白百合学園中学校は、キリスト教の精神に基づく教育を行っている併設型中高一貫校です。この記事では白百合学園中学校を目指す家庭に向けて、国語・算数・理科・社会の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも白百合学園中学校ってどんな学校?
白百合学園中学校は17世紀のフランスに誕生した、シャルトル聖パウロ修道女会を設立母体とする併設型中高一貫校の女子校です。カトリックのミッション校であり、「一人ひとりをかけがえのない存在として大切にする」という教えを教育の根幹に据えています。併設小学校があり、内部進学してくる生徒約110名と一緒に学びます。
少人数クラスでコミュニケーション能力を養いながら、英語とフランス語の二か国語を学べるのは白百合学園中学校の特徴です。授業は、中学1年から高校3年まで一貫して、英語・フランス語のネイティブの教員によって行われています。
中学三年間のフランス語の授業では、三回に一回の割合で、日本人とネイティブの教員によるチーム・ティーチングも実施。授業外では、「外国語の部屋」と呼ばれる部屋があり、昼休みに行けば、生徒はいつでも英語やフランス語のネイティブの先生と会話できます。
他にも中学のカリキュラムでは、スピーチや即興会話などのスピーキングテスト、発音テスト、多読活動、フランス語フェスティバルなど語学力を高めるためのさまざまなアプローチを採用。中2、3ではGTECテストも受けます。国際教育として「ニュージーランド研修」「Self-Development Program at Smith College」「日仏短期交換留学プログラム(コリブリ)」「女性版エンパワーメントプログラム」「フランス大使館訪問」なども行われています。
また、語学のみならず理数教育にも熱心で、理系志望者の多い学校です。中学の三年間だけで百種類以上の実験や観察を体験できます。
白百合学園中学校の入試概要
白百合学園中学校の入試について見ていきましょう。
2025年度の入試
2025年1月8日水曜日に、海外帰国生入試が実施されます。募集人数は女子15名程度。出願期間は2024年10月1日火曜日10時から12月9日月曜日23時59分。一般入試は2025年2月2日日曜日で、募集人数は女子60名、出願期間は2025年1月10日金曜日10時から1月26日日曜日23時59分までです。検定料はどちらも25,000円です。
2024年度の入試倍率
2024年度の帰国生入試は46名受験し25名合格、実質倍率は約1.8倍。一般入試は受験者数259名に対し合格者数は114名で実質倍率は約2.3倍です。なお、実質倍率の小数点第二位以下は四捨五入しています。
入試区分 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
一般入試 | 259名 | 114名 | 約2.3倍 |
帰国生入試 | 46名 | 25名 | 約1.8倍 |
白百合学園中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
白百合学園中学校の一般入試における出題傾向は以下のとおりです。
国語は大問二つで文章量は年度によって異なる
国語の時間配分は40分で配点は100点、大問は二つです。文章量は5000字程度から8000字程度と幅が広いです。読解文が二つ出題され、物語文と論説文でした。漢字の書き取り、適語を問う問題、言葉の知識を問う問題や、選択問題、字数指定の記述問題などが出題されます。なお、記述問題は五つほどで配点も大きいです。
合格者平均が2024年度は69.5点だったことからもわかるように、難易度自体はそれほど高いわけではありません。一問一問を確実に解く力が求められる内容といえます。
算数は解く過程も大切なポイント
算数の時間配分は40分で配点は100点、大問は五問です。解答欄を見ればわかるとおり、解き方を書く欄がたくさん用意されています。途中経過を疎かにせず、採点者にわかるように書き出しましょう。計算や小問集合はなく大問一から単元別の出題です。
2024年度は合格者平均点が82.4点と高く出たため、2025年度の問題は相対的に難しくなる可能性があります。頻出単元は平面図形、速度、比と割合などです。
理科は全分野から満遍なく出題
理科の時間配分は30分で配点は75点、大問は五つです。生物、地学、物理、化学から満遍なく出題されます。出題は知識問題が多めで、選択問題、適語を書く問題、計算問題や記述問題、グラフを書く問題などさまざまです。物理と化学は計算問題が出題されやすい傾向にあります。
解答欄が60以上と問題数こそ多めですが、レベルとしては基本・標準からの出題がメインなので白百合学園中学校の理科はけっして解きづらくはありません。
社会は問題数が多く時間との戦い
社会の時間配分は30分で配点は75点、大問は三つです。全体の解答欄数が60近くあり、時間との戦いになります。地理分野は各地の地名や県名、産業、工業、農業などのデータがよく出題されます。歴史分野は主題に沿って掘り下げていく内容が多く、時代順に並び替える問題が多く出ます。公民分野は憲法や国会、時事問題などです。
2024年度は、地理では白百合学園のある千代田区にまつわる問題、歴史では貨幣の歴史を紐解く問題、公民では国の予算案を掘り下げる問題が出題されました。
- 国語は一問一問の配点が大きく確実に解く力が求められ、算数は途中経過も採点に繋がる
- 理科は基本・標準レベルの知識問題が多く、社会は問題数が多く時間との闘いになる
白百合学園中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
白百合学園中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
抽象的なテーマの説明文でも読みこなせるように
2024年度の説明文は「消費」を問い直す内容でした。「多消費によって豊かさと自由が得られるというイデオロギー」がいかに定着化したか、その裏側でなにが進行してきたかを考えるという内容です。小学六年生が挑むには、なかなか理解が難しいテーマと言わざるを得ないでしょう。
中学受験では、子供が考えやすいテーマを選んで出題する学校もありますが、対照的な出題です。難しいテーマが出題される可能性がある以上、どんな内容でも読みこなせるよう対策する必要があります。
まずは幅広いテーマの説明文に取り組むことです。読みこなしにくい問題は子供が避けたがる傾向にありますが、むしろそうした問題にこそ慣れておかなければならないでしょう。選り好みをせず、さまざまな説明文に取り組んでおきましょう。
「注」の部分をチェックしながら
2024年度の説明文では「イデオロギー」「資本投資」をはじめ、難しい言葉には注がついていました。意味が分からない言葉が出てくると、それだけで文章への集中力が途切れてしまう子供は少なくありません。文章のあとの「注」をチェックし、意味を理解しながら読んでいきましょう。
接続詞の使い方を理解しよう
説明文を読む際に、接続詞の効果を理解できていると論旨を把握しやすいです。特に白百合学園中学校の場合、空欄に入る接続詞を問う問題も出ます。2024年度は空欄二か所に当てはまる接続詞を選ぶ問題が出ました。日頃、読解文を読む際に接続詞を囲んでみて、文章をどうつないでいるのか意識的にチェックするようにしてみてください。
漢字の書き取りでは確実に得点をとろう
漢字の出題は特に難しいものは出ないので、確実に点をとりたいところです。「とめ」「はね」「はらい」で失点しないようにしましょう。特に筆圧が弱いタイプの子供は気をつけてください。字の癖はすぐに直るものではないので、日頃から練習しておいてください。
字数指定のある記述に慣れておこう
白百合学園中学校では50字~80字以内程度の記述がよく出ます。受験問題集で、同じぐらいの字数の記述の問題を多くこなして、要点のまとめ方を身につけておくとよいです。
- 特に子供が避けがちな難解なテーマの説明文も読みこなせるように、幅広いテーマに取り組んで慣れることが重要
- 読解分では接続詞の使い方を意識してチェックし、記述では問題集で50字~80字にまとめる練習をしておく
- 漢字の問題で失点しない様に「とめ」「はね」「はらい」を日頃から意識する
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
問題の取捨選択を
2024年度の合格者平均点は八割を超えたため、おそらく2025年度の問題は相対的に難しくなるはずです。難しい問題が増えるとなると、どの問題を優先的に解くかの判断を素早く行えることが重要になります。
時間がかかる問題は後回しにしたり、自分の実力では解けない問題を見極めたりできるよう、過去問で練習しておきましょう。ただし、過去問の中でも平均点が高すぎる年度はあまり参考にならないので気をつけてください。
頻出単元をやり込んで対策を
平面図形・比と割合・速度などの頻出単元をやり込んで解けるようにしておきましょう。受験問題集を応用レベルまで解けるようにし、とりこぼしのない状態に仕上げてください。奇問の類は出ないので、問題集をやり込むことが得点につながります。特に平面図形は難しい問題が出やすいので、一番しっかりと対策しておきたいところです。
解法を書く問題で得点しよう
解答欄に解法を書く問題が出題されます。どのように解いたのか途中経過がわかるようにきちんと書き出して、少しでも点がとれるようにしたいところです。
- 難易度が上がる可能性があるため、過去問で問題の取捨選択を練習し、時間がかかる問題は後回しにするなどの判断力を養う
- 解法を書く問題が出るため、採点者に伝わりやすい途中経過を書く習慣をつける
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
理科の問題量にどう取り組むか
2024年度は大問五つでした。小問は30問程度ですが、解答欄の数はその倍以上です。これだけのボリュームを限られた時間内にこなすのは大変です。スピードが求められます。
難易度が高い問題は少なく、語句を答える問題や選択問題で問われるのは基礎知識が主です。計算問題もそんなにひねった内容のものは出ません。記述問題は難しい問題もあれば簡単な問題もあります。少なくとも簡単な問題はきちんと解きたいところです。
問題数が多い分、配点の偏りは比較的少ないので、解ける問題を確実に解く姿勢を貫くとよいでしょう。解けない問題に時間を割いていては合格ラインに到達できないテストです。
リード文を読みこなす練習を
理科のリード文は会話文形式のものが多く、比較的読みやすいですが、速読しないと時間が足りなくなるので読みこなす練習をしていきましょう。
グラフをフリーハンドで書けるように
2024年度は地学の分野でグラフを書く問題が出ています。2023年度は物理の分野で同様の問題が出ました。どの分野から出題されるにしても、フリーハンドで書かなければならないので、きちんと書けるように練習しておいてください。
- 問題数が多く解ける問題を確実に解くことが大切で、基礎知識をしっかり押さえてスピードを意識した解答が必要
- フリーハンドでグラフを正確に書けるよう繰り返し練習し、どの分野でも対応できるようにする
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
理科と同様、時間が足りなくなりがち
社会も理科と同様に問題数が多く時間が不足しがちです。2024年度の問題の解答欄は60近くあり、解くのに精いっぱいの分量といえます。記述問題が複数ある上、選択問題より語句を答えさせる問題が多いので、手間がかかるのです。
問われている知識自体は基礎から標準レベルなのでそんなに難しいわけではありません。どちらかといえば、標準的な知識が定着化しているかを確認することに重きを置く内容です。そのため、受験テキストにある内容を隅々まで理解できていることが大切です。
なお、語句を答える問題は漢字で書くものは必ず漢字で書いてください。
解けない問題は後回しに
理科と同様、問題をどういう順番で解くか優先順位が問われます。解けない問題は後回しにしてください。数が多いので、限られた時間の中で一問でも多くの問題を解く姿勢が大切です。
地形図や資料から必要な情報を読み取れるように
地理では、地図や地形図、資料の情報を読み取って答える問題が出題されます。地図や地形図について理解を深めておいてください。白地図を使って、地理的な名称や位置関係を頭に入れておきましょう。
- 時間内にできるだけ多く解けるように優先順位をつけて解き進め、難しい問題は後回しにして時間の無駄を避ける
- 地図や地形図から情報を読み取れるようにし、白地図を活用して地理的な名称と位置関係を理解する
優先順位の判断や処理速度を求められる科目が多い
白百合学園中学校の入試では、優先順位の判断や処理速度を求められる科目が多いです。ボリュームたっぷりなので時間との戦いになります。
国語は、取り組みづらいテーマの問題も出題されるので、さまざまな文章に慣れておくとよいでしょう。難解に感じるテーマも避けないで取り組んでおいてください。記述問題もたくさん出るので、練習しておきましょう。
算数の2025年度の問題は難しくなることが予想されます。頻出単元である平面図形・比と割合・速度などを中心にやり込んで対策してください。難しい問題は後回しにし、解ける問題から解いていくとよいでしょう。
理科は問題量にどう取り組むかが問われます。とにかく問題数が多く、出題形式も多様です。素早く解けるようにしておきましょう。
社会も理科と同様、問題数が多く大変ですが、難易度は標準レベルなので一問一問正確に解くよう努めてください。地理では、地形図や地図を使った問題が出るので、理解を深めておくことをおすすめします。