栄東中学校は多くの受験者を集めることで有名な学校です。この記事では栄東中学校を目指す家庭に向けて、国語・算数・理科・社会の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも栄東中学校ってどんな学校?
栄東中学校は滑り止めとしてのニーズも高く、志望者数がとても多い学校です。学校法人「佐藤栄学園」が元になっていて、現在は男女共学の中高一貫校となっています。
用意されているクラスは、「東大クラス」と「難関大クラス」のふたつ。目標に向けて厳選されたカリキュラムで、人気を集めています。
栄東中学校ではアクティブラーニングを重視していて、教師が一方的に生徒に知識を伝達することにならないようなアプローチがとられています。課題研究やグループワーク・ディスカッション・プレゼンテーションなど生徒が主体的に考えて、議論を深める教育が実施されているのです。学びにおける基礎基本の定着化および個性と応用力、表現力の育成を図っています。
中高一貫校ですが、高校から入ってくる生徒もいます。ただし、一貫生と高入生のカリキュラムは別々です。中高一貫生は六年間を通じたカリキュラムとなっていて、無駄な重複がないような構成となっています。
栄東中学校の入試概要
栄東中学校の入試について見ていきましょう。
2024年度の入試
2024年度はA日程が1月10日と1月11日の選択制でした。「東大クラス特待生」若干名、「東大クラス」40名、「難関大クラス」100名の募集です。
1月12日の東大特待Ⅰでは、「東大クラス特待生」30名募集。B日程が1月16日で、「難関大クラス」40名募集。1月18日の東大特待Ⅱでは、「東大クラス特待生」および「東大クラス」を30名募集しました。
なお、「帰国生入試」は1月11日と1月16日で若干名の募集です。
インターネット出願で、出願期間は12月1日10時から始まりました。A・B日程および帰国生B日程は1月15日15時まで。「東大特待Ⅱ」が1月17日15時まで、「帰国生入試A」は1月6日15時までとされていました。受験料は25,000円で2回出願できます。それ以上出願する場合はプラス5,000円で4回まで出願可能です。
2024年度の入試倍率
1月10日A日程の男子受験者数は3660名、合格者は2439名、実質倍率は約1.5倍。女子受験者数は1862名で合格者が1152名、実質倍率は約1.6倍。
1月11日A日程の男子受験者数は1525名で合格者数は825名、実質倍率は約1.8倍、女子受験者数は800名で合格者数は396名、実質倍率は約2.0倍。帰国生A日程は受験者数が男子3名で合格者数1名、実質倍率は3倍、女子7名で合格者数2名、実質倍率は3.5倍。
東大特待の4科の受験者数は男子921名で合格者数502名、実質倍率は約1.8倍、女子230名で合格者数96名、実質倍率は約2.4倍、算数1教科受験が男子126名で合格者数34名、実質倍率は約3.7倍、女子15名で合格者数0名。
1月16日B日程は男子1330名受験で合格者数565名、実質倍率約2.4倍。女子678名受験で合格者数305名、実質倍率約2.2倍。
同日の帰国生B日程は男子受験者数3名、合格者数3名で1倍、女子受験者数4名で、合格者数2名で実質倍率は2倍です。1月18日の東大特待Ⅱは男子受験者数454名で合格者数233名、実質倍率は約1.9倍。女子受験者数167名で合格者数76名、実質倍率は約2.2倍です。なお、倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
男子の2024年度入試倍率
受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 | |
---|---|---|---|
1月10日A日程 | 3660名 | 2439名 | 約1.5倍 |
1月11日A日程 | 1525名 | 825名 | 約1.8倍 |
帰国生A日程 | 3名 | 1名 | 3倍 |
東大特待(4科) | 921名 | 502名 | 約1.8倍 |
算数1教科受験 | 126名 | 34名 | 約3.7倍 |
1月16日B日程 | 1330名 | 565名 | 約2.4倍 |
帰国生B日程 | 3名 | 3名 | 1倍 |
1月18日東大特待Ⅱ | 454名 | 233名 | 約1.9倍 |
女子の2024年度入試倍率
受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 | |
---|---|---|---|
1月10日A日程 | 1862名 | 1152名 | 約1.6倍 |
1月11日A日程 | 800名 | 396名 | 約2.0倍 |
帰国生A日程 | 7名 | 2名 | 3.5倍 |
東大特待(4科) | 230名 | 96名 | 約2.4倍 |
算数1教科受験 | 15名 | 0名 | – |
1月16日B日程 | 678名 | 305名 | 約2.2倍 |
帰国生B日程 | 4名 | 2名 | 2倍 |
1月18日東大特待Ⅱ | 167名 | 76名 | 約2.2倍 |
栄東中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
栄東中学校のA日程・B日程の一般入試および東大特待(4教科)における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語は総合知識問題が多め
国語の配点はA・B日程では100点、東大特待では150点です。どちらも制限時間は50分。総合知識問題が多めに出題されます。文法問題がたくさん出題されるため注意が必要です。大問でふたつ分の総合知識問題があります。
残りは読解問題で説明文と物語文からの出題です。A・B問題に比べると東大特待は扱う文章の難易度が高いです。
また、どの入試であれ、記述問題が合否を分けるカギとなります。自由考察論述・記述が出題されるのも特徴です。この自由考察論述・記述では、独創性も高く評価されます。
算数は平面図形が頻出
算数の配点はA・B日程では100点、東大特待では150点です。出題傾向自体はどの方式でも大差ありません。問題を見ると一目瞭然ですが、平面図形の占める割合が高い内容となっています。
他には立体図形や規則性もよく出題されます。平面図形は比を活用する問題が多いです。ただし、問題の難易度や問題文の長さには大きな違いがあります。
理科は各分野から出題
理科の配点は社会と合わせて100点で、東大特待では75点です。東大特待では各分野からひとつずつ大問が出題されます。ひとつのテーマを掘り下げてじっくり解かせるタイプの構成で計算も多く、時間がタイトです。出題方式に関わらず似た分野からの出題となります。
社会の設問は多種多様
社会の配点は理科と合わせて100点で、東大特待では75点です。バラエティに富んだ設問形式が特徴で、記述問題、整序、選択肢問題などさまざまな問題が出ますし、その問題に付随する条件もさまざまです。様々な分野から出題されるため、横断的に解けるようにしておく必要があります。
- 国語は総合知識問題が多く、記述問題が合否を分けるカギになる
- 算数は平面図形の占める割合が多く、受けるクラスによって難易度と問題文の長さが大きく変わる
- 理科はひとつのテーマを掘り下げた問題が多く、時間がタイトになる
- 社会は特徴的な設問形式で、様々な分野から出題される
栄東中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
栄東中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
知識問題をやり込もう
国語の知識問題の占める割合が高いため、漢字や語彙、文法を勉強する時間を確保しましょう。日頃から読解文に臨む際には、知らない語彙に傍線を引いて意味を理解するようにしてください。後から見返せるようにしておくとよいです。語彙を覚えても、抜けていくものなので、テキストを読み返したときにサッと覚え直せるようにしておきましょう。
言葉を適切に使えるように
栄東中学校は語彙力を問う問題が多く出ます。それは学校側が「言葉を正しく使えるようになってほしい」と考えているためです。受験のためだけに語彙を増やすのではなく、生きた言葉として身につけてほしいと考えています。
そのため、語彙の問題に限らず、適切に言葉を使えているかどうかをチェックされます。言葉だけを丸暗記してしまい、本来の使い方から離れた文章を書いてしまう子供も多いので気をつけて取り組みましょう。
まずは、文章の前後の文脈をよく読み込み、どういうときにその言葉を使っているのかを理解することが大事です。
「自分ならどうするか」を問う問題
栄東中学校ではここ数年自由考察論述が出題されます。ここで求められているのは独創性です。栄東中学校の教育の中には、自分を表現するカリキュラムが多く取り入れられています。この問題で求められているのもそこで、採点基準として独自性や具体性を見ています。解答に落とし込まれた答えの中にどれだけ自分ならではの考えを落とし込めているかがカギとなります。
逆に言えば、自分の考えがないものには丸がつかないため、注意しましょう。あらすじだけ、要約だけ、抜き出しだけになっているケースはアウトです。
一万字前後の問題が出題
一万字前後の問題文が出ます。栄東中学校では「生徒の読むスピードを担保したい」という考えがあります。本を読み慣れていない子供だと、鍛えるのに時間がかかってしまう部分なので、苦手な場合は早々に取り掛かったほうがよいです。
素早く読める力があり、語彙力があり、言葉を豊かに使える生徒を求めている学校なので、初めからそこでハードルが設けられているといえます。低学年であれば今から読書習慣をつけておき、なるべく幅広い本を読んでおくようにしましょう。高学年であれば過去問を分析し対策しながら、速読のスキルを身につけていくより外ありません。
そもそも「読む」こと自体が苦手な場合は、音読から取り組んでみてください。読むのが苦手な子供はたいてい読み飛ばします。しかし、速読とは読み飛ばすことではないので、最初は音読で読み飛ばさない技術を身につけなければなりません。どうしても行を飛ばしてしまう子供は、定規や下敷きをあてがいながら読む練習をするとよいです。
速読は一分あたり何字のペースで読めるかを分析しましょう。段階的に増やしていきます。一分七百字を目指しましょう。
- 知識問題の割合が多いため、漢字や語彙、文法を勉強する時間を確保する
- 自由考察論述では独自性を求められるため、過去問などをやり込み自分ならではの考えを落とし込めるようにしておく
- 一万字前後の問題が出るため、一分間で七百字程度読めるように速読の練習をしておく
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
難関クラスは計算問題で落とさないよう
難関クラス受験では計算問題も出るので、ケアレスミスで落とさないよう練習しておきましょう。計算問題は分数や小数、複数の括弧を使う問題が出題されます。確実に解けるように仕上げておきましょう。
計算は解けるつもりでいる子供が多いですが、実際に解いてみると間違えることが多々あります。計算の仕組みを理解しているからといって、解けるとは限りません。数をこなしておくことが大切です。
東大特待は時間がタイト
東大特待は時間がタイトなので、スピーディーに解く必要があります。過去問をやり込む際に、どうしたらうまく時間配分できるかを考えましょう。捨て問の判断を素早くすることも欠かせません。
頻出単元の対策を
問題を見てわかるとおり、平面図形・立体図形・規則性・場合の数・特殊算などが数多く出題されます。受けるクラスによって難易度は異なるので、それぞれの過去問を解いて難易度を把握しておきましょう。頻出単元は標準レベルから発展レベルまできっちり仕上げておいてください。
問題文の長さに慣れよう
算数の問題文の長さに慣れておきましょう。東大特待の最後の問題では、問題文が長く図表を挟んで二ページにわたることもあります。解き慣れていないと、読み込んでいるうちに混乱してしまいかねません。
- 計算問題をケアレスミスで落とさないように、とにかく数をこなして確実に仕上げる
- 受けるクラスの過去問をしっかりとやり込む
- 問題文が長く、時間もタイトなため過去問を活用して捨て問の判断力を身に付けておく
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
時事をおさえておこう
理科は環境問題をはじめ時事に絡めた出題がされることがあります。日頃から時事に関心を持って、理科関連の情報は追いかけておくようにしましょう。
物理・化学分野の計算ができるように
物理・化学分野では計算問題もよく出題されます。力のつり合いや水溶液など、計算問題の出題が多い分野をしっかりと勉強して時間をかけずに解けるようにしておきましょう。
図表の多さに対応できるようにしよう
実験・観察の問題からの出題が多く、図表を使った問題が出題されます。グラフの出題も多いです。提示された図表やグラフから必要な情報を読み取れるようにしましょう。
- 時事問題が出ることもあるため、ニュースなどをよくみて理科関連の情報を常に追いかけるようにする
- 計算問題はスピーディーに解き進められるようにしておく
- 図表やグラフから必要な情報を読み取れるようにするため、テキストや過去問をやり込み問題に慣れておく
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
分野ごとの出題
各分野からの出題となります。問題自体はそれほど難しいわけではないので、中学受験対策テキストの内容を隅々まで頭に入れて臨みましょう。用語等をきちんと漢字で書けるようにしておいてください。
地図・地形図に慣れておこう
地図や地形図を用いた出題が多いです。地図は白地図を用いて日本地理の知識を盤石にしておきましょう。地形図も読めないことのないようにしておいてください。
統計資料を理解しよう
統計資料を用いた問題が出題されます。特に地理では、最新の統計資料の結果をチェックしておいたほうがよいでしょう。
記述問題に対応できるよう
東大特待だと記述問題も出題されます。問題の背景をきっちり把握していないと書けない問題が出るので、日頃から時事をはじめ、社会に関連する知識を身につけておいてください。
- 問題自体はそれほど難しくないため、テキストの内容を隅々まで頭に入れておく
- 地図、地図形の問題に慣れておくために白地図をよく読み込んでおく
- 東大特待は記述問題も出題されるため、日頃から時事をはじめとした知識を身につけておく
自分の受けるクラスに合わせた勉強を
自分の受けるクラスの過去問を解いて、難易度や出題傾向、時間配分を把握するところから始めましょう。出題傾向自体は共通している部分も多いですが、問題の難易度や時間配分は大きく変わってきます。配点も違うので、それぞれに合格を勝ち取るための戦略を立てて臨みましょう。
国語は素早く多くの分量を読み込み、言葉を適切に使って表現する力、自分ならどうするか独自性のある意見をまとめる力を求められています。
算数では、図形をはじめとする頻出単元において素早く正確に解けなければなりません。
理科・社会では各分野の知識を正しく身につけ、さまざまな出題形式の問題をこなしていく必要があります。
合格ラインに合わせて捨て問の判断も迅速にしなければなりません。限られた時間の中で最大限の点数をとれるよう、仕上げておきましょう。