「学習院」といえば、皇族の進学先としてもその名がよく知られています。この記事では、学習院女子中等科を目指す家庭に向けて、各科目の出題傾向や勉強法を紹介します。
そもそも学習院女子中等科ってどんな学校?
学習院女子中等科は1847年、孝明天皇が京都に設けた公家の学習所を起源としています。1885年に学習院より分離し四谷尾張町に華族女学校が創設され、1947年4月より学習院女子中等科、女子高等科ができました。学習院女子中等科は設立当初から「磨く」ことに重きを置き、「その時代にふさわしい知性と品性を身につけること」を掲げています。
学習においては「本物に触れる 過程を大切にする 表現力を身につける」を大切にし、「進度より深度」をモットーにする授業を実施。実験・実習を通して、本物に触れる機会を多く用意し、自ら考え、友と深め合い、的確に表現することを重視しています。
学習院女子中等科に入った生徒のほとんどが高等科へと内部進学します。高等科を卒業した後は、半数以上が推薦で学習院大学へと進みます。2024年度は学習院大学推薦が106名で、学習院女子大学推薦が2名、他大学等進学が66名です。
したがって、学習院に進みたい生徒にとって、学習院女子中等科から入学することは魅力的な選択肢といえるでしょう。2024年度、国公立大学に進学したのは2名で、京都大学1名と筑波大学1名です。私立大学だと、慶應義塾大学への進学が特に多く、21名進学しています。
学習院女子中等科の入試概要
学習院女子中等科の入試について見ていきましょう。
2025年度の入試
A入試は2月1日(土)で女子90名、B入試は2月3日(月)で女子40名の募集です。出願期間は1月10日(金)から1月27日(月)に設定されていました。
A入試のみ、またはB入試のみに出願であれば30,000円、A・B両入試に同時出願であれば60,000円です。帰国生入試は2025年1月18日で女子約15名募集でした。こちらも入学選考料は30,000円。出願期間は2024年11月22日(金)から12月3日(火)まででした。
2025年度の入試倍率
A入試は296名受験で、合格者数108名、実質倍率は約2.7倍、B入試は297名受験で、合格者数40名、実質倍率は約7.4倍でした。なお、実質倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。帰国生入試は53名受検で、22名合格です。実質倍率は約2.4倍でした。
入試区分 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
A入試 | 296名 | 108名 | 約2.7倍 |
B入試 | 297名 | 40名 | 約7.4倍 |
帰国生入試 | 53名 | 22名 | 約2.4倍 |
学習院女子中等科における国語・算数・理科・社会の出題傾向
学習院女子中等科の入試における出題傾向は以下のとおりです。
国語は記述と漢字の多さが特徴
国語の試験時間は50分で配点は100点、大問は二つです。大問一は読解、大問二が漢字の読み書きという構成になっています。大問一の読解は基本説明記述ばかりなので、記述が苦手な子供にとっては大変な内容です。大問二では二十問漢字の読み書きが出ます。
漢字は多い学校でも、十問程度の学校がほとんどなので、この問題数の多さはかなり珍しいといえるでしょう。
算数は後半が難しい
算数の試験時間は50分で配点は100点、大問は六つ程度です。大問一は計算問題で、大問二以降は単元別の出題となっています。大問一から四は基本から標準レベルで、大問五、六は難易度が高い構成です。
頻出単元は速さや図形で、特に図形は作図問題が出るので注意が必要となります。学習院女子中等科の入試は、考え方や途中式を書かなければならない問題ばかりなので、それも忘れないようにしたいところです。
理科は計算問題が頻出
理科は試験時間が30分で配点は60点、大問は四つです。各分野からひとつずつ大問が出題されています。難易度は標準から応用まで幅広いです。化学・物理・地学などの分野で計算問題がよく出ます。
2024年度の大問三の物理では、理科というより算数に近い問題が出題されていました。時事問題と絡めた出題がある年度もあります。記述問題もよく出るので書けるようにしておきましょう。
社会は問題数が多いので時間的にタイト
社会は試験時間30分で配点は60点、大問は三から四つです。各分野からバランスよく出題されています。記号選択や語句を答える問題がたくさん出る一方で、記述問題も多いです。
問題数が多い上に四問程度出る記述問題にも時間を割かねばならないとなると、スピードを要求される内容だといえます。全体としては標準的な難易度です。
- 国語は記述問題と漢字の出題数が多く、算数は後半の難易度が高く、途中式や考え方の記述が求められる
- 理科は計算問題と記述問題が多く、社会は問題数が多いため時間管理が重要
学習院女子中等科に合格したい。どんな勉強が効果的?
学習院女子中等科に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
漢字で確実に点数をとれるように
他の学校に比べても、漢字の問題数が多いので確実に点をとれるよう仕上げなければなりません。漢字をとりこぼしなく覚えるようにしましょう。苦手な子供は毎日少しずつ覚えていくようにします。
一日十問なら十問と決めて、毎日コツコツ続けるようにしましょう。「とめ」「はね」「はらい」に注意してください。筆圧が薄い子供も、くっきり書く癖をつけておくことが大切です。
漢字は、子供のモチベーションを削ぐという理由で家庭での採点が甘くなるケースもよくあります。もちろん、実際に、書字が苦手な子供の採点を厳しくすると、逆効果になりかねません。一方で、甘い採点基準でよいと考えて受験をすると、必要な点数がとれないことがあります。「とめ」「はね」「はらい」まで採点対象である認識で臨んでください。
速読を身につけよう
記述問題が多いため、文章をゆっくり読み込んでいると時間が足りなくなります。速読を身につけて、素早く読み終えて問題を解く時間に回してください。
記述をどのぐらいの速度で解けるかによって、読解に回せる時間が変わってくるので、過去問を解いて目安を見極めるとよいでしょう。過去数年の過去問を解いて、自分が読むのにかかった時間と問題を解くのにかかった時間をそれぞれ記録してみてください。
文章量自体は5000字から7000字ほどの年度が多いので、難関校の中では標準あるいは少なめな分量だといえます。
説明記述の練習をしよう
説明記述がたくさん出るので、練習をしておきましょう。記述問題で得点できない人は要点をまとめるのが苦手だったり、文章が冗長だったりと、さまざまな原因があります。
問題集の解説を読んで自己採点をしてみても、結局ポイントをとりこぼしてしまいがちです。塾や家庭教師の先生に添削してもらってください。指摘された箇所はすぐに直しましょう。何度も添削してもらっているうちに、自分の記述の弱点が見えてくるはずです。
- 漢字の出題が多いため、「とめ」「はね」「はらい」に注意し、家庭でも厳しく採点して本番で確実に点を取れるようにする
- 記述問題が多く時間が足りなくなるため、速読を身につけ、過去問を解きながら読む時間と解く時間のバランスを把握する
- 説明記述は塾・家庭教師で何度も添削してもらう
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
計算問題では失点をしないように
計算問題は二問程度出題されます。カッコや小数点、分数を使う計算など、ミスしやすい問題が出るので、解けるように計算慣れしておきましょう。
計算問題はいわゆる「点取り問題」だと思っている子供が多いですが、その割に実際に解いてみると解けないということがよくあります。その場合、なにがミスにつながっているか、早いうちに原因を突きとめなければなりません。「計算慣れしていない」のか、「雑に途中式を書いている」のか、「解き方の基本がわかっていない」のかを分析しましょう。
考え方や式を書けるように
算数では考え方や途中式の解答欄が設けられています。そのため、考え方の要点や途中式を整理して書き出せるようにしておきましょう。途中式を書き殴っている子供や省略している子供も多いですが、日頃から採点されることを意識して、書き出す習慣をつけるとよいです。
標準レベルの問題で点をとれるように
最後のほうに行くほど難易度が上がる構成になっているので、標準問題でどのぐらい点数をとれるかが問われます。図形では作図の問題も出るので対応できるようにしておいてください。
全体で見ると、受験問題集の標準問題を仕上げていれば、解ける内容が多いです。合格ライン到達を目標に、残り時間と相談して、最後のほうの難問を捨て問に回すかどうかの判断を下してください。
- ミスしやすいカッコや小数・分数の計算に慣れ、練習しながらどこでミスをするのかを分析して対策する
- 考え方や途中式の解答欄があるため、採点されることを意識しながら、整理して書き出す習慣をつける
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
基礎知識を問う問題は確実に答えよう
理科では語句をはじめ、基礎知識を問う問題が多く出ます。皆が正答するところなので、ひとつの失点が合否を分けかねません。確実に答えられるようにしておきましょう。
計算問題を解けるようにしておこう
特に化学・物理・地学分野では計算を必要とする問題が出題されます。計算問題も解けるようにしておきましょう。過去には算数に近い問題や、考え方や式を書く問題も複数問出題されています。解き方を順序だてて説明できるようにしておいてください。
記述問題にも対応できるように
長く論述するような記述問題ではなく、端的に内容を説明させるタイプの記述問題が出ます。要点やキーワードをとりこぼさず、読み手に伝わる言葉で説明できるよう過去問を中心に練習しておきましょう。
- 語句や基礎知識を問う問題での失点は合否に影響するため、確実に答えられるようにしておく
- 化学・物理・地学分野での計算問題に対応できるようにし、解き方を順序だてて説明できるようにしておく
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
基礎知識の定着化を
基本的な語句を書かせる問題などが多く出るので、一問一答をはじめ、知識が抜けていないかのチェックは絶えず行っておいてください。
とりわけ地理は覚える時期が早い分、頭から抜け落ちやすい分野です。地域や県の特徴は特に重要だといえます。各県の特徴がグラフで示されたデータを頭に入れ直しておいてください。農業や工業、特産品、雨温図などすべて覚え直しておきましょう。
時間内に解ききるための工夫を
社会は制限時間に対して問題数が多く、時間内にすべての問題を解ききるつもりで取り組む姿勢が必要です。過去問に取り組む際には時間を計って、記録をつけてください。特に記述問題は複数問出るので、手間取って時間切れになるケースも多いでしょう。
記述問題では、日頃から社会に関心を持っているかどうかや、思考力が問われることもあります。2023年度、2024年度のラストの問題は二行にわたる論述問題でした。設問が問う内容に対して自分の知る一例を挙げて論じなければならないという内容です。なお、2023年度は観光客の影響について、2024年度はマイナンバーについてでした。
日頃から時事問題に関心を持ち、対応できるようにしておかなければなりません。記述問題でタイムロスしそうな場合は、解く順番を入れ替える判断をしてください。
配点を考えれば、捨て問の判断も
60点満点のテストで、各分野20点ずつ程度の配点になっていることを考えると、だいたい四問程度出る記述問題の配点も、そこまで高くないことが予想されます。
2025年度の社会の受験者平均点は60点中36.4点なので、6割程度です。合格者平均点は非公開ですが、合格者最低点は29点なので、他で得点できそうなのであれば、記述の一部を捨て問に回すこともできるでしょう。
記述で時間がかかるのなら、他の問題を確実に得点できるよう見直すのも選択のひとつです。社会は時間がタイトなので、一番得点につながりそうな判断を下すことが求められます。
- 基本的な語句や地域の特徴など、知識が抜けていないか常にチェックし、特に地理の知識抜けがないか確認しておく
- 問題数が多いため過去問で時間配分を把握し、記述問題でタイムロスを避ける工夫をする
どの科目でも「書く」力を問われる
学習院女子中等科の入試では、どの科目でも多かれ少なかれ書く力が問われます。問題の答えがわかっていても、それを伝える力がなければ丸はもらえないので、要点をまとめる力を身につけるようにしましょう。
国語では記述問題の占める割合が大きいです。塾の先生や家庭教師に添削してもらうことで、説明記述の基礎を身につけ、得点につながる文章を書けるようにしましょう。算数は解き方や考え方を書く問題が複数出るので、解く上でのポイントを落とし込む作業が欠かせません。日頃から途中式を省きすぎないようにしましょう。
理科は実験や観察の結果を説明できるように、手順や内容を理解してください。社会も地理や歴史の説明記述は比較的書きやすい設問が多いですが、公民の説明記述は時事に関心がないと書けない問題が出ます。
理科も社会も要点を文章にまとめる力をつけるとよいです。
記述や論述の多い、学習院女子中等科の入試ですが、各科目の出題の仕方それぞれに特徴があるので、過去問をやり込んだ上で対応できるようにしておきましょう。