、分野を横断するような出題もあります。
麻布の算数は大きく二つに分けられます。難関校向けの中学受験対策でカバーできる問題と、思考力を要求される問題です。そうはいっても、解けないような問題ではなく、習った内容を応用すれば解くことが可能です。
社会は分野の枠にとらわれない
社会は40点満点で、大問は基本的にひとつ(もしくは二つ)です。とにかく、設問の文章が長く、約四ページにもわたるため、しっかり読み込まなければ解けない問題となっています。選択問題等もありますが、メインは記述問題です。ラストに自由記述の問題があるのも特徴的といえるでしょう。
理科は記述と作図に注意
理科も社会と同じで40点満点です。大問が四つ、分野別に出題されます。文中にちりばめられたヒントを押さえるために、しっかり問題文を読み込みましょう。点差が生まれやすいのは、記述や作図の問題です。特に記述の問題は受験者の考えを問うような問題が出てきます。作図の問題は、理屈を理解していないと解けないタイプの問題です。
とにもかくにも「記述」「思考」の力が最重要になる。
麻布中学に合格したい。どんな勉強が効果的?
麻布中学に合格するためにはどういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
読み込む力を問われる問題が多い。低学年のうちは読書習慣を
国語に限らず麻布中学の問題は設問が長く、読み込む力が求められます。ただ、長い文章を読めればよいわけではありません。スピード感をもって正しく理解できる力が必要です。低学年のうちは机に向かう勉強も大切ですが、それ以上に読書習慣を身に付けるほうを重視してあげてください。図書館で本を借りる習慣、書店に立ち寄る習慣を作り、子供が常に読書できる環境を整えてあげましょう。
本を借りてきてもなかなか手を伸ばさない子供の場合、常に視界に入る陳列をするのもよいです。本を立てて表紙を見せる並べ方ができる書棚を導入してはどうでしょうか。絵本棚をリビングに置き、本を並べておくだけでも違います。
文章力をつけるために読書後に感想を書かせるのも有効ですが、面倒くさがって読書自体に身構えてしまっては意味がありません。それよりは読書後に子供と感想を話し合うところから始めてみるのがよいでしょう。感じた内容を整理する練習になります。
最初から速読をさせるのではなく、まずは音読を
最初からスピーディーに読み込むよう求めてもうまくいきません。それよりむしろ、音読をおすすめします。多くの子供は無意識に文章を読み飛ばしています。声を出して文章を読ませる取り組みをし、読み飛ばしはないか、読み間違いはないかをチェックしましょう。だいたい通しで二回読ませて、わからない言葉もその場で覚えてもらいます。
心情を追う読み方を
小説文の出題ですから、登場人物の心情を追えているかが大切です。心情は直接的な表現に留まらず、比喩として天候だったり風景だったりに落とし込まれています。心情の描かれている文章だけをピックアップして、変遷を追いかけてみるとよいでしょう。
字数制限を設けて要約や感想を
国語の問題集を解き終わったら、その文章の要約や感想を書くようにしましょう。この作業は四・五年生ぐらいでやるとよいです。要約や感想を書く際には、字数制限を設けてください。決められた字数内で必要な内容を落とし込めるようにします。
受験生は他校の過去問も
長い文章を読ませるタイプの問題は、麻布中学以外にも出題されています。たとえば、武蔵や筑駒などはその一例です。似たような形式を採用している学校の過去問は、積極的に解いていくことをおすすめします。
- 低学年のうちから読書習慣を付ける。
- 小説を読み解くための心情を追いかけることに慣れる。
- 字数制限を設けて要約・感想を書く練習を徹底する。
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
解答欄には途中式も必要。途中式を省かないで
麻布の算数は、解答欄に途中式も書いていくスタイルです。そのため、日頃から途中式をきっちり書く癖をつけておきましょう。途中式を省く子供は多く、たいていの場合ケアレスミスの原因になります。また、途中式を書いていても、雑然としていてよくわからない子供も少なくありません。ノートに問題を書く際、省略せずにまとめられているかを確認しましょう。
難易度の低い問題を確実に解けるように
麻布の問題では、速さや規則性、場合の数などは比較的難易度の低い出題が多いです。そのため、このあたりの単元をやり込んでおいて失点しないようにしましょう。過去問を見て、押さえておくべき問題の難易度を把握してください。解答欄が大きく設けられている問題ほど難問が予想されるので、本番では優先順位を考える上でのひとつの目安にするとよいです。
頻出単元の図形をやり込もう
麻布中学は図形が頻出問題なのでやり込んでおくようにしましょう。ただし、図形は難易度の高い問題が多いため問題集レベルが解けるだけではダメで、もう一段上の思考力を求められます。だからといって、問題集を解くのが無駄なわけではありません。問題集レベルが解けて初めて解き方を見つけられるような問題です。あきらめず基礎からひとつひとつ固めていくことをおすすめします。特に相似比や面積比の問題は重点的に解いておきましょう。
- 解答欄には途中式の記述が必要になる。
- 基礎から固めて思考力を付ける必要がある。
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
分野の垣根を取っ払おう
社会は分野別に学んでいく科目ですが、麻布中学の出題形式は大問一問(もしくは二問)の中で横断的に展開するものです。地理の大問、歴史の大問、公民の大問、時事の大問とバラバラに分かれているわけではないので、問題を解く際には点と点をつなげて考える力が必要となります。多くの問題集は分野ごとに分かれていますが、たとえば地理の分野を学んでいるときでも、「この場所は昔、〇〇藩だった」と歴史の分野に結び付けて記憶すると効率的です。
時事問題は日頃から
受験対策で時事を学ぶのではなく、日頃から時事について考える時間を持っておきましょう。新聞を読む習慣をつけてもよいですし、テレビやラジオでニュースを視聴するのもよいです。テレビやラジオの場合、専門外のコメンテーターが多く出ているような番組は避けて、大学やNPOなどから専門家を招いて解説してもらっている番組を選びましょう。社会問題に対して、自分の見解をノートにまとめておくとよいです。
資料を読む力を身に付けよう
資料から情報を読み取る問題が多いのも、麻布中学の特徴です。統計や地図、年表などの資料に目を通さないでいると苦戦します。チェックしておいてください。
- 各分野を横断した問題になるので、結び付けて記憶する習慣を付ける。
- 自分の見解をノートにまとめる習慣を付ける。
理科の勉強法
理科の勉強法を見ていきましょう。
社会だけじゃない。時事問題を学ぼう
理科はつい解き方を暗記して、小手先で解いてしまいがちです。しかし、麻布の問題は思考力を要求します。特に時事問題と絡めてきちんと考えさせるタイプの問題がよく出ます。社会だけではなく理科の分野でも時事問題をチェックしておきましょう。
たとえば、2022年度は新型コロナウイルスについての問題が出ています。コロナウイルスはどのような構造で、どう感染していくのかなど、まさにコロナ禍を反映した出題となっていました。理科に関連するニュースは押さえておくとよいでしょう。
図形や作図の問題にも備えて
麻布は立体図形を使った問題もよく出ます。この辺りは算数と同様計算力が必要です。図形が苦手なら算数の問題集も合わせて復習しておきましょう。また、麻布の理科では、作図の問題が難しく、点数差がつきやすい傾向にあります。
グラフを使った問題の対策を
グラフを読み解く力も求められることが多いです。苦手意識がある場合、早めに対策しておくことをおすすめします。
まるで国語?文章を読み込む力が必要
麻布の問題は難しい上に長いですが、ヒントを拾えば解けるようになっています。隅々まで読み込む力をつけておいてください。
麻布の理科で読解力を問われた問題として有名なのは、2013年度に出たドラえもん問題です。ドラえもんが生物として認められない理由を答える記述問題でした。この問題だけ見ると「どういうこと?」と慌ててしまうかもしれません。しかし、この問題に至る問題文の中に生物とはなにかを考えるヒントが隠れていたため、ちゃんと読んでいればなんらかの答えを出せるようになっていたのです。理科というより国語の能力が問われているように感じた子供もいたでしょう。
- 時事問題と絡めた出題が出る傾向にある。
- 図形と作図で点数差が付きやすい。
- 問題文を読み解く力が必要になる。
麻布中学を受けるなら読解力・記述力を鍛えよう
国語はもちろん、算数・理科・社会でも読む力・書く力が問われるのが麻布中学の特徴です。読解や記述が苦手な子供だと合格を勝ち取るのが難しくなります。低学年のうちから読書習慣をつけ、読解力を育てておきましょう。
本好きの子供であれば放っておいても自主的に本に手を伸ばしますが、そうでなければ、保護者が読書環境を整えてあげたほうがよいです。一日の中で長く過ごす場所に、見やすく取りやすい本棚を設置してみてください。読めるようになったら、記述力を伸ばすことも大切です。問題を解くだけでなく、問題文の要約や感想にもチャレンジしましょう。
麻布中学では、中学受験のテキストや問題集以上の知識がないと、解きづらい問題が出ます。時事や社会問題にも触れられる環境を作ってあげてください。ワイドショーのような専門外のコメンテーターの意見ではためになりません。専門性の高い意見に触れる機会を作ることが大切です。時事問題や社会問題を学べば、社会だけでなく理科でも役立ちます。
過去問については、早いうちに目を通してください。どんな知識を求められているかがわかれば、勉強の仕方も変わってきます。