世田谷学園中学校はその名のとおり、世田谷区にある中高一貫校で男子校です。本科コースと理数コースのふたつのコース編成で人気を集めています。この記事では、世田谷学園中学校を目指す家庭に向けて、出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも世田谷学園中学校ってどんな学校?
世田谷学園中学校の教育理念は「Think&Share」です。パンフレットによると、これは「天上天下唯我独尊」を英訳したもので、「人は一人一人かけがえのない尊い存在であり、だれもが立派になることのできる力を持っている」という人間観と「人は固有の価値観や文化をもっており、それをお互いが理解し認め合うことで、平和な地球社会の創造が可能になる」という世界観が込められているそうです。
生徒は一年次から「本科コース」と「理数コース」に分かれます。世田谷学園中学校では、生徒の希望する進路に合わせた教育カリキュラムを提供する、二コース制を採用しています。加えて、中学三年生からは生徒の学力到達度に応じた指導を実施。高校二年生までに本来高校で学ぶべき内容をすべて終わらせます。最後の一年を大学現役合格のための勉強に当てるためです。
ICT環境を整えていて、入学後はひとりにつき一台iPadを持った上での学習活動となります。全教室にはWi-Fi環境とプロジェクターを用意。また、グローバル教育にも力を入れていて、カナダ研修・ニュージーランド派遣留学・シンガポール研修など、海外に出るさまざまな機会を設けています。
世田谷学園中学校の入試概要
世田谷学園中学校の入試について見ていきましょう。
2024年度の入試
2024年度の世田谷学園中学校の入試は、一次試験が二月一日午前、算数特選が二月一日午後、二次試験が二月二日午前、三次試験が二月四日午前でした。募集人員は一次試験が本科コース55名、理数コース5名。算数特待が本科コース15名、理数コース15名。
二次試験が本科コース65名、理数コース15名。三次試験が本科コース25名、理数コース5名です。
出願期間は一次試験と算数特選が1月10日から1月31日。二次試験は1月10日から2月1日、三次試験は1月10日から2月3日でいずれもweb出願のみでした。検定料は一回出願で24,000円、二回同時出願で36,000円、三回同時出願で48,000円、算数特選で10,000円の設定になっています。本科コースと理数コースの問題は同じです。ただし、配点は異なり、理数コースでは理科と算数の配点が本科コースの倍となっています。
2024年度の入試倍率
一次試験では、受験者数が286人、合格者数が79人、実質倍率は約3.6倍でした。算数特待では、受験者数が678人と多く、合格者数が288人、実質倍率は約2.4倍。二次試験の受験者数は621人で合格者数が261人、実質倍率約2.4倍。三次試験の受験者数が356人で合格者数が57人で倍率約6.2倍でした。なお、これらの倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
2024年度の入試統計
受験者数 | 合格者 | 実質倍率 | |
---|---|---|---|
一次試験 | 286名 | 79名 | 約2.6倍 |
二次試験 | 621名 | 261名 | 約2.4倍 |
三次試験 | 356名 | 57名 | 約6.2倍 |
世田谷学園中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
世田谷学園中学校の一般入試における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語の大問はひとつ
国語の試験時間は50分で配点は100点、大問は例年ひとつきりです。語句の知識の問題に始まり、文章読解を解き進めていく構成になっています。点差がつきやすいのは記述問題です。物語文、随筆文、論説文などさまざまなジャンルから出題されます。比較的、読みやすい題材が多いです。
ただし、2024年度の三次入試では、渡邊十絲子の『今を生きるための現代詩』第3章「日本語の詩の可能性 安東次男のことば」から出題されていて、なじみのない題材に戸惑う受験者も多くいました。
算数は図形や特殊算が頻出
算数の試験時間は60分で、配点は本科コース100点、理数コース200点です。大問は六つ。頻出単元は立体図形、平面図形、特殊算などです。
大問一は小問集合で六題が出題されます。ちなみに、算数特選には小問集合はありません。小問集合では、四則計算をはじめとする基本的な問題が出題されます。立体図形では切断の問題、平面図形では点の移動の問題などが頻出です。中学受験ならではの特殊算の問題も多いので、とりこぼしのないようにしておきましょう。
特にニュートン算、旅人算、つるかめ算、過不足算のあたりはよく出ます。また、途中式を書いて部分点がもらえる問題もあるので、まとめる力を養っておきましょう。
理科は全分野からの出題ではない
理科の試験時間は30分で、配点は本科コース50点、理数コース100点です。大問は三つであるため、全分野からの出題ではありません。
たとえば、2024年度の理科の一次試験は月の満ち欠け(地学)、ばね(物理)、金属の性質(化学)で、生物が出ていませんでした。二次試験では化学変化の量的関係(化学)、光の屈折(物理と化学も)、植物の開花条件と日照時間(生物)で、地学が出ていません。問題の難易度自体は基本的な知識を問うものが多いです。実験・観察が問題のほとんどを占めます。
社会は公民分野からはほとんど出題されない
社会の試験時間は30分で配点は50点です。大問は三つですが、地理と歴史から重点的に出題され、公民分野の大問はありません。ただし公民分野が全くでないということではなく、他の分野と関連付けた問題は出るため対策は必要です。
また、時事問題も他分野に絡めて出題されます。また、日本国内だけではなく海外との関連性に着目した問題が多いです。
- 各単元を本当に理解できているのかを問う内容が多い
- 国語の記述問題、算数の図形問題で点差がつきやすい
世田谷学園中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
世田谷学園中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
言葉の知識を身につけよう
漢字の書き取り、語句の意味、オノマトペなどの言葉の知識を問う問題が出ます。冒頭に出るこうした問題は、比較的失点が少ない傾向にあります。ここで点を落とすと他の受験者と大きく差がついてしまうので、言葉の知識を身につけておきましょう。
点差がつきやすいのは記述問題
最後のほうで出題される説明記述は失点する受験者が多いです。たとえば、2024年度の三次試験の問十三では「具体例を二つ挙げて」という設問の指示を守っていない解答が多く見られました。問十四でも「わからないこと」の「独特の価値」について問うているにもかかわらず、「わかること」について説明してしまっている解答が多かったです。
説明記述は最後のほうで立て続けに出題されるため、焦って読み込みが甘くなる受験者もいることでしょう。しかし、問題の意図をきちんと理解しないで得点するのは無理です。解く時間を十分確保できるよう時間配分を調整して臨みましょう。
受験者の価値観に一石を投じるような出題も
国語の入試では、どの学校でも受験者の価値観に一石を投じるような問題がよく出ます。世田谷学園中学も例外ではなく、入試問題を通して受験者に考えを深めることを促してきます。興味がないと決めつけず、いろんな文章を読んでおきたいものです。
どんなジャンルにも対応できるように
物語文なのか随筆文なのか論説文なのかがわからないため、ジャンル別での対策は立てづらいです。なにが出ても動じなくて済むよう広い範囲で解き慣れておきましょう。
- 言葉の知識は合格に必須となるので身につけておく
- 点差がつきやすい記述問題に十分な時間を確保できるよう、時間配分を覚える
- どんなジャンルの文章も読んでおくようにする
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
特殊算の問題に慣れておこう
算数では特殊算の問題が多く出題されるため、よく出る計算を中心に対策しておいてください。ニュートン算、旅人算、つるかめ算、過不足算のあたりが頻出ですが、それ以外も出るためとりこぼしなく押さえておく必要があります。
難易度は高くないため基礎を固めて
算数特選の問題は後半が難しいですが、一般入試のほうは全体的にあまり難しくありません。基礎を本当に理解できているかを確かめる内容になっています。
ただし、多くの受験生が苦戦しがちな立体図形の切断の問題がよく出ます。頻出単元を中心に苦手な単元を少しでも減らしておきましょう。問題の理屈さえわかっていれば、計算自体は簡単なものが多いです。
算数の得点が合否を分けるカギに
算数の合格者平均点と受験者平均点は比較的開きが大きいです。そのため、算数でいかに得点をとるかが、合否を分けるカギとなります。過去問で出題傾向がよくわかるので、数年分やり込んでください。
- 特殊算は一通り押さえるようにする
- 基礎を理解して問題の理屈を理解する
- 過去問を数年分やりこんで出題傾向を把握する
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
実験・観察が出てくる単元を中心に
理科の問題は実験・観察に関連づけた問題が多く出題されます。そのため、解説をよく読んで、道具の名前から実験・観察の方法までを理解しておきましょう。
点差がつくのは計算問題
理科で点差がつきやすいのは計算問題です。しかし、その計算問題も奇をてらった問題は出ず、受験問題集をやり込んでいれば解ける問題が出題されています。「基本的な計算なら解ける」と思い込まないで、必ず復習してから臨んでください。
意外と多いケアレスミス。対策して臨もう
学校側の入試の講評によれば、理科では定番問題でも失点する受験者が多いと指摘されています。その中には問題の読み間違いもあり、たとえば、「番号で答えよ」との設問に対して記号で答えてしまっているケアレスミスが目立ったそうです。入試本番はつい焦りがちですが、問題文を最後まで読み切ってから解くようにしましょう。
基礎的な問題での失点も多い
各単元の基礎知識を問う問題でも、失点が目立つものがちらほらあります。たとえば、2024年度の一次試験では、金属の反応性を問う問題で間違える受験者が多かったそうです。覚えておかなければならない知識は改めてとりこぼしがないかチェックしましょう。一度覚えた内容でもすぐに抜けていくものです。定期的に復習が必要です。
- テキストと受験問題集をしっかりやり込み、定期的に復習を行う
- 読み間違いなどのケアレスミスをしないように日々心掛ける
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
歴史と地理を固めよう
例年、歴史と地理に重点を置いた出題なので、大問としては出題されない公民分野より先にそちらを固める必要があります。中学受験における一般的なカリキュラムでは、地理→歴史→公民の順で学ぶので、六年生の段階ではすでに記憶が薄れてきている受験生も少なくないでしょう。改めて要点から順番に確認していってください。覚え直しの作業が必要です。
海外との関係性に着目した勉強を
一般的に中学受験のテキストにおいて、地理は主に日本国内について扱っています。しかし、世田谷学園中学校の入試では、地理においても歴史においても、海外との関わりに重点を置いた出題が見られます。日本国内に関する知識を学ぶ際には、合わせて国外の動きも押さえておきたいものです。そのためには情報を単発で覚えるのではなく、時代や国、出来事で関連づけながら覚えていきましょう。
時事問題と関連づけた出題も
社会の問題では、時事問題を切り口にした出題があります。そのため、時事問題については、できるだけ日頃から学んでおきましょう。時事のテキストもやり込んでください。テキストを読み込む際は地理や歴史、公民と絡めて出題されるとしたら、どんな問題になるだろうか、と想像しながら解いていくことをおすすめします。
- 歴史・地理は必ず定期的に覚え直しをする
- 日頃から時事問題を学ぶ際には海外の動きも押さえておく
基礎を固めた上で、一問でも多く応用問題で得点しよう
世田谷学園中学校の入試では、受験問題集で定番となっている問題がたくさん出題されています。受験者が各単元を本当に理解できているのかを問う内容です。そのため、基本的な問題でいかに失点しないかが合格を勝ち取るカギになります。受験勉強では「わかったつもりになっていないか」を常に自分に問うようにしてください。
実際、学校側の講評によると、定番問題や基本問題が解けていないパターンは多いそうです。問題文の読み間違いから発生するケアレスミスも多々指摘されています。基礎力の大切さ、見直しの重要性を改めて認識しなければなりません。
もちろん、基本問題だけではなく歯応えのある応用問題もたくさん出題されています。算数の図形問題や、国語の記述問題のような難しい問題が一問でも多く解けることが大切です。基礎を確実に固めた上で、応用力を身につけるようにしましょう。