渋谷教育学園渋谷中学校は、「渋渋」の略称でおなじみの難関校です。この記事では渋谷教育学園渋谷中学校の出題傾向や勉強法を紹介します。
そもそも渋谷教育学園渋谷中学校ってどんな学校?
渋谷教育学園渋谷中学校は、六年間を二学年ずつ三つのブロックに分けたカリキュラムを採用しています。独自の六年に渡るシラバスを教育の根幹に据えていて、「自調自考」を実践する学校です。
生徒の学ぶ意欲に応えられるだけのカリキュラムが用意されていて、希望者には課外授業が実施されます。中でも、楽器の講座は充実していて、中学一年生から高校二年生を対象に弦楽器講座が開かれています。経験を考慮した上で、弦楽アンサンブルクラス、経験者クラス、初心者クラスの三つのクラスに分かれ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、それぞれの楽器の先生が指導にあたるというものです。
第二外国語講座もあり、対象は中学3年~高校2年の希望者です。開講される講座は、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語。それぞれネイティブの先生が指導にあたります。
外国語に力を入れているだけあり、年間を通して国際交流が盛んです。様々な国の生徒を受け入れると同時に、様々な国で研修を実施しています。
渋谷教育学園渋谷中学校の入試概要
渋谷教育学園渋谷中学校の入試について見ていきましょう。
2023年度の入試倍率
2023年度の入試倍率を紹介するにあたり、小数点以下第二位を四捨五入しています。倍率は以下のとおりです。
2023年度の受験者数は男子の場合、第一回が受験者数142名・合格者数54名で約2.6倍、第二回が受験者数455名・合格者数149名で約3.0倍、第三回が受験者数301名・合格者数43名で7倍です。女子の場合、第一回が受験者数270名・合格者数57名で約4.7倍、第二回が受験者数332名・合格者数72名で約4.6倍、第三回が受験者数275名・合格者数23名で約12倍となっています。
帰国生入試は受験科目によって、英語タイプと作文タイプに分かれます。男子の場合、英語の受験者が39名で合格者が4名で約9.8倍。作文の受験者が55名で合格者が12名で約4.6倍です。女子の場合、英語の受験者が64名で合格者が17名で約3.8倍。作文の受験者が49名で合格者が14名で3.5倍でした。
2023年度の入試倍率一覧
男子 | 女子 | ||
---|---|---|---|
一般入試 | 第一回 | 約2.6倍 | 約4.7倍 |
第二回 | 約3.0倍 | 約4.6倍 | |
第三回 | 7倍 | 約12倍 | |
帰国生入試 | 英語 | 約9.8倍 | 約3.8倍 |
作文 | 約4.6倍 | 3.5倍 |
2024年度の入試
2024年度の入試は、第一回が2月1日、第二回が2月2日、第三回が2月5日に実施されます。第一回と第二回は男女計70名の募集、第三回は男女計23名の募集です。
受験料は23,000円。複数回受験で同時出願の場合は2回受験が38,000円、3回受験が53,000円に設定されています。つまり、二回目以降は一回あたり15,000円となり割安です。
帰国生入試は1月27日で、男女計12名の募集です。受験料は23,000円で一般入試と同額に設定されています。帰国生入試の試験科目は英語・国語・算数・英語面接の組み合わせか、作文・国語・算数・面接の組み合わせのどちらかです。
渋谷教育学園渋谷中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
渋谷教育学園渋谷中学校の一般入試における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語の読解文は近年字数が増加
国語の制限時間は50分、配点は100点で大問二つの構成となっています。総合知識問題や漢字問題が読解文の大問に組み込まれて出題される形式です。例年、物語文と論説文がひとつずつ出題される傾向にあります。
2023年度の特徴はそのボリュームです。渋谷教育学園渋谷中学校の読解文は字数が急増し、結果として一万字を超える分量でした。2023年度が特殊な年で、2024年度からはまた7000字前後に戻る可能性もありますが、今のところどうなるかはわかりません。
国語では書き取り、選択問題、記述問題が中心です。選択問題では、五通りほどの作品解釈の中から誤りを見つけさせる問題が出ます。渋谷教育学園渋谷中学校の国語は、選択肢が多めで、ひとつひとつの文章が長いです。
算数は図形の割合がかなり大きい
算数の制限時間は50分、配点は100点で大問は四つの構成となっています。図形、速さ、場合の数などが頻出単元です。特に図形の問題の多さは毎年目立っています。大問一が計算と小問集合になっていて、小問はあらゆる範囲から出るので広く対策が必要です。問題の難易度は出題順ではないので、解く際には注意しましょう。
解答用紙を見ればわかりますが、作図問題が出題されます。書き込むタイプの問題で、問題の難易度は高めです。
理科は計算問題が多い
理科の制限時間は30分、配点は50点で大問は二つです。理科は計算問題や実験や観察の問題が多く出ます。大問が二つのみなので、複数の分野が混ざって出題されるケースもあります。そのため、小問の数は多めです。
問題文が長い出題も多く、30分の制限時間内に手早く処理しなければなりません。たとえば、2023年度の物理の問題は、見開き二ページにわたって図を挟みながらびっしりと問題文が展開しています。
社会は地形図や地図、写真、資料などが出題
社会の制限時間は30分、配点は50点で大問は年度によって増減します。ひとつの大問の中に複数の分野が出題されがちです。横断的な視点をもって勉強する必要があります。難易度は高めで、地形図や地図、写真や資料などがたくさん出題されるのが特徴です。
六割以上をとらなければならないため、幅広く勉強して対策する必要があります。とりわけ記述は難易度高めの問題がよく出ます。時事問題も出るため、時事のテキストはやり込んでおきましょう。
- 過去問を何度も行うことで対策できる内容が多い
- 国語は「速読する力」、算数は「作図対策」、理科は「読む力」、社会は「地理の情報」が必要
渋谷教育学園渋谷中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
渋谷教育学園渋谷中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
速読を身につけよう
国語の字数が今後どう変わっていくかは読めないところですが、2023年度の路線でいくのならば、一万字越えの読解文が出題されることになります。そのため、速読を身につけていないと、問題を解く前に時間切れになってしまいかねません。素早く読みながら線を引く練習をしましょう。線を引いて重要箇所に目印をつけておけば、読み直しの時間を最大限カットできます。
語意を増やし文法を理解しよう
例年、総合知識問題が出題されていて、その中には語彙や文法の問題が含まれます。日頃からわからない言葉は調べ、ことわざや慣用句も含めて語彙を増やしていきましょう。低学年のうちから読書をしておくのはもちろん、遊びの中に語彙を増やすためのかるたなどを取り入れることをおすすめします。
受験が近づいてきたら、読解文で触れた言葉はすべて理解できるようにしてください。まとめ教材の語彙の単元もやり込みましょう。また、文法の問題も頻出なので復習しておいてください。
記述問題は思考力を問われる
記述問題は思考力を問う内容が出ます。理由を説明させる問題が多く、本文の内容を正しく理解できていないと正答できないタイプです。字数指定があるので、要点をおさえた上で求められる長さにまとめる力が必要となります。練習しておきましょう。
- 低学年のうちから速読と語彙を増やす習慣付けをする
- 記述問題対策として、要点を押さえてまとめる練習を行う
- 特に算数と社会は難易度が高めになっている
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
立体図形は問題集の延長線上
立体図形がたくさん出るので、苦手な子供は身構えるかもしれませんが、渋谷教育学園渋谷中学校の立体図形は問題集で対策すればそれなりに解けます。独自性の強い奇抜な難問ではなく、図形で勉強してきた内容を生かして解く正統派な難問です。そのため、受験対策の問題集やその類題をしっかりと解いておきましょう。
作図は独自性が強い
立体図形とは対照的に独自性が強く、失点しやすいのが作図の問題です。過去問をやればわかりますが、類題を探すのが難しい問題が出題されます。自力で対策をするのは大変なので、塾や家庭教師の学校別対策コースで作図問題をやり込むことをおすすめします。
式や考え方を書かせる問題も
算数では式や考え方を書かせるタイプの問題が出ます。解答欄は広めのスペースでとってあるので、比較的書き込みやすいです。要点をまとめる練習をしておきましょう。
場合の数の単元をやり込んでおこう
場合の数の問題は難しいことが多く、ハイレベルな問題まで対策しておく必要があります。場合の数は計算問題、書き出して答えを導き出す問題、どちらも出題されます。
- 難易度が高いので、とにかく過去問をこなして出題傾向に慣れる
- 作図は塾や家庭教師での対策コースの受講を検討する
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
問題数は多くないがスピードが必要
問題数が多くないため、ちゃんと取り組めば時間内に余裕で終わると考えるかもしれません。しかし、問題文が長いため、そこでタイムロスする傾向にあります。気づいたときには、時間切れになりかねません。長い問題文に慣れておきましょう。
選択問題が多いので注意力をもって臨もう
選択問題が多く出題されています。誤っているものを探す問題と適切なものを探す問題が入り混じっているため、問題文を注意深く読み込むようにしましょう。間違えないよう問題文の該当箇所に線を引いておくことをおすすめします。
詰込み型では解けない問題
知識問題が多い学校なら、詰込み型の勉強でも対応できますが、渋谷教育学園渋谷中学校の場合はどちらかというと提示された問題文や資料から思考させる問題が多いです。そのため、中学受験対策で学んでこなかった内容が出題される年度もあり、慌ててしまう子供も少なくありません。
しかし、ヒントは問題の中にあるので、重要ポイントをとりこぼさないようしっかりと読み込みましょう。
- 問題文が長く時間が足りなくなりがちなので、スピーディーに解き進める練習が必要
- 問題文をしっかりと読み込む習慣を付ける
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
歴史は知識を盤石に
思考型の問題が多い学校ですが、歴史ではテキストを暗記していないと解けない問題も多いので、とりこぼしのないように語句を覚え資料を読み込んでおきましょう。
地理がベースになる
分野を横断した問題が出されます。まず地理を復習しておきましょう。地名や地域ごとの特徴が頭に入っていないと、解けない問題も多いです。受験対策では一般的に地理から学びます。その後、歴史を学ぶ際に、地理が歴史を解く上でもベースになると実感するはずです。
一方、地理と歴史の複合型で、思考力を問うような問題も出されています。たとえば、2023年度には、アーネスト・サトウが中禅寺を避暑地として紹介している理由を地形図から読み取って答える問題が出題されています。
時事問題もたっぷり出題
渋谷教育学園渋谷中学校では時事問題をたっぷり出題します。たとえば、2023年度にはコロナの影響でテレワークが普及した背景や運用の現状について掘り下げる問題が出題されています。穴埋め問題ですが、知識を問うというよりは思考力を問う内容となっています。できれば時事のトピックに日頃から関心をもっておきましょう。
ニュースを見たり新聞を読んだりする時間を確保するのが難しいのであれば、ラジオやポッドキャストを活用してください。勉強中に音声を聴くのは向き不向きがありますが、移動中や作業中に臨機応変に聴くことができます。ただし、信頼できるメディアを選ぶことが大前提です。
記述問題に対応できるように
物事の理由を問う問題が多いので、要点を押さえて記述できるようにしましょう。短い一文にまとめる問題が多いですが、中には80字以内といった字数指定で出題される問題もあります。
- とにかく地理は必ず頭に入れておく
- 時事問題対策に常日頃からトピックに関心を持つように習慣付ける
思考力を問う入試。問題文の読み込みがカギ
渋谷教育学園渋谷中学校の過去問をやり込み、出題傾向に合わせて過去問の対策をしてください。
国語は文章量が多いので速読を身につけましょう。総合知識問題では語彙力や文法が問われるため、知識を固めておく必要があります。算数は難問が多く出題されるため、応用力をつけなければなりません。特に作図は独自性の強い出題なので、学校別対策が欠かせません。
理科は問題文を根気強く読み込む力が必要です。少ない時間で長い文章を読み、資料から情報を得なければなりません。知識量・読解力・思考力すべてが問われます。社会は地形図や地図をしっかり押さえた上で、歴史の知識を固め、公民・時事問題にも対応できるようにしましょう。
思考力を問う問題が多く出題されます。問題文をいかに読み込むかがカギです。文中にヒントが散りばめられているので、隅々まで読み込むようにしましょう。