栄光学園中学校は神奈川御三家のひとつとして人気を集めています。この記事では、栄光学園中学校の各科目の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも栄光学園中学校ってどんな学校?
栄光学園中学校は神奈川御三家(栄光学園中学校・聖光学園中学校・浅野中学校)のひとつで、2024年度の四谷大塚の偏差値で66の学校です。栄光学園中学校は1947年横須賀市田浦にイエズス会によって創立されました。1964年に現在の場所に移転しています。
一学年は180名で中高一貫の男子校です。栄光学園中学校では保護者と連携しながら、集団教育の中でも生徒一人ひとりに配慮し、自分が大切にされているという感覚を育めるよう働きかけています。六年間の生徒の成長を二年ずつの期間に分けていて、初級段階(中学1年・中学2年)、中級段階(中学3年・高校1年)、上級段階(高校2年・高校3年)の三段階で、生徒にアプローチしています。
国際社会の一員としての自覚を促す教育が行われ、社会的弱者を排斥することなく、世界各地の国家や民族の架け橋となれる人を育てています。キリスト教的価値観やイエズス会の創立者イグナチオの精神を基盤に据えた教育方針です。
中学での落第はありません。しかし、高校への内部進学や高校各学年の進級については、学校の規定によって可否が決定します。
高校から大学への進学は、2024年度だと東京大学に47名が合格し、内37名が現役という高い合格実績を誇っています。一橋にも10名が合格し、内9名が現役です。
栄光学園中学校の入試概要
栄光学園中学校の入試について見ていきましょう。
2025年度の入試
2025年度の入試は2月2日(日)に行われました。募集人数は180名、出願はインターネットで、出願期間は2025年1月6日(月)午前9時から1月25日(土)午後11時59分までです。受験料は25,000円に設定されています。
2025年度の入試倍率
2025年度の入試は、受験者数661名、合格者数244名で実質倍率は約2.7倍、合格最高点は188点、合格最低点は141点、合格者平均点は153.8点です。なお、実質倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
2025年度入試 | |
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受験者数 | 661名 |
合格者数 | 244名 |
実質倍率 | 約2.7倍 |
栄光学園中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
栄光学園中学校の一般入試における出題傾向は以下のとおりです。
国語は論説文と物語文が出題
国語の試験時間は50分で配点は70点、大問は三つです。国語の試験問題は大問一で論説文、大問二で物語文、大問三で漢字の書き取りという構成になっています。
国語の入試の特徴として説明記述の多さが挙げられます。45字以内といった字数指定もあれば、解答欄に収まるように書かなければならない問題もあります。文章量自体は難関校としてはやや多めか平均程度です。説明記述の出題の仕方も、書く力を問われる難しい内容となっています。
算数は独自性の強い問題が多い
算数は試験時間60分で配点70点、大問は四つです。全科目で制限時間が一番長めに設定されていますが、配点は国語と同じ70点となっています。
算数の試験問題は独自性が強く、解答欄を見てもわかるとおり途中式を書く問題や、該当する答えをすべて書き出さなければならない問題などが出ます。頻出単元は数の性質、規則性、場合の数、立体図形、平面図形のあたりです。特に立体図形は頻出単元だといえます。どの単元であっても、思考力を問われる問題が多く難しいです。
理科は多角的な出題形式
理科は試験時間40分で配点50点、大問はなくすべて小問の総合問題です。理科の問題も独自性が強く、身近な問題意識を反映させた設問だったり、絵や図、グラフに書き込む問題があったりとさまざまな切り口から出題されます。
ひとつのテーマについて多角的に考えさせる内容になっていることが多いです。受験テキストを暗記しているかどうかを問うテストではなく、提示した文章や資料に潜むヒントから、思考を深めて答えを導き出すタイプの問題が多く、受験生にとっては手ごわい入試問題といえるでしょう。
説明記述の多い社会
社会は試験時間40分で配点50点、大問の数は年度によって変動しています。社会は説明記述の出題が多く、問題の多くを占めます。2025年度はラストの大問三の記述問題が長く、九行にわたる解答欄でした。前年である2024年度のラストの大問は、問一・問二にそれぞれ五行ずつ記述しなければならない構成でした。形式は違いますが、まとまった長さの文章を書かなければならない点では同じです。
社会では大きなテーマがひとつ設定されていて、テーマに関連付けた問題が出題されます。たとえば、2025年度は物流、2024年度はお金といった具合です。一応大問ごとに分かれた構成ですが、実質的には一つのテーマに基づいた総合問題となっています。
- 国語は字数指定のある説明記述が多く、算数は思考力を問う独自性のある問題が多い
- 理科は資料をもとに多角的に考える問題が多く、社会は長文の記述問題が出る
栄光学園中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
栄光学園中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
漢字を正確に書けるようにしよう
大問三で漢字の書き取りが出題されるため、確実に書けるようにしておきましょう。「とめ」「はね」「はらい」まで丁寧に書けるようにしてください。筆圧が弱すぎる子供は、正しく書けていてもそう認められないことがあるので、日頃からはっきり書く練習をしておきましょう。
字が乱雑な子供は多いですが、親や先生から注意されても、言われたとおりすぐ直せるケースはほとんどありません。癖になってしまっていると、なかなか正せないので、早いうちからの取り組みが必要です。
記述問題に対応できるようにしよう
栄光学園中学校の国語は記述問題がほとんどです。おまけに、字数指定のあるもの、ないもの、さまざまな形式で問題が出題されます。記述が苦手な子供では、とても合格ラインには到達できません。
過去問をやり込んで、塾や家庭教師の先生に添削してもらいましょう。おそらく、文章の要点の拾い方や、文体、文末表現などを細かく指導されます。指摘された内容を忘れず、より得点につながる答えを書けるようにしたいところです。
素早く正確に読む力を
文章を素早く正確に読む力も求められます。難関中学校では一万字超えの学校も珍しくない中、八千字程度で出題される年度が多いので、分量として多い学校ではありません。しかし、少なくもないので、速読は必須です。時間内に文章を読みきり、正しく文意を理解できるだけの読解力を身につけましょう。
そのためには、説明文でも物語文でも読むこと自体に慣れて、スムーズに対応できるようにしたいところです。時間がかかるようであれば、タイマーでどのぐらいの時間をかけて解いているのかを確認し、記録をつけておきましょう。時間内に解くためには何分で読み終わればよいのか目安をつけて、少しずつスピードを上げてレベルアップを図っていきます。
- 漢字の書き取りは筆圧や書き方まで意識し、はっきり丁寧に書く練習をする
- 記述問題は添削を受けながら、要点の拾い方や文体、文末表現を意識する
- 読書習慣をつけて「読むこと」自体に慣れ、速読を身に付ける
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
思考力を問う問題が多い
算数では思考力を問う問題が数多く出題されます。特に場合の数や数の性質などでは、独創的な問題が多いため、受験問題集を使ってスタンダードな対策をしても、それだけでは対応しきれません。
標準問題が解けるのは大前提で、栄光学園中学校ならではの問題にも対応できるようにしておきましょう。塾や家庭教師の学校別対策に注力し、過去問を解き、見慣れない問題が出ても落ち着いて対応できるよう仕上げておきたいところです。
平易な問題も出題される
難問が多い算数の入試ですが、中には平易な問題も出題されます。皆が正解を出す問題なので、失点しないよう確実に得点するようにしましょう。
答えをすべて書き出す問題
正答が複数あるため、とりこぼしなく答えを書き出さなければならないタイプの問題が出題されます。答えの数の指定もないため、見落としがないよう慎重に臨んでください。
- 栄光学園の算数は独創的な問題が多いため、過去問を解いて慣れておくことが大事
- 複数の正解がある問題では、見落としなくすべての答えを記入することが求められる
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
日常的な問題意識を
理科では日常的な問題意識を持つことが大切です。たとえば2025年度にはシャツに作ってしまったシミについて考える問題が出ました。こうした問題は受験テキストを丸暗記しても解けません。
日頃から疑問に思う現象があれば、突き詰めて考える癖をつけるとよいでしょう。同時に、問題をよく読めばある程度答えを導き出すためのヒントが見つかるはずなので、驚くような問題が出ても焦らずに文章や資料を隅々までチェックするようにしてください。
総合問題がひとつきりの形式に慣れておく
総合問題がひとつだけという形式なので、大きなテーマにそってあらゆる分野の知識を総動員しなければなりません。
分野ごとに大問が分かれていれば、「今は化学を解いている」「今は物理を解いている」といった頭の切り替えもしやすいですが、そうではないので、目の前にある問題がなにを問うているのかを見極めながら考える必要があります。過去問をやり込んで慣れておいてください。
予想や根拠を答える問題も
ひとつの実験に対し複数の予想を立て、どういう結果が出るのかを考えたり、そう考える根拠について説明したりする問題も出題されます。
理科の知識を用いて、採点者が一読して意味をとれるよう、要点をまとめなければなりません。過不足なく必要な内容をまとめられるだけの文章力が必要です。過去問を含めて理科の記述問題をやり込んでおきましょう。
- 日常生活で疑問に思ったことを突き詰めて考える習慣をつける
- ひとつの大きなテーマで多分野の知識を使う問題が出るため、過去問を解いて頭の切り替えができるようにしておく
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
一問一答ではなく点と点をつなげよう
2025年度は、大問一から大問三まで、物流についての問題でした。大問としては分かれていますが、テーマはひとつです。あらゆる角度から物流について考えていきます。
当然、分野別のきっちりした出題ではなく横断的に物事を考えていくタイプの出題です。総合的な知識が求められるので、一問一答で受験テキストを暗記するのではなく、流れやつながりを重視して理解しなければなりません。
特に歴史をどう覚えるかが大切
連想ゲームのようにひとつの歴史的事実や人物をめぐって、さまざまな情報と関連づけながら記憶から呼び起こせるようにしましょう。テーマ史として出題されることが大半なので、大きなつながりを押さえておかないと答えられません。
ノートにテーマ史的な年表を書き出して、自分なりにまとめてみるとよいでしょう。年号と出来事だけを切り離して暗記するのではなく、同時代の各分野における広がりを理解しておきたいところです。
解答欄に合わせて記述が答えられるように
解答欄のサイズに合わせて記述問題を書けるようにしてください。記述問題は出題数が多く、解答欄も大きめです。例年どおりなら、ラストの大問は、数行にわたって説明する必要があるでしょう。
時間配分に気をつけて、書ききれるだけの時間を残しておく必要があります。過去問を解いて問題に慣れるのと同時に、最後まで解ききるため、時間配分の感覚を磨いておいてください。適切な進め方を身につけておきましょう。
- テーマに沿った問題が多いため、流れやつながりを重視して理解することが重要
- 年号や出来事を単独で暗記するのではなく、時代背景を理解する
思考力を問う難問ぞろいの栄光学園中学校
栄光学園中学校の問題は、どの教科も思考力を問う内容となっていて難問ぞろいです。文章を書かせるタイプの出題形式が多いため、採点者に伝わるよう整理して内容を落とし込まなければなりません。過不足なく要点をまとめる力を身につけましょう。
国語は説明記述がたくさん出題されます。文章量自体は難関校の中では決して多くはないですが、記述に時間を割かなければならないため、時間配分に気をつけながら速読する必要があります。
算数は思考力を問うようなひと捻りした問題が多く、難しいです。過去問をやり込んで出題傾向を把握しておいてください。
理科はひとつのテーマに基づいて出題されます。見慣れない問題だからといって、「解けない」と決めつけず、落ち着いて設問を読み込みましょう。
社会は理科と同様、大きなテーマが設定されています。あまり得意とするテーマでなくても、点と点をつなげながら問題を解いていかなければなりません。
難関校らしい歯応えのある独自性の強い問題を出題してくる学校です。文章を落ち着いて読み、ヒントを取りこぼさないようにしてください。