駒場東邦中学校は東大や医学部を目指す男子の多くが、進学を検討する学校のひとつです。この記事では駒場東邦中学校を目指す家庭に向けて、各科目の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも駒場東邦中学校ってどんな学校?
駒場東邦中学校は中高完全一貫の名門男子校です。学校法人東邦大学が設置した学校で、昭和32年に開校しました。駒場東邦中学校は教育目標として「生徒・教員・保護者の三者相互の理解と信頼によって、明るく楽しい学園をつくり、生徒各自の個性を伸ばし、能力を高め、豊かな知性と科学的な教養を身に付けた、健康で実践力に富む有為な人材を育成する」を掲げています。
中高一貫の強みを生かし、有機的、系統的に効率よく編成したカリキュラムが魅力で、ほとんどの科目は五年目までに終わります。駒場東邦中学校の教育の特徴として、レポート作成を生徒に多く課していて、自分の頭で考えて物事を探究していく姿勢を養うよう促している点が挙げられます。
また、国際理解教育にも熱心です。交換留学制度を採用していて、アメリカの名門私立高校スティーヴンソン校と、台湾屈指の名門高校である国立台南第一高級中学(台南一中)と交流を深めています。他にも、海外修学旅行や大使館訪問、海外研修などさまざまな取り組みをしています。
学校生活においては、自主自律に重きを置き、集団生活の中で相手に気配りできるようなあり方を目指しています。そのため、クラスや部活の交流はもちろん、行事を通して縦のつながりに重きを置いています。
駒場東邦中学校の入試概要
駒場東邦中学校の入試について見ていきましょう。
2025年度の入試
入試日は2月1日で、募集人数は男子240名です。受験料は25,000円、出願期間は2025年1月10日10時から2025年1月26日16時までとされています。
2024年度の入試倍率
受験者数は627名で合格者数は297名、実質倍率は約2.1倍です。なお、倍率は小数点第二位以下四捨五入しています。
入試区分 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
2024年入試 | 627名 | 297名 | 約2.1倍 |
駒場東邦中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
駒場東邦中学校の四教科の出題傾向は以下のとおりです。
国語は物語文の大問一のみ
国語の試験時間は60分、配点は120点、大問はひとつのみです。文章量は一万字前後になることもあれば七千字程度の年度もあり、増減が激しいため、もし一万字以上出ても対応できる準備をしておきましょう。
まず、問一で漢字の書き取りが15問出ます。その後は記述問題や選択問題です。解答用紙を見ると一目瞭然ですが、字数指定の説明記述が多く出題されています。登場人物の心情や行動に対して「なぜ」を問う問題の割合が高いです。
算数は解くのに時間がかかりがち
算数の試験時間は60分、配点は120点、大問は四つです。立体の切断や場合の数などで高難度の問題が出る傾向にあります。2024年度は計算問題から始まるのではなく、難しめの小問集合から始まっています。
頻出単元は立体図形、平面図形、数の性質、場合の数などです。全体的に簡単な問題が少なく、解くのに時間がかかります。そのため、問題数が多いわけではありませんが、制限時間を短く感じる受験生が多いです。
理科は記述や作図も出題
理科の試験時間は40分、配点は80点、大問は五つです。大問一が小問集合で、大問二~大問五は各分野からそれぞれ出題されています。作図も記述問題もあり、40分で解くにはボリュームたっぷりの内容となっています。
思考力を問う問題も多いため、時間内に解ききるのが大変です。難易度が高い問題が混在しているので注意して臨みましょう。知識は非常に幅広く問われるため、細かな内容まで頭に入れておく必要があります。
社会は総合問題としての出題
社会の試験時間は40分、配点は80点、大問はひとつのみです。時事問題を含めた各分野からひとつの総合問題として出題されます。
テーマに基づいた横断的な出題となっていて、出題形式も選択問題、用語、説明記述、考察記述などさまざまです。文章と資料を手掛かりにして解く思考力を問う問題が出題されます。
記述問題は字数指定がないので、解答欄に収まるように過不足なく答えなければなりません。
- 国語の試験は物語文の大問一のみで、漢字書き取りと説明記述が中心に出題される
- 算数は立体図形や場合の数など高難度の問題が多く、簡単な問題が少なく時間がかかる
- 理科は思考力を問う問題や作図、記述があり、時間内に解ききるのが大変で知識が幅広く問われる
- 社会の試験は大問一つで、時事問題を含む総合問題が出題され、さまざまな形式の問題が出る
駒場東邦中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
駒場東邦中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
漢字を確実に仕上げよう
大問一で漢字が十五問も出るため、書けないと大きな失点となります。漢字の復習をしておきましょう。漢字の書き取りの対象となるのは読解文の本文でカタカナ表記になっているところです。
速読を身につけよう
年度によっては文章量が多く、記述問題の占める割合も大きいので、時間内に解くのが大変です。速読を身につけておかなければなりません。記述を解く速さにもよりますが、一分間に700字でも間に合わない可能性があります。
一万字出た年度の過去問をやってみて、自分がどのぐらいの速度で読めば問題を解き終えることができるか把握しておきましょう。その上で、スピードが足りないようであれば、速読の練習をします。
一気にスピードアップは無理なので、段階的にレベルアップしていきましょう。読解文に取り組む際、必ずタイマーをかけて、自分がいまどのぐらいのスピードで読めているのかを記録していきます。「速読する」という意識を常に持つことが必要です。
字数指定の説明記述に慣れよう
駒場東邦中学校の記述問題の解答欄は基本的にマス目になっていて、字数指定を守って答えを書く形式です。字数指定内に過不足なく収める練習が必要となります。理由を問う問題が多いので、読みながら各登場人物の行動や心情の背景を頭の中で整理するようにしてください。重要だと感じた描写があったらその都度線を引いておくと見直しやすいです。
心情描写の読み取れるように
心理描写は気持ちとして明確に書かれている場合もあれば、天気や風景や出来事に落とし込まれている場合もあります。物語を読み慣れていないと、比喩としての心情を読み取るのは難しいかもしれません。
比喩で「心情描写かな?」と思うところがあったら、線を引く癖をつけましょう。合っているかどうか、塾や家庭教師の先生に確認してみてください。
- 漢字の復習と速読の練習をしっかり行い、時間内に問題を解き終える練習をする。速読のスピードが足りない場合は、段階的にレベルアップを図る
- 字数指定の説明記述に慣れ、過不足なく答えを書く練習をする。心情描写や比喩に気を付け、重要な部分には線を引いて整理する
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
難易度は年度によって開きがある
年度によって難易度には開きがあり、平均点が上がると翌年の問題は難しくなりがちです。2022年度の合格者平均点は42.6点、2023年度の合格者平均点は90.2点、2024年度の合格者平均点は66.6点とここ三年だけ見ても合格者平均点は大きく上下しています。
2025年度の難易度がどの程度かはわかりません。ただ、合格者平均点が低い年度の翌年には難易度が下がり、合格者平均点が高い年度の翌年には難易度が上がっているので、昨年が66.6点であることを考えると、そこまで難易度を大きく変えてくることはないのではないかと予想されます。
難易度に合わせて解く順番を決めよう
大問一は小問集合とはいえ、そこそこ手間のかかる問題が出ます。難易度や得意不得意に合わせて、臨機応変に解く順番を決めていかないと、解ききれなくなる可能性があります。問題を解いていてタイムロスしそうだと感じたら、解く順番を入れ替えていきましょう。素早い判断が合否のカギとなります。
頻出単元を中心に対策を
頻出単元はだいたい決まっているので、集中的に対策しておきましょう。中でも難易度の高い問題が出やすい単元である場合の数や図形は注意が必要です。受験問題集だけでは対策が難しいので、駒場東邦中学校対策に特化した内容をこなして準備するようにしましょう。
数の性質は書き出してみよう
数の性質は解き方がすぐに見つからなくても、まず情報を整理して書き出してみることをおすすめします。頻出単元なので、できれば難しい問題まで解けるように仕上げておきたいところです。
- 合格者平均点により難易度が上下するため、タイムロスを避けるために解く順番を臨機応変に決定する
- 数の性質は情報を整理して書き出し、難しい問題にも対応できるように準備する
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
計算問題・記述問題が多い
2024年度の理科では、計算問題が6問と多く出題されました。各単元の計算問題がスラスラこなせるようにしておきましょう。とりわけ力のつり合いは出やすい単元なので、しっかりと固めておいてください。ボリュームのあるテストなので、計算ミスをしても見直している時間はあまりありません。
記述問題は四問出題されていました。難易度はやや高めではありますが、身につけた知識と問題文の情報を生かして解くタイプの問題で、ひねった内容ではありません。2024年度の問題から一例を挙げると、ワニが水中に潜っているときに血液の流れが変わる利点について問う問題が出ていました。
グラフを完成させる問題も
理科の問題の出題形式はバラエティに富んでいて、2024年度はグラフを完成させる問題も出題されていました。なお、2023年度は解く過程で使うように方眼紙を模したマスが用意されていました。
実験結果について考える問題が多い
実験結果について考えを深めるタイプの問題が多く出題されています。実験で使う器具の名前や、実験の手順を改めて確認しておいてください。ひと通り順を追って、各実験の流れを言葉で説明できるようにしておきましょう。
難問が混在しているので時間配分に注意
理科は難易度の高い問題が混在しています。そのため、難問でのタイムロスを前提に解き進める必要があります。時間配分を間違えないよう過去問を通して練習しておきましょう。
- 計算問題と記述問題が多く出題され計算ミスの見直し時間が限られているため、計算力と記述力をしっかりと身につける
- 実験器具や手順を確認し、難問に対する時間配分を意識して過去問で練習する
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
テーマに基づいた文章を読み込む力を
社会は大問がひとつきりで、2024年度は国語の説明文のような文章から始まりました。2023年度は時事を切り口にした問題が多かったです。年度によって切り口は異なりますが、社会に対する問題意識を前提にした、思考力を問う問題が出題されます。知識を身につけていることは大前提として、知識だけでは解けない問題なので、日頃から社会への関心を持っておきたいところです。
説明記述問題が多い
説明記述問題が出るので対策が欠かせません。中には二、三行書かなければならない問題もあります。物事の背景を考え、解答欄内に過不足なく情報を落とし込まなければなりません。
地形図や地図、統計や図表を理解できるように
地理で欠かせないのが、地形図や地図の知識です。必ず出題されるので、解けるようにしておいてください。統計や図表の出題も多いので、改めて知識を入れ直しておいてください。
なお、過去問をやっていると古いデータが頭に残りやすいですが、受験で答えなければならないのは最新のデータなので、混同しないよう気をつけましょう。
難問は後回しに
合格者平均点を考えると、難問は後回しにして大丈夫です。知識を問う問題もたくさん出るので、まずは先に基本的な問題を終わらせましょう。難問をある程度捨てても、合格ラインを目指すことはできます。
- 知識だけでなく社会への関心を持ち、思考力を問う問題に対応できるようにする
- 合格平均点を考えると難問は後回しにしても問題ないため、まず基本的な問題を確実に解く
駒場東邦中学校は難易度の高い問題が多い
駒場東邦中学校の問題は全体的に難易度の高い問題が多く出題されます。しかし、年度によって開きがあり、前年の結果と比べて合格者平均点が倍近く違うようなときもあるので、過去問に挑む際は注意してください。基本的に難しい年度に合わせて対策をしたほうがよいです。また、前年度の合格者平均点が高い場合、翌年度の問題は難しくなりがちなので気をつけてください。
国語は物語文に対応できるようにしておきましょう。字数は年度によって差がありますが一万字程度になる年度もあるので、速読を身につけてください。さらに記述問題の割合が高いので時間内に終わらせられるよう頑張りましょう。
算数は立体の切断、場合の数などで難問が出やすいです。
理科は出題形式のバリエーションに富んでいて、計算問題や記述問題やグラフもあります。全体的に時間配分に気を付けてください。
社会は知識を入れるだけではなく日頃から世の中で起きていることに関心を持ち、物事の背景について考えるようにするとよいでしょう。
駒場東邦中学校らしい個性的な問題が出題されても解けるように過去問を研究し、時間配分のイメージをつかんだ上で本番に臨んでください。