女子学院中学校は女子の御三家のひとつです。その偏差値の高さや難関大学への進学率の高さ、生徒の自主性を重んじる校風で名門校として知られています。この記事では女子学院中学校を目指す家庭に向けて、出題傾向や各科目の勉強法について紹介します。
そもそも女子学院中学校ってどんな学校?
1870年の創立以来、キリスト教の精神を基盤に、自立した女性の育成を目指してきた女子校です。ジュリア・カロゾルスによって築地居留地に設立された、A六番女学校(のちの新栄女学校)が始まりでした。校名をいまの「女子学院」と改めたのは、桜井女学校と合併した1890年のことです。
女子学院は自由な校風で知られています。校則や制服で生徒を縛り付けることがありません。無責任なのではなく、真の自由が持つ責任を教えているのです。
2023年度入試では東京大学合格は27人(内既卒生5人)で、他にも難関大学に数多くの生徒を送り出しています。
女子学院の入試概要
女子学院中学校の入試について見ていきましょう。
2023年度の入試
2023年度の入試は2月1日に実施されました。募集人数は240名で試験内容は国語算数理科社会の四科目です。2023年度は面接が中止になりましたが、2024年度はグループ面接が実施予定です。基本的に受験生五名を、面接官二名が担当します。時間は約10分程度なのでそう長いわけではありません。合格発表は2月2日なので、試験翌日には合否がわかります。
合否の判定材料は
合否は、筆記試験・グループ面接・小学校校長の報告書によって判定されます。
女子学院における国語・算数・理科・社会の出題傾向
女子学院における四科目の出題傾向を紹介します。
国語の出題傾向
100点満点の配点で試験時間は40分です。大問は2問で「随筆」や「論説文」メインの出題となっています。2023年度は約7400字でした。女子学院の問題は年度ごとに出題形式の変化があるため注意が必要です。ただし、国語で時間をとられがちな説明的な記述問題は2022年度も2023年度も変わらず六問でした。
女子学院の扱う題材は抽象的なものも少なくないため、少しでも内容を理解できるよう語句の意味をきちんと押さえておく必要があります。ところが、女子学院の問題文には語注がありません。つまり難しい言葉が出てきても一切説明はないのです。そのため、受験者の語彙力が問われます。
なお、女子学院の国語では知識を問う問題が三割程度を占めます。語句や漢字は一問でも落とすと命取りです。
算数の出題傾向
100点満点の配点で試験時間は40分です。女子学院の算数は大問5~7問もあります。量があるため、スピード感をもって解き進めなければなりません。
女子御三家のひとつという難関校でありながら、突き抜けて難易度の高い問題はあまりなく、いかに点を落とさないかの勝負になります。合格ラインに達するにはたいたい八割正答を目指さなければなりません。
問題は難易度順に出題されないため、解く際の優先順位をどうするかを考え抜く必要性があります。解答用紙には解き方まで書かなければならないタイプの出題形式です。問題の解き方がきちんと伝えられるよう仕上げておきましょう。
理科の出題傾向
100点満点の配点で試験時間は40分です。女子学院の理科の大問は4~5問です。大問は生物・化学・地学・物理とバランスよく出題されます。理科もまた問題数が多く、解く上でのスピードが求められます。
実験や観察についての問題が比較的多く、グラフや図表を読む力も必要です。女子学院のグラフは問題集で出題される形式とは縦軸や横軸が異なっているケースがあります。たとえば、『気体の発生』の問題で時間を横軸にとった女子学院の問題は、グラフとしては珍しいです。
また、難易度自体は高くありませんが、問題文を読み込まないと意図を取り違えてしまうタイプの問題が出ます。グラフにせよ、文章にせよ、問題の意図をじっくりと汲み取ってから解く必要があるのです。
社会の出題傾向
100点満点の配点で試験時間は40分です。女子学院の社会では、大問は3~4問あります。選択肢を選ぶ問題がメインですが、短い記述も出ます。選択問題といっても、「正しいものをひとつ選べ」といったわかりやすい形式ではありません。また、分野を超えて横断的な出題をしてきます。
近年ではジェンダーギャップの視点からの出題も少なくありません。女子学院の教育方針と密接にかかわる部分なので、日頃から意識してニュースをチェックするとよいでしょう。
- 四科目の配点がすべて同じ
- 難関校にしては難易度が高くない
女子学院に合格したい。どんな勉強が効果的?
女子学院に合格するためにはどういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
随筆・論説文を中心に対策
2010年度には物語文も出ているものの、基本的には随筆や論説文がメインです。随筆の場合は心情を追いながら読めるようにしましょう。論説文の場合は対比されているキーワードを拾いながら主旨を把握していくとよいです。気になる部分には傍線を引きながら読み進めてください。キーワードを探し直す手間が省けます。
随筆においても論説文においても、一文一文だけではなく、構成にも注目してください。「起承転結」「序論・本論・結論」といった構成を意識して文章に臨みましょう。それだけで書き手の伝えたい内容が読み取りやすくなります。
形式段落ごとの意味を整理しながら読み進めてみてください。「読みながら考える」が基本です。
語彙力強化は早めに
論説文では難しい言葉が多くなりがちですし、扱うテーマが抽象的で難解な年度もあります。しかし、女子学院の問題には語注がありません。そうなると、解き手の語彙力は必須です。塾のまとめ系教材や、家庭教師おすすめの語彙の教材を早いうちからやっておくとよいでしょう。
たとえば、四谷大塚の『四科のまとめ』には語彙に関する知識が詰まっています。そうしたまとめ問題集から、対策に必要な部分を押さえておくことをおすすめします。もちろん、常日頃から問題を解く際にわからない単語が出てきたら、その都度、覚えるようにしましょう。
他の学校の過去問にも挑戦
女子学院の国語に慣れるためには、似た傾向の問題を出す他校の過去問に挑戦するとよいでしょう。具体的には青山学院などが挙げられます。
漢字・語句問題から解こう
漢字の出題はラストで、語句問題は大問の最後にあります。そのため、時間配分に自信がない場合、ラストの漢字から解いてしまうのも手です。過去問をやり込んで、自分に合ったやり方を見つけましょう。
- 「起承転結」「序論・本論・結論」の構成を日頃から意識する
- 早めに語彙力強化に取り組む
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
難問奇問は出ない
女子学院の算数では難問奇問は出ません。時間制限さえなければ、女子学院を受ける生徒なら満点に近い点数を出せるレベルです。実際には時間制限がタイトなので、より効率的な解法でミスなく処理する力が求められます。そのため、常日頃からタイマーをかけて勉強をする癖をつけましょう。
『円周率』『平面図形』『立体図形』は必須
『円周率』『平面図形』『立体図形』の問題が頻出です。特に最近では角度の問題、水の深さと体積の問題がよく出ています。必ず押さえておきましょう。円周率の問題は毎年出ているため対策しておくとよいです。
計算スペースを有効に使おう
解答用紙の中に計算スペースがありますが、あまり広くはありません。有効に使えるよう整理して書く習慣をつけましょう。計算スペースを乱雑に使うと計算ミスのもとになります。
- 難易度が低いぶん時間制限がタイトなためタイマーをかけて勉強する
- 計算スペースが広くないため日ごろから整理して使う習慣を付ける
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
女子学院の理科は似たような問題を続けて出さない
女子学院の理科では、前年に出題された問題と類似する問題が出されることは少ないです。過去問に取り組む際には、そのことを念頭に置いておきましょう。四分野からバランスよく出題されるため、どの分野も疎かにせず対策しておく必要があります。
実験・観察の問題は掘り下げておこう
女子学院の理科では、実験・観察の問題が多めです。実験・観察の問題では、実験方法について図示を求められたり、グラフや図表を読み取ることを求められたりします。難易度自体が高いわけではありませんが、よく理解できていないと解けない問題です。
グラフや図表の問題が出たら、自分でもグラフや図表を書いてみるとよいでしょう。生半可な理解では解き進められません。
計算問題は少なめで選択問題が多い
難関校の多くは。理科において難しい計算問題を出題してきます。点差がつきやすく、入試には最適だからです。女子学院でも計算問題は出題されますが、他校と比べると少なめといえます。女子学院で多いのは選択問題です。注意点として、女子学院で「正しいものを選びなさい」という問題が出た場合、該当する選択肢を「すべて」選ばなければなりません。過去問をやる際には問題文を確認してください。
『四科のまとめ』『コアプラス』などのまとめ教材を
女子学院の問題は難易度があまり高くないので、『四科のまとめ』や『コアプラス』といった基礎を固めるまとめ教材が役立ちます。中学受験塾に通っている家庭は塾のまとめ教材を、家庭教師をお願いしている場合は、先生おすすめのまとめ教材を周回してやり込んでおきましょう。難易度が高くない分、とりこぼしがないようにしておかないと、点差をつけられてしまいます。
- グラフや図表は理解したつもりでは解けないため完全に理解する癖を付ける
- まとめ教材を何週もする
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
バランスのよい出題に対応しよう
地理・歴史・公民・時事問題からバランスよく出題されるため、満遍なく勉強しておく必要があります。しかし、ただ分野別に勉強していても解けないタイプの問題が出るのが難しいところです。女子学院ではある地域にまつわる問題、あるテーマにまつわる問題、あるいは女子学院に関連する問題が出題されます。そうした問題では分野を横断しての出題になるため、知識と知識を関連付けられないと解けません。そのため、勉強する際はできるだけ関連のある事柄を書き出して、合わせて覚えておきましょう。
記述問題は短いものばかり
女子学院の社会の記述は短いものばかりなので、日頃から要点だけをまとめる練習が必要です。理由を問う問題が多いので、物事の背景を簡潔に説明できるようにしておきましょう。
資料を読み取れるようにしておこう
資料を読み取る問題も毎年複数問出題されています。分野としては地理・公民が多いです。テキストや問題集に出てくる地図記号やグラフは頭に入れておきましょう。
歴史は流れを頭に入れて
歴史を勉強する際は、人に説明しながら覚えていくとよいです。そうすると起きた事柄の流れを押さえられます。歴史では起きた事柄を古いもの順に並べ直す問題が出ることがあります。そのときに、流れを押さえていないとうまく解けません。年号を覚えるにしても、中学受験の範囲のすべてを網羅するのは困難です。説明を通して因果関係を整理しましょう。
- 要点だけをまとめる練習をしておく
- 地図記号やグラフは必ず覚えておく
問題が易しい分、高得点が必要
女子学院の問題は難関校にしては難易度が高くありません。その分、合格ラインに達するためには高得点が必要です。八割がた正解するつもりで勉強しましょう。
国語は随筆・論説文が中心です。抽象的なテーマが多い上、語注がないため、語彙力が必要となります。早いうちから読書もしくは勉強を通してたくさんの言葉に触れることをおすすめします。
算数は問題数がとにかく多く、一問にかけられる時間も他校に比べて少ないです。高得点をとらない限り受からないので、ハイペースのままケアレスミスなしで答えを出さなければなりません。過去問を解いて時間感覚を養うことが大切です。本番のイメージを描いておきましょう。
理科は選択問題が多めです。基礎的な問題も多いので、まとめ教材のような問題集をやり込んで対策しましょう。実験・観察の問題もよく出ます。図表やグラフにも対応できるよう、問題の数をこなしておいてください。
社会は各分野を丁寧にやり込んだ上で、横断的な出題にも対応できるようにしておきましょう。
女子学院は四科目の配点がすべて同じです。言い換えれば、どの科目も疎かにはできないということです。確実に合格ラインに到達することを目指しましょう。