港区にある高輪中学校は、長い歴史を持つ男子校として人気を集める中高一貫校です。この記事では、高輪中学校を目指す家庭に向けて各科目の出題傾向や勉強法を紹介します。
そもそも高輪中学校ってどんな学校?
高輪中学校の前身は、1885年に京都西本願寺によって開校しています。長い歴史を経て、現在は「人を育てる指導」「大学へ進学させるための指導」の二つを目標に、心身両面の教育を中高一貫校として実践。そのために、中学校・高校の六年間を三期に分けて指導しています。
前期学年が中一から中二で基礎学力徹底期、中期学年が中三から高一で進路決定・学力慎重発展期、後期学年が高二から高三で総仕上げ・進路達成期です。これらの期間を通して、「挨拶のできる人間」「思いやりのある、心の温かい人間」「協調性のある人間」を育て、同時に志望大学に合格できるだけの学力を定着化させています。
中学三年生からは前学年の成績を基準に、選抜クラスを二クラス設置し、応用力を深めるカリキュラムを導入しています。ただし、進度は一般クラスと同じです。選抜クラスと一般クラスのクラス替えは毎年行われるため、日々の努力が問われます。
資格検定受検の奨励も、高輪中学校における特徴的な取り組みです。漢字検定・英語検定・数学検定の三級全員合格を基本とし、準二級合格を目指します。グローバル化に対応できるよう、中学三年生では、GTEC for STUDENTS(Basic)、高校一・二年生ではGTEC for STUDENTS(Advanced)を全員が受検しています。
入学時からタブレット型ノートPCを持たせて、オンライン授業で活用するなどICT教育にも注力している学校です。
高輪中学校の入試概要
高輪中学校の入試について見ていきましょう。
2025年度の入試
A日程が2月1日土曜日午前で男子70名、B日程が2月2日日曜日午前で男子70名、C日程が2月4日火曜日午前で男子30名、算数午後入試が2月2日日曜日午後で男子20名でした。
出願期間はどれも1月10日金曜日開始(入力だけなら12月20日開始)で、A日程が1月31日金曜日23時59分まで、B日程が2月1日土曜日23時59分まで、C日程が2月3日月曜日23時59分まで、算数午後入試が2月2日日曜日11時までです。
なお、帰国生入試は1月12日日曜日午前で男子10名の募集です。帰国生入試は2科目型(国語・算数)と3科目型(国語・算数・英語)に分かれます。受験料は算数午後入試が10,000円で、それ以外は25,000円です。ただし、2回同時出願は35,000円、3回同時出願は45,000円に設定されています。
2024年度の入試倍率
2024年度の入試倍率はA日程が受験者数368名、合格者数106名、実質倍率約3.5倍です。B日程は受験者数513名、合格者数142名、実質倍率約3.6倍、C日程は受験者数447名、合格者数66名、実質倍率約6.8倍、算数午後入試は受験者数342名、合格者数90名、実質倍率約3.8倍です。
帰国生2科目型は受験者数28名、合格者数11名、帰国生入試3科目型は受験者数6名、合格者数4名で、帰国生入試全体の実質倍率は約2.3倍です。なお、実質倍率は小数点第二位以下を四捨五入しています。
入試区分 | 受験者数 | 合格者数 | 実質倍率 |
---|---|---|---|
A日程 | 368名 | 106名 | 約3.5倍 |
B日程 | 513名 | 142名 | 約3.6倍 |
C日程 | 447名 | 66名 | 約6.8倍 |
算数午後入試 | 342名 | 90名 | 約3.8倍 |
帰国生2科目型 | 28名 | 11名 | 約2.5倍 |
帰国生3科目型 | 6名 | 4名 | 約1.5倍 |
高輪中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
高輪中学校の四教科の出題傾向は以下のとおりです。
国語は知識問題・説明文・物語文の出題
国語の試験時間は50分で配点は100点、大問は三つです。大問は知識問題、説明文、物語文で構成されています。知識問題で問われるのは漢字の読み書きができるか、語彙力があるかどうかなどです。読解文は説明文も物語文も、読みやすい題材が出題されています。
知識問題は知識問題の大問のみの出題ではなく、文章題のほうにも含まれ、文章に出てきた表現の意味が問われることがあります。
算数は解き方・考え方を書く問題も
算数の試験時間は50分で配点は100点、大問は五つです。大問一は計算問題、大問二は小問集合、大問三以降は単元別の出題となっています。計算も小問集合もそれぞれ四問ずつ出題されるのですが、小問集合の最後の小問は解き方・考え方を書く欄が設けられています。
計算も小問集合も難しい問題は出ません。速さ、平面図形、立体図形が頻出で、出題傾向がはっきりしています。
理科は各分野からの出題
理科の試験時間は30分で配点は60点、大問は四つです。大問は各分野から出題されています。選択問題が多めですが、記述問題や、年度によってはグラフを書く問題が出題されるケースもあります。全体的に問題自体はあまり難しくはなく、基本的な知識が定着化しているかを確かめるための内容です。
社会は選択問題が多めで記述もあり
社会の試験時間は30分で配点は60点、大問は三つです。大問は地理、歴史、公民の各分野から出題されています。地理は雨温図や地図、図表などが出題され、他の分野でも地理を下敷きにした問題が出ることがあります。出題形式としては選択問題が多めですが、語句を答える問題や記述問題も複数出題されます。地図に書き込む問題が出ることもあります。
- 国語は知識問題と読みやすい読解文が出題され、算数では考え方を書く小問が特徴的
- 理科は基本知識の確認が中心で、社会は選択問題が多く記述も出題される
高輪中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
高輪中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
知識問題で確実に点数がとれるように
漢字の読み書きや語彙力の問題は確実に点がとれるようにしたいところです。漢字は難しい漢字が出るわけではないので、日々の積み重ねがものを言います。習った漢字はとりこぼしなく頭に入れておきましょう。一度覚えても抜けてしまうものなので、繰り返し覚え直す取り組みが必要です。
毎日数を決めて漢字のチェックをこなしていくことをおすすめします。間違えた漢字は確実に解けるようになるまで、何度もやり直してください。
語彙力を問う問題では、慣用句やことわざなどを答えます。語彙を増やす際には、一気に覚えるのではなく、日々コツコツと頭に入れましょう。知らない言葉を見つけたら、その場で覚える習慣をつけてください。
説明文の問題に身構えすぎないで
高輪中学校の説明文は難しすぎる抽象的な題材は出ません。説明文に対して苦手意識を強く持つ子供は多いですが、問題集の標準レベルが読みこなせるようであれば問題ありません。
字数指定の記述問題に対応できるように
記述問題はさまざまな指定字数の問題が出題されます。ただし、比較的短い字数での出題が多いです。過去問をやり終えたら、類似する問題を他の過去問や問題集からピックアップし、取り組んでみましょう。
- 漢字や語彙力の問題は日々の積み重ねが大切なので、繰り返し復習して確実に解けるようにする
- 標準的な説明文が出題されるため、問題集の基本レベルを読みこなせるように準備しておく
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
計算問題の数が多い
大問一で四つほど計算問題が出ます。計算問題の数が他校より多めなので、失点しないようにしたいところです。過去問を解いてみて間違えることがあれば、どうして間違えてしまったのかを早めに把握するようにしましょう。
多くの場合、計算ミスをしやすい子供は、解き方の手順があやふやだったり、見直しの癖がついていなかったり、途中式を書き出すときに乱雑だったりします。一問一問確実に解けるようにしておきましょう。
小問集合で落とさない
小問集合で出題される問題はあまり難しくありません。ただし、四問目に必ず解き方・考え方を書き出す問題が出題されます。読み手に伝わる書き方ができるように、対策しておきましょう。
合格者平均点が高い科目として対策を
算数は問題が難しくないため、合格者平均点も高く出る傾向にあります。八割近い年度も珍しくないので、それを踏まえての対策が必要です。ケアレスミスひとつで合否が分かれてしまいます。過去問をやり込んでみて、もし現状合格ラインに届いていないようであれば、原因を分析してすぐに対策しましょう。よく出題される単元は明確なので、その中で苦手な単元が判明したら類題をできるだけたくさん解いておくとよいです。
- 大問一の計算問題は多く失点が命取りになるので、過去問で間違いを分析し一問一問確実に解けるようする
- 算数は合格者平均点が高いので、ケアレスミスを防ぎ、苦手単元を重点的に復習して八割得点を目指す
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
理科の内容は基本が多い
高輪中学校の理科は、各分野の基本的な内容をとりまとめた内容です。その中で時々、点差がつくようなひと捻りした問題が出題されます。まずは、テキストに載っている知識をとりこぼしなく固めて、漢字の用語は漢字で書けるようにしておいてください。
頻出単元の対策を
頻出単元としては、化学反応や力のつり合いが挙げられます。実験観察からの出題が多く、計算がよく出るため、ひと通り解けるようにしておいてください。また、実験・観察における手順と考え方を押さえておきましょう。
記述問題に対応できるように
点差がつきやすい問題として記述問題が挙げられます。記述問題は、暗記力よりも思考力を問うタイプの問題が多いです。本人の見識を問う問題もあれば、設問内のヒントをとりこぼさず読めているかを問う問題もあります。後者は、問題さえ読み込めていれば解ける内容なので、慌てずにヒントを探してみてください。
たとえば、2023年度は生態系の話をしている文章を読ませて、「なぜホタルを増やして、放しただけでは数は増えていかないのか」という問題を出題しています。問題文の中で語られている生態系のバランスの話を理解できていれば、解ける内容です。
- 基本的な内容が中心だが、ひと捻りした問題も出題されるため、基礎を徹底的に固めつつ、漢字での記述練習もしておく
- 記述問題では思考力が求められるため、設問文を正確に読み込み、ヒントを見落とさないようにする
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
地図に書き込む問題も解けるように
地理分野では地図がきちんと頭に入っているかが問われます。2024年度は、川についての文章を読み、関連する地理を答えていく問題がありました。その中で吉野川の流路を地図に記入せよという問題もあり、地理的な情報が頭に入っているかが問われました。
また、雨温図や各地のデータなどを用いて解く問題が出ます。地理は知識が身についていないと解けない問題がほとんどなので、とりこぼしがないか改めて確認しておきましょう。
歴史分野は幅広いスパンで押さえる
歴史分野はひとつの時代を掘り下げた出題というより、長いスパンで出題される傾向があるので、すべての時代を押さえておいてください。歴史の事柄を覚える際は地理的な位置関係と結びつけて頭に入れておくようにしましょう。各出来事が起こった場所が今の何県に当たるのかをチェックしておくとよいです。
公民分野は時事と切り離せない
公民分野は時事を切り口にした出題となっています。そのため、ニュースで扱うような内容は頭に入れておくとよいでしょう。政治や社会問題においてなにが議論されているのかを知っておきましょう。
ただし、導入文こそ時事関連ですが、実際に得点につながる問題は入試テキストに載っているような基礎知識が多くを占めます。公民分野は覚えにくいと感じる子供も多いようですが、抜けている知識はないかを確認してから受験に臨むようにしましょう。
- 知識が身についていないと解けない問題が多いため、地理的な情報をしっかり確認しておく
- 歴史は地理的な位置関係と結びつけて覚え、出来事の背景を正確に押さえておく
基礎固めをした上で問題を読み込んで挑もう
思考力を問う問題よりは、基礎的な知識が定着化しているかを問われる入試内容だといえます。頻出単元を中心に、どの科目も隅々まで勉強できていることが大切です。
国語は知識問題が多く出るので解けるようにしておきましょう。扱う文章自体は難易度の高い内容ではないので、落ち着いて読み込むようにします。記述問題は字数指定で出題されるので、類似する字数で出題する学校の過去問をやり込むのもよいでしょう。
算数は計算問題や小問集合が多めで、頻出単元もはっきりしています。難しい問題ではなく、いかに標準的なレベルを解く力が定着化しているかを問う問題です。そのため、平均点は高く出る傾向にあります。頻出単元を中心に対策し、確
実に得点できるようにしましょう。
理科は基本的な知識を問う問題が多く、選択問題も用語や数を記入する問題もあります。化学反応や力のつり合いがよく出るので対策しておきましょう。どちらも計算問題が出やすい単元なので、スムーズに解けるように仕上げてください。
社会はまず地理的な知識を身につけて、その上で、長いスパンでの歴史の知識や、テキストに載っている公民の知識をひとつひとつ確実に身につけるようにします。受験前に抜けている箇所がないか確認ておいてください。