市川中学校は千葉県にある難関校のひとつです。自由な校風で知られる共学校で、人気を集めています。この記事では市川中学校を目指す家庭に向けて、各科目の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも市川中学校ってどんな学校?
市川中学校は四谷大塚の偏差値で男子64、女子67(試験日によって変動あり)の共学校です。1937年に設立されたのが始まりで、2003年から女子も募集するようになりました。自由で大らかな校風で知られていて、生徒の自主性を重んじています。
世界で活躍できるリーダーを輩出する「リベラルアーツ教育」を教育方針として掲げています。「真の学力」「教養力」「科学力」「国際力」「人間力」の五つの力の育成を目指し、自ら考え生涯学ぶ「第三教育」に重きを置いています。
国内の難関国立大学および海外の有力大学への高い進学率を誇ると同時に、受験成果だけではなく、幅広い分野において全国トップレベルを目指す学校です。
市川中学校の入試概要
市川中学校の入試について見ていきましょう。
2023年度の入試倍率
2023年度の第一回入学試験における受験者は、男子が1728人、女子が880人でした。合格者は、男子が738人、女子が305人です。小数点以下第二位四捨五入で男子の倍率は約2.3倍、女子の倍率は約2.9倍でした。第二回入学試験における受験者は、男子が302人、女子が215人、合格者は男子が35人、女子が17人で、倍率は男子が約8.6倍、女子が約12.6倍です。
2023年度の12月帰国生入試における受験者は男子が49人、女子が51人で合格者は男子が20人、女子が27人でした。倍率は男子が約2.5倍、女子が約1.9倍です。帰国生の第一回入学試験は受験者が男子46人、女子15人で、合格者は男子22人、女子8人。倍率は男子が約2.1倍、倍率は女子が約1.9倍でした。
2023年度の入試倍率一覧
男子 | 女子 | |
---|---|---|
第一回入試 | 約2.3 | 約2.9倍 |
第二回入試 | 約8.6倍 | 約12.6倍 |
12月帰国生入試 | 約2.5倍 | 約1.9倍 |
帰国生第一回入試 | 約2.1倍 | 約1.9倍 |
2024年度の入試
2024年度は第一回入学試験が男子180名、女子100名の募集。第二回入学試験が男女40名の募集でした。出願期間は第一回入学試験が2023年12月15日(金)12:00~2024年1月16日15:00、第二回入学試験が2024年1月22日13:00~2024年2月3日17:00でした。受験料は第一回入学試験が28,000円、第二回入学試験が26,000円です。
また、先ほども触れたとおり、市川中学校は帰国生入試があり、12月帰国生入学試験と第一回入学試験のふたつが行われています。12月帰国生入学試験は若干名の募集で、第一回入学試験(帰国生)は第一回入試(一般)の募集定員に含まれる範囲での募集でした。
12月帰国生入試の出願期間は2023年11月17日12:00~2023年11月30日15:00。帰国生の第一回入学試験の出願期間は2023年12月15日12:00~2024年1月16日15:00となっています。受験料は12月帰国生入試が26,000円、第一回入学試験が28,000円です。
市川中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
市川中学校の一般入試における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語は文章量が多い
国語の試験時間は50分で配点は100点です。大問は三~四つで、論説文・物語文・漢字といった構成になっています。2023年度に11,000字という大ボリュームの文章が出ているため、速読は必須です。ただし、問題文の長さの割に問題数は少なめなので、考える時間は比較的とりやすいでしょう。漢字は大問として出題されるだけではなく、読解文の中からも出題されます。難しい漢字も出るため、語彙力がないと解くのは難しいでしょう。
算数の難易度は年度によって異なる
算数の試験時間は50分で配点は100点です。算数の難易度は年度によってかなり開きがあるため、対策をするのが難しいかもしれません。頻出単元は平面図形と立体図形です。他には規則性、数の性質、割合、速さなどが出題されます。大問一は計算と小問集合です。大問二以降は単元別の出題となります。市川中学校の入試では、持ち物にコンパスと記載されていて、作図が必要となる問題が出題されます。対策して臨みましょう。
理科は問題数が多い
理科の試験時間は40分で配点は100点です。理科は問題数に対して時間が少ない構成となっています。問題文自体も長く、会話文形式の出題もあります。観察や実験の問題が多いこともあり、図表やグラフを用いた出題がされています。難易度は年度によって開きがあり、八割とれる簡単な年もあれば、難しい問題が出る年もあります。分野の比率としては、生物は比較的少なめで、物理・化学・地学のほうに重心が置かれがちです。そうはいっても、網羅的に出題されていることに変わりはないので、全分野の対策が必要です。
社会は歴史が多めの構成
社会の試験時間は40分で配点は100点です。2022年度以降、大問一二は歴史、三が地理、四が公民と時事という構成になっています。なお、2021年以前は年度によって構成が異なっていたので、今後またそうした出題傾向に戻る可能性もあります。グラフや地形図、地図を用いた問題が多いです。問題文が長く、資料も多いため、時間配分に気を付けて解く必要があります。
- 国語は1万字を超えるボリュームの問題、算数は作図の問題が頻出する傾向にある
- 理科は計算問題が多く、社会は時事問題がよく出題される
市川中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
市川中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
10,000字以上にも対応できるように
市川中学校の文章量は多いため、速読に対応できるようにしておく必要があります。一万字は難関校の中でもかなりの分量です。文章の読みやすさは年度によって異なります。難解な文章が出ても速読できるだけの練習を積んでおきたいところです。
記述は80字前後
出題形式は記述と選択問題がメインで、記述は80字前後なのでそんなに長くないです。短い中に問われている内容の要点が落とし込めるかが問われます。本文中のピックアップしたいキーワードに印をつけて臨みましょう。
選択問題では文章の理解度が問われる
選択問題では文章の内容を本当に理解できているかが、さまざまな切り口で問われます。選択肢は五つほどありひとつずつが長いケースもあるので、よく読み比べてください。とりわけ論説文の選択問題では、論旨をちゃんと追えているかが繰り返し問われます。文章量が多いからと読み飛ばさないようにしましょう。
論説文の選択は社会問題を意識している
2024年度は大問一の中で二つも、ジェンダー関連の文章を扱っています。ひとつは江原由美子・山田昌弘『ジェンダーの社会学入門』からの出題で、もうひとつはスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著三浦みどり訳『戦争は女の顔をしていない』です。
また、2023年度は佐藤喜和『となりのヒグマ:アーバン・ベア問題とはなにか』から出題しています。ジェンダーにせよ、ヒグマの出没にせよ、社会問題となっているテーマが取り上げられる傾向にあります。社会で時事を学ぶ際には、国語でそのテーマが出題される可能性も意識しておきましょう。また、日頃から、社会問題に関心を持っておくことをおすすめします。
- 分量の多い問題に備えて速読を身につける練習が必要
- 社会問題に関する問題が出題されるので日頃から関心を持つように心がける
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
作図の対策をしよう
市川中学校の算数といえば、作図問題が出題されるという特徴があります。作図問題の対策をするためには、塾や家庭教師の学校別対策コースに参加したり、過去問をやり込んだりしましょう。他の学校でも作図問題を出す学校はありますが、出題傾向の違いもあるので、まずはそのふたつが一番の近道です。
図形の対策をしておこう
市川中学校では立体図形および平面図形が頻出です。応用問題まで解けるよう問題集をやり込みましょう。なお、立体図形の問題では、捨て問レベルの難易度の高い問題が出る年度もあります。取捨選択の見極めが肝心です。基本的に、市川中学校の算数は序盤の難易度が低く徐々に難しくなっていくので、比較的判断には困らないでしょう。解き始めて、これは無理だと思ったら早めに切り上げてほかの問題に回してください。
特殊算を解けるように
特殊算の問題もよく出題されるので、使いこなせるようにしておきましょう。しばらく解いていないと抜けてしまっていることもあるので、受験前に確認しておきましょう。
数の性質・規則性をやり込んでおこう
数の性質や規則性は、苦手な子供の多い単元ではありますが、市川中学校の場合、後半に出る図形の問題よりは難易度が低いケースが多いです。つまり、得点につながりやすい単元なので掘り下げて勉強してください。計算で解ける問題もあれば、手を動かす問題も出ます。さまざまなバリエーションに挑んでおかないと、本番で判断に迷いタイムロスします。問題数をこなしておきましょう。
- 作図に関しては塾・家庭教師の特別コースを利用するか、過去問をやり込む必要がある
- 数の性質・規則性の問題で失点しないよう、十分にやり込んでおく
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
計算問題が多め。思考力を問う問題も
理科は全分野にわたって計算問題がよく出ます。中学受験の定番の計算問題もあれば、問題文を読んで思考力を問うタイプもあります。そのため、中学受験対策の基本的な計算を解けるようにしておくのはもちろんですが、資料やグラフから必要なデータを読み取って、計算できる力を養ってください。
まずは過去問を解いて、どんな問題が出題されてきたのかを把握しましょう。たとえば、2024年度は土地が隆起する速度を問う問題が出題されました。2023年度の地学では火山噴出物の計算が出題されています。経験のない問題は身構えてしまいがちですが、図表やグラフから算出できるようになっているので、注意深く問題を読んでください。
時事を反映させた問題も
2024年度はコロナウイルスの抗原検査の仕組みを問う問題です。こうした問題は中学受験のテキストだけやっても、当然解けません。文章を読み解く力や思考力を問う問題です。なお、抗原検査の仕組みに関心を持つ子供であれば、問題文からヒントを探すまでもなく、記述問題は解けたでしょう。知識の下地は大切です。理科関連の時事問題は意識的に学んでおくことをおすすめします。
化学変化が頻出
化学分野では化学変化の問題がよく出ています。特に水溶液関連の単元は頻出なので、応用問題までやり込んでおいてください。
- 資料・グラフから必要なデータを読み取り計算できる力を養う
- まずは過去問を解いて出題傾向に慣れる
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
資料集の活用を
ここ三年は歴史の比率が高いので、力を入れて対策しておきましょう。歴史はひとつの出来事、ひとりの人物に留まらず関連付けて覚えておかないと解けない問題が多いです。そのため、資料集を活用して情報を広く深く理解しておいてください。
地理は地図や図表が多く出る
地理分野は白地図を使って各地域の情報を覚えておきましょう。天気や農業・工業、輸出入などのデータを頭に入れておいてください。日本地理だけではなく世界地理も出ます。各国の産業や輸出入も勉強しておいてください。
日頃から政治に関心を持とう
公民分野では政治はどういう仕組みによって成り立っているのか、地方自治はどのように行われているのか、など細かな知識が問われます。中学受験のテキストに載っている知識を片っ端から詰め込むのもよいですが、日頃からニュースを見ていて疑問に思った点をすぐに調べるようにするとよいでしょう。細部まで訊かれるので、詰め込んだ知識だけでカバーするよりも、日頃からコツコツと理解を深めておきたいところです。
- いかに資料集を活用して情報を広く深く理解しておけるかが重要
- 公民は詰め込み型の勉強法よりも日頃からコツコツと理解を深めることが大事
各科目の配点が同じであるため、満遍なく勉強する姿勢が必要
四科目すべてが100点の配点なので、理科・社会での失点が大きく影響します。全科目を満遍なく勉強しなければなりません。
国語は一万字を超えることもあるため速読をできるようにしましょう。算数は大問一二といった序盤の難易度の低い問題を確実に解けるようにし、その上で難しい問題も合格ラインまで解けるように仕上げてください。作図の対策をし、難易度の高い図形問題についてはどれを解くか取捨選択ができるようにしましょう。
理科は計算問題を解けるように仕上げ、思考力を問う問題にも慣れておいてください。社会は細かな知識を問う問題が多いので、一問一答で覚えるのではなく資料集を活用したり、図表を読み込んだりして、総合的な知識を身につけましょう。
国語・理科・社会は社会問題や時事問題を取り入れた出題があります。机に向かうだけが受験勉強ではありません。日頃から社会にアンテナを張っておきましょう。