田園調布学園中等部は世田谷区にある女子校です。この記事では田園調布学園中等部を目指す家庭に向けて、各科目の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも田園調布学園中等部ってどんな学校?
田園調布学園中等部は建学の精神として「捨我精進」を掲げている学校です。1926年の創立以来、女子が自分の人生を切り拓く人格の根を育成できるよう、教育活動を行っています。社会で自分らしく生きていくために必要な力と、その土台となる姿勢を身につけられるような教育が特徴です。
国際研修や海外交流にも力を入れていて、さまざまなイベントやプログラムを用意しています。語学力を高めるために三日間のアクティビティに参加するイングリッシュ・チャレンジ、行きのバスから英語であるイングリッシュ・キャンプ、カナダやオーストラリアへの海外ホームステイ。高校になればさらにさまざまな留学やプログラムがあり、充実の内容です。
カリキュラムにおいても面白い取り組みがたくさんあります。分野を超えた社会の課題を考えるために、教科を横断するような授業が展開するのも田園調布学園中学校の魅力です。たとえば、地震について理科と地理の両方から学んだり、「君は『最後の晩餐』を知っているか」(布施英利 光村図書)という美術作品をテーマにした評論を通し、国語と美術の両方において考えを深めたりします。
また、中等部1年から高等部2年までの間、週1コマで「課題解決学習(PBL)・探究」を実施しています。中等部ではデザイン思考の基礎を学びながら課題解決スキルを身につける、といった試みが行われています。身近な課題から日本国内の課題までに目を向けて、社会との関わりを持ちながら解決を図っていく内容です。高等部では世界にも目を向けていきます。
1学年につき5クラス編成で、40名程度によってクラスが構成されています。毎年クラス替えがあり、高2から文系・理系に分かれます。質問対応をするメンターが常駐する自習室や、中等部では指名制の補習、高等部では希望制の補習があり、学業のサポート体制も盤石です。
田園調布学園中学校の入試概要
田園調布学園中学校の入試について見ていきましょう。
2025年度の入試
第一回は2月1日(土)の午前で80名、午後入試は同日の午後で20名、第二回は2月2日(日)の午前で70名、第三回は2月4日(火)午前で30名、帰国生入試は12月1日午前で若干名です。
出願期間は第一回と午後入試が1月10日(金)8時から1月31日(金)23:59まで、第二回が1月10日(金)8時から2月1日(土)23:59まで、第三回が1月10日(金)8時から2月3日(月)23:59まで、帰国生入試は11月15日(金)8時から11月25日(月)23:59までです。受験料は、試験科目が算数のみの午後入試は一万円で、それ以外は22,000円に設定されています。
2024年度の入試倍率
2024年度の実質倍率は第一回が206名受験で86名合格、実質倍率は約2.4倍です。午後入試が174名受験で108名合格、実質倍率は約1.6倍、第二回が384名受験で160名合格、実質倍率は約2.4倍、第三回が254名受験で64名合格、実質倍率は約4.0倍です。帰国生入試は46名受験し、36名合格しました。実質倍率は約1.3倍です。実質倍率の小数点第二位以下は四捨五入しています。
入試区分 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
第一回/午前 | 206名 | 86名 | 約2.4倍 |
第一回/午後 | 174名 | 108名 | 約1.6倍 |
第二回 | 384名 | 160名 | 約2.4倍 |
第三回 | 254名 | 64名 | 約4.0倍 |
帰国生入試 | 46名 | 36名 | 約1.3倍 |
田園調布学園中等部における国語・算数・理科・社会の出題傾向
田園調布学園中等部の一般入試(四科目)における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語は大ボリュームの記述問題がラストに出題
国語は50分で配点が100点、大問は二つです。物語文と説明文がひとつずつ出題されます。選択問題と記述問題が出題され、記述問題の占める割合が大きいのが特徴です。大問一の冒頭で漢字の書き取りも出題されます。
記述問題で特に特徴的なのが大問二のラストです。提示された複数の条件を踏まえて、自分の意見をまとめるタイプの記述問題が出題されます。二~三段落にわたって書かなければなりません。それ以外の記述は、三十五字以内、七十字以内といった具合に指定字数にばらつきがあります。
算数は解き方を書く問題も
算数は50分で配点は100点、大問は五つです。大問一で計算と小問集合、大問二以降は単元別の出題となっています。途中式や考え方を書く問題が三問程度出題されます。
平面図形、立体図形、割合と比、速さ、規則性、グラフなどが頻出単元です。問題の難易度はそこまで高くなく、受験対策問題集をきっちりやり込んでいれば解けるレベルの内容です。
理科は各分野から大問がひとつずつ
理科は40分で配点は60点、大問は四つです。各大問に生物・化学・物理・地学それぞれの分野の内容が出題されます。図表やグラフを参考に解く問題が多いです。選択問題や語句を答える問題、記述問題が出ます。記述問題は実験や観察に関する出題が多いです。回路図をはじめ図を書く問題がよく出ます。
社会は大問がひとつだけで横断的な出題
社会は40分で配点は60点、大問はひとつです。問題文がとにかく長いので、読むだけでも大変です。図表を用いた出題も多く、特に地理からは地図やグラフ、雨温図が出題されます。歴史においては、時代順に合わせて並べ替える問題が出ます。ただでさえ全体の問題数が多いのに、記述問題の数が多く、時間的にタイトです。時間配分に気をつけながら進めなければならない内容だといえます。
- 国語は自分の意見をまとめる記述問題が特徴的で、算数では途中式や考え方を書く問題が出題される
- 理科では図表やグラフを参考に解く問題が多く、社会は問題数が多いため時間がタイトになる
田園調布学園中等部に合格したい。どんな勉強が効果的?
田園調布学園中等部に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
漢字の書き取りをしっかりと固めて
漢字の書き取りは大問一の冒頭で出題されます。難しい漢字が出題されるわけではないので、とめはねはらいを意識した丁寧な字を書きましょう。筆圧が弱い子供は日頃から意識的に濃く書く練習をしてください。
物語文は心情を読み取る練習を
物語文では登場人物の心情を問う問題や、その心情に至る背景を問う問題がよく出ます。そのため、登場人物の心情を追いながら読む練習をしておきましょう。慣れないうちは、心情が伝わる文章に線を引いてみるとよいです。
複数の登場人物の心情が描かれている場合は人物ごとに色分けしてみてください。心情の選択肢で間違える子供は、心情がどこでどう変化したのかを見落としているケースが多いです。変遷のポイントを押さえておきましょう。
長めの記述に対応できるように
登場人物の心情を問う記述問題では字数の多い問題がよく出ますし、ラストの問題に至っては二から三段落にわたって意見を求められます。字数の多い記述だからといって冗長な書き方をしていては減点されてしまいます。ラストの問題も、段落を分けるわけですから、段落ごとに趣旨が整理されていなければなりません。
そのためには練習が必要となります。まずは過去問で要点を落とし込む練習をしましょう。自己採点ではなく必ず塾や家庭教師の先生に添削してもらってください。
- 物語文では登場人物の心情を読み取り、変化に注目して線を引く練習が重要
- 長めの記述問題には段落ごとの整理を意識し、過去問を使った練習と添削を受けることが大切
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
計算問題に慣れておこう
計算問題は大問一で出題されます。カッコを使った小数や分数の計算が二問です。計算問題で失点する子供の多くは途中式を乱雑に書く傾向があります。いい加減な字のせいで数字を読み間違えてしまい、そのまま計算を進めてしまうケースです。たしかに、制限時間を考えると、ゆっくり途中式を書いている時間はないですから、焦ってしまうのは無理もありません。
しかし「数字を殴り書きしない」「適切なスペースを空けながら式を整理する」といった工夫だけでもだいぶ結果は変わってきます。書き方が雑なのが身についてしまっているとなかなか改まりませんから、練習だと思って計算問題集を一日数問のペースでこなしていくとよいでしょう。
小問集合で失点しないように
単元別の出題より小問集合のほうが、難易度は低めに設定されています。小問集合では、各単元の典型的な問題が出題されているので、過去問を解いてみて、理解の甘い単元があれば類題を含めてやり込んで苦手を克服しておいてください。
小問集合のレベルで失点してしまうと、合格ラインを狙うのが大変です。時間もタイトですから、一回で確実に正答を出せるよう、各単元の基本を理解しておいてください。ケアレスミスにも気をつけましょう。特殊算もすべて解けるようにしておいてください。
頻出単元を対策しよう
頻出単元は、平面図形、立体図形、割合と比、速さ、規則性、グラフなどです。過去問を解いて難易度や出題傾向を把握しておきましょう。立体図形や規則性は不得意とする子供が多い単元です。解くのに時間がかかる単元でもあるので、苦手な子供は集中的に対策しておいたほうがよいでしょう。図形では、平面図形を回転させて立体を作る問題や、立体に水を入れる問題が頻出です。
解き方や考え方を書く問題の対策を
解き方や考え方を書く問題が三つほど出ます。どれも「図や式を使って書く」問題です。採点者に伝わるようにまとめなければなりません。例年出題されているので、過去問を解いて書き方のポイントをつかんでおいてください。解答欄のスペースは大きくとってあります。過不足なくプロセスを落とし込めるようにしましょう。
- 焦らずスペースを空けて式を整理する習慣をつけ、計算問題集で毎日練習して慣れておく
- 過去問で書き方を練習し、解答欄に過不足なくプロセスを記述できるようにしておくことが大切
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
図や回路図を描けるように
図や回路図を書く問題も出題されます。問題自体の難易度が高いわけではないので、基本的な知識を頭に入れておいてください。
記述問題が出題されます
理科は記述問題が複数出題される傾向にあります。事象の背景を説明させたり、観察や実験について説明させたりする問題です。解答欄のサイズからすると、小さいものは一行、大きいものは二三行ぐらいに収めて書くのがよいでしょう。知識を覚える際は用語を先に覚えるのではなく、関連する事項を説明できるようにして覚えてください。
- 図や回路図を書く問題が出るため、基本的な知識をしっかりと頭に入れておく
- 用語を覚えるだけでなく、関連する事象を説明できるように学習しておく
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
基礎知識を固めてスピーディーに
横断的に出題されているので、難しく感じるかもしれませんが、問われている知識自体はあくまで基本的な内容がほとんどです。基礎知識をとりこぼしなく固めておいてください。
ただし、問題文も問題数もボリュームがあるので、いかにスピーディーに解けるかが問われます。過去問をやる際には毎回タイマーをかけて必ず時間内でどのぐらい解けるかを確認してください。イメージトレーニングをしておかないと、時間配分を間違えて失点する可能性があります。
整序の問題が出る
出来事を時代順に並べ替える問題が出題されます。単元ごとの時代は把握していても、大きな流れとなるとわからなくなる子供はよくいるので、短いスパン、長いスパンの両方で歴史を覚えるようにしておいてください。社会は頭の中だけで覚えるのではなく、人に解説するようにしましょう。つながりが把握しやすいです。
記述問題対策が必須
出来事の背景や語句の説明、自分の考えを書く記述問題が出題されます。ラストに出る二行の記述問題以外は、基本的に一行にまとめればよい問題なので、端的に説明できるようにしておく必要があります。
- 基本的な知識をしっかりと固め、過去問を使って時間内に解けるように練習を重ねる
- 出来事を時代順に並べる問題が多いので、短期的な流れと長期的な流れの両方を覚え、人に解説してつながりを把握する
記述に力を入れている入試問題
田園調布学園中等部の入試問題は記述問題に注力している科目が多いです。特に、意見を書かせる問題がよく出るのが特徴的で、生徒に自身の考えを表現する力を求めていることがわかります。
国語は自分の意見を二三段落にわたって書く問題がありますし、それ以外にも記述問題が複数出ます。算数は式や図を使って解き方や考え方を説明する問題が三つほどあり、スペースも大きくとられています。理科は図や回路図を書く問題や説明記述が出題されています。社会では一二行で理由や意見をまとめる問題が複数問あります。
記述問題では、読み取りまとめる力が求められるのはもちろんですが、制限時間内にこなすスピーディーさも欠かせません。どうしてもまとまった文章を書くとなると時間がかかってしまうので、過去問をやる際にはタイマーをかけて時間配分のイメージトレーニングをしておきましょう。