慶應義塾には、中等部と普通部と湘南藤沢中等部の三つの中学校があります。中等部は共学校であり、桜蔭や女子学院と並んで女子の最難関のひとつとしても有名です。この記事では、慶應義塾中等部を目指す家庭に向けて、国語・算数・理科・社会の勉強法について紹介します。
そもそも慶應義塾中等部ってどんな学校?
慶應義塾中等部は東京都港区に位置し、慶応大学の三田キャンパスの近くにあります。慶應義塾女子高等学校も隣です。
慶應義塾中等部では、「自ら考え自ら判断し自ら行動してその結果に責任を持てる自立した個人を育む」を基本理念として掲げています。
一学年の生徒数は約240名で6クラスに振り分けられています。募集人数は男子140名、女子50名で、残りは幼稚舎(慶應附属小)からの進学者です。なぜ女子の一般募集が少ないのかといえば、これは女子の内部進学者を多く受け入れるためです。幼稚舎からの進学先として、男子は慶應義塾中等部か慶應義塾普通部の選択が可能です。しかし、女子は慶應義塾中等部を選ぶより外ありません。湘南藤沢中等部も選ぶことは可能ですが、希望者は少ないです。
結果、一般募集の枠が少なくなり、例年女子の偏差値は男子よりかなり高くなります。四谷大塚の偏差値では、男子の偏差値が64、女子の偏差値が70となっています。ですから、女子にとっては桜蔭や女子学院と並ぶ最難関なのです。
慶應義塾中等部の入試概要
慶應義塾中等部の入試について見ていきましょう。
2023年度の倍率
男子の志願者は851人、受験者数は697人、合格者は135人でした。倍率は約5.16倍です。女子の志願者は445人、受験者数は352人、合格者は58人で約6.06倍です。
2024年度の募集要項
2024年度の募集人数は男子120名、女子50名です。ただし、内部進学者の進学状況によって多少変動します。出願情報入力および入学検定料支払いは2023年12月21日(木)13:00 ~ 2024年1月11日(木)19:00です。入学検定料は30,000円です。
なお、一次試験は国語、社会、理科、算数。二次試験は一次試験合格者のみが受けられる仕組みで、体育、面接(保護者同伴)となっています。体育の内容はシャトルランニング、縄跳び、キャッチボール、ジグザグドリブルなどですが、上手くできているかを厳密に見ているわけではなく、一生懸命やろうという姿勢を見ているようです。
スケジュールは、一次試験が2月3日、一次試験の合格発表が2月4日、二次試験が2月5日、二次試験の合格発表が2月6日という流れです。なお、一次試験は慶應義塾大学三田キャンパス、二次試験は慶應義塾中等部校舎で実施されます。入学手続き日は2月7日です。
慶應義塾中等部における国語・算数・理科・社会の出題傾向
慶應義塾中等部における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語は知識問題の配点が大きい
国語の試験時間は45分で、配点は100点です。2023年度の出題は、大問一が小説、大問二が随筆、大問三が天声人語(朝日新聞)、大問四が知識問題、大問五が漢字の書きとりでした。文章量は五千字から六千字といったところで、そんなに多くはありません。
他の難関中学が記述問題に重きを置く中で、慶應義塾中等部ではほとんど記述問題が出題されません。2023年度も説明記述が一問あっただけです。基本的に選択問題が大半を占めます。
慶應義塾中等部で特徴的なのは読解の大問の中に、知識問題が組み込まれている点です。加えて、2023年度の天声人語からの出題も、知識を問われる問題ばかりでしたし、大問四・五は知識問題(漢字の書きとり含む)ですから、国語のテストにおける知識問題の占める割合は非常に大きいといえます。
算数の問題は平易だが数が多い
算数の試験時間は45分で、配点は100点です。2023年度の出題は平易な問題が多いですが、時間に対し問題数が多いのでなかなかすべてを解くことができません。満遍なく広い範囲から出題されます。
2023年度は、大問一は計算問題と一行問題。大問二は小問集合、大問三は図形の小問集合、大問四は速さ、大問五は立体図形、大問六はパズルでした。後半にいくほど難易度が上がっていく構成になっています。見直しに時間を回せない中でどれだけ正確かつスピーディーに問題を処理していけるかが問われる内容です。
理科では実験や観察の問題が多く出題
理科の試験時間は25分で、配点は50点です。大問は四つから五つほどで、選択問題が大半を占めます。分野は生物、地学、化学、物理と網羅的に出題されます。問題数の多さに対し時間が少ないため解く際にはスピードが必要です。
実験や観察の問題がたくさん出ます。図表やグラフを使った問題も多いので、きちんと理解できるようにしておきましょう。
社会は地理分野が多め
社会の試験時間は25分で、配点は50点です。選択問題中心ですが、用語を問われる問題や記述問題も出ます。そのため、タイトな時間配分で問題を解き進めなければなりません。
分野は地理、歴史、公民、時事問題から出題されます。比較的地理の割合が大きいので、知識はもちろん、地図やグラフが読めるよう対策しておく必要があります。出題量としては、地理、次いで歴史で、時事問題、公民といった構成です。
- とにかく時間との勝負になる
- 正確に、スピーディーに解く力が求められる
慶應義塾中等部に合格したい。どんな勉強が効果的?
慶應義塾中等部に合格するためにはどういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
知識問題の対策を
国語では知識問題が多く出題されるので対策しておく必要があります。慣用句やことわざ、熟語といった語彙の数を増やす勉強はもちろん、自動詞や他動詞の使い分けや品詞についての勉強もしておきましょう。国語の知識問題は、読解のおまけだと誤解している子供も少なからずいます。仕上げを受験間際に回してしまうケースも珍しくありません。たしかに塾のまとめ教材にはたいてい重要な知識問題が取りまとめられていて、一気に覚えられるようになっていますが、慶應義塾中等部のように知識問題の配点が高い学校では日頃の積み重ねが物を言います。
読解文の出題分野が広い
読解文の出題分野は固定ではなく、さまざまなジャンルから出題されているので、対策してください。さまざまな問題に挑み、解けるようにしておきましょう。
漢字を書けるように
最後の大問で漢字が出題されるため、書けるようにしておきましょう。特に熟語や四字熟語の一部を空欄にして書かせる問題がよく出ます。語彙を増やしておかないと解けないタイプの書き取りです。
- 他校とは違い知識問題は日頃の積み重ねが大事になる
- 熟語や四字熟語の対策は入念にする
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
問題数の多さに対応するため、計算力をつけよう
算数は問題数が多いため、処理速度が求められます。全問解くのは難しいですし、解ける範囲だけ解いても、見直しをする時間は恐らくほとんどとれません。そのため、最初からミスしないで解く力が求められます。すべての問題で必要な計算力を固め、ケアレスミスを防ぎましょう。素早く正確に計算できるようにしていきます。
頻出単元を押さえよう
頻出単元である平面図形、立体図形、速さの問題は数をこなしておきましょう。特にここ数年、大問三では全問、図形の問題が出題されています。しかも、出題傾向が毎年よく似ていて、図形の回転の問題や角度を求める問題などが繰り返し出ているのです。速さの問題も大問の定番です。2021年度と2022年度はグラフを見て解くタイプの速さの問題が出題されています。
つまり、慶應義塾中等部の算数は出題傾向がかなりはっきりしているので、過去問の類題を問題集からピックアップして処理できるようにしておけば、確実に点につながります。そうはいっても、解けるだけではダメなので、制限時間内に終わらせる速さを身につけましょう。
規則性や場合の数の問題もたびたび出ますが、解くにあたって時間がかかることが多いので、こちらも練習しておくことをおすすめします。
網羅的に勉強を
慶應義塾中等部の算数は問題数が多い分、広い範囲から出題されます。メインの問題の出題傾向ははっきりしていますが、他の小問で点を落とさないためには網羅的な勉強が欠かせません。難易度が高くない分、一問のミスが合否を分けます。各単元の基本を頭に入れておいてください。
過去問をやり込もう
算数の解答用紙には答案の書き方の例が載っています。過去問をやり込んで、慶應義塾中等部ならではの解答の仕方を学びましょう。
また、過去問をやり込んで自分の点数と合格ラインを比較してください。全問解き終えるのが難しい以上、どれを捨て問にするか判断しなければならない子供は多いです。そのときに捨て問に回す問題を間違えると、合格ラインに到達できません。実力を見極めて判断できるよう、あらかじめ過去問を分析しておきましょう。
- 「平面図形」「立体図形」「速さ」の問題はとにかく数をこなす
- 正確かつスピーディーに解き進められる様に過去問を分析して類題に慣れておく
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
問題数が多いので得意な単元を優先して
前から順番に過去問を解いて問題なく解けるならそれでよいです。しかし、問題数の多さから最後まで手が回らなくなる場合は得意な単元から解いていくようにしましょう。順番を入れ替えて解く際は、解答欄の記入間違いに気をつけてください。
問題文が長い問題では速読を
一問あたりに割ける時間が限られているのに、会話形式など問題文が長めの問題が出題されることがあります。素早くヒントを見落とさずに読む力が必要です。読み返している時間はあまりないので、一度でポイントを把握できるよう読みなれておきましょう。
知識問題は確実に
分野の枠を超えて出題されるので、網羅的に知識を押さえておく必要があります。実験や観察の単元を中心に広く理解を深めておきましょう。器具の名前や実験および観察の進め方、その結果を説明できるようにしてください。
- 時間が足りなくなるため得意な単元から解くことに慣れておく
- 問題文が長いため読む力を養っておく必要がある
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
地理を中心にやり込んでおく
社会は各分野から出題されるので、全体的にやり込んでおかなくてはなりません。中でも特に重視したいのが地理です。地理の占める割合が大きいので、地図やグラフも含めて情報を広く頭に入れておきましょう。日本地図をさまざまな観点から覚え込んでください。地形や各地の農業、工業、気候、人口、公害など包括的な知識が問われます。白地図を自力ですべて埋められるようにしたいところです。
大きな地図を地域ごとに分けて、書き込みをして部屋に貼っておくなど、常に目に触れる状態にしておきましょう。地理の知識に関連するカルタやパズルもたくさん市販されているので活用してください。
年代順に並び替える問題に対応できるよう
歴史において年代順に並び替える問題を出題する学校は多いですが、慶應義塾中等部も例外ではありません。まず、歴史年表の大枠を押さえておいてください。時代の名前が順番に言えるようにしましょう。その上で起こった出来事の因果関係を把握します。地名、人物名、出来事なども問われるので漢字で書けるように仕上げてください。時代ごとの出来事をカードに書き出し、並べ替えながら説明できるようにするのもよいでしょう。
公民は少なめだが時事問題とあわせて出題
慶應義塾中等部の問題は地理や歴史がメインで、公民はどちらかといえば少なめです。しかし、2023年度の大問三ではロシアとウクライナの時事を扱っていて、その中に公民に関連する問題が落とし込まれています。時事問題をやり込んだ上で、関連する公民の知識を押さえておくと効率的な対策が可能です。
- 歴史は「地名」「人物名」「出来事」を漢字で書けるようにしておく
- 地理の知識に関連するカルタやパズルを活用する
慶應義塾中等部の合格のカギは過去問の分析
慶應義塾中等部が求める力は「平易な問題を正確に、スピーディーに解く力」です。出題傾向や出題形式が比較的わかりやすいタイプの学校なので、合格するためには過去問の類題をやり込んでおくのが一番の早道です。
頻出単元が明確なのは受験対策しやすくてよいのですが、問題数が多いため、網羅的に勉強しないと細かなところで失点してしまいかねません。頻出単元をやり込むのと並行して、各単元の基本を押さえておきましょう。
ケアレスミスをしやすいタイプにとって、慶應義塾中等部の問題はやっかいです。早いうちにケアレスミスの原因を突き止めて、具体的な対策を講じる必要があります。たとえば、字の汚さが計算ミスを誘発しているのであれば、途中式の書き方を見直しましょう。短い時間内で一問でも多く正答を導き出す力があるかどうかが問われます。