桐朋中学校はその整った設備や環境のよさから人気を集める学校です。この記事では、桐朋中学校を目指す家庭に向けて各科目の出題傾向と勉強法を紹介します。
そもそも桐朋中学校ってどんな学校?
桐朋中学校は桐朋学園の学校のひとつで、近年再び人気が上がってきている男子校です。充実した部活動のラインナップや広大なグラウンドをはじめとする設備や自由な教育内容で人気を集めています。駅から徒歩十五分程度の場所に位置し、閑静で緑豊かな環境にある学校です。
リベラルな価値観を大切にしていて、多様性を重んじています。他者との違いを受け容れ、尊重する校風です。校則は比較的緩やかで、服装も極端に着崩さない限り指導されることはありません。また、「自主・勤労・敬愛」を掲げていて、「自分で考えて、決めて、行動できる人間」になれるようにと生徒をサポートしています。
中学校ではあえて選択授業は用意せず、偏りなく知識を身につけさせています。小まめな小テストや宿題がありますが、これらは生徒を管理するためではなく、生徒の主体的な学習習慣の確立を促進するためのものです。学業において、学校側のフォローが手厚いため、中学生で塾に通っている人の割合は一割程度です。
桐朋中学校はクラブ活動が盛んなことでも知られています。クラブ活動は自由参加ですが、百パーセントに近い生徒が参加していて、中にはかけ持ちしている生徒もいるほどです。バスケット部、体操部、水球部、卓球部、囲碁部などが実績の高さで知られています。
桐朋高校への進学は本人と保護者が進学を希望し、学校長の推薦を得られた場合に実現します。実際、ほとんどの生徒は桐朋高校に進学しています。しかし、学習面や生活面で著しく問題があった場合は、推薦してもらえないケースもあるようです。例年、さまざまな事情で外部の学校に進学する生徒はいます。
桐朋中学校の入試概要
桐朋中学校の入試について見ていきましょう。
2023年度の入試倍率
2023年度の出願者数は第一回が380名、第二回が597名でした。そのうち、両方に出願した人は234名でした。実際に受験したのは第一回が353名、第二回が460名です。ここのところ、受験者は右肩上がりの傾向にあります。合格者最低点及び実質倍率は、第一回が193点(得点率60.3%)で2.5倍、第二回は216点(得点率67.5%)で2.1倍でした。科目ごとの合格最低点は設けていません。合計点によってのみ合否を判定しています。受験者は広い地域から集まっていて、東京西部、神奈川県、埼玉県南部などです。
2023年度の入試統計
第一回 | 第二回 | |
---|---|---|
出願者数 | 380名 | 597名 |
実際の受験者数 | 353名 | 460名 |
合格者最低点 | 193点(得点率60.3%) | 216点(得点率67.5%) |
実質倍率 | 2.5倍 | 2.1倍 |
2024年度の入試
2024年度の入試の出願者数は、第一回入試が375名、第二回入試が640名でした。募集人員は合計で約180名。内訳は、2月1日の第一回が120名、2月2日の第二回が60名です。出願期間は第一回入試が2024年1月10日(水)午前0時~1月29日(月)午後11時59分で第二回入試が2024年1月10日(水)午前0時~2月1日(木)午後11時59分でした。
桐朋中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
桐朋中学校の一般入試における国語・算数・理科・社会の出題傾向を紹介します。
国語では記述問題が四、五問出題
試験時間は50分、大問は二つで配点は百点です。物語文や随筆文、説明文などが出題されます。出題される問題は漢字の書き取り、記号問題、選択問題、記述問題などです。記述問題が意外と多く、5問前後出題されます。五十字程度の問題が多いですが、百字程度でまとめる問題もあり、それなりに長い文章を書かなければなりません。
また、説明記述がよく出題されるため、自分の頭で要点を整理して、文章として伝える力がないと難しいです。文章は七千字前後が多いため、素早く読み、解いていかなければなりません。
算数は難易度順の出題
試験時間は50分、大問は七つ程度で配点は百点です。桐朋中学校の算数は難易度順に出題されます。前半に基本的な問題、後半に難易度の高い問題が配置されている構成です。大問一は計算、大問二は小問集合、大問三以降で単元別の出題という構成になっています。
年度によっては八割近く解けないと合格できない年もあるので、標準問題だけではなく、ある程度難しい問題も解ける必要があります。頻出単元は割合、平面図形、速さ、数の性質、比、消去算などです。特殊算を使用する問題も出ます。答えを記入するタイプの問題がメインですが、途中式を記述する問題も出題されるため、書けるようにしておかなければなりません。問題文は比較的シンプルに見えますが、後半の問題は歯ごたえがあるので注意しましょう。
理科は思考力を問う問題も
試験時間は30分、大問は四つで配点は60点満点です。理科は中学受験ならではの正統派な問題と思考力を問う問題の両方が混ざっています。どちらも解けるようにしておきたいところです。全分野にわたって幅広い単元から出題されています。大問一つにつき一分野の構成になっています。
実験や観察からの出題が多く、図表を通して思考力を試す内容のものもあります。問題文は長くはないですが、短くもありません。全体的に図表が多いので、問題用紙を見たときにボリュームがあるように感じられることでしょう。実際、30分で解ききるためには、時間配分に気をつけなければなりません。
社会は全分野から満遍なく出題
試験時間は30分、大問が三つで配点は60点です。全分野から満遍なく出題されていて、大問ひとつにつき、一分野となっています。
中学受験の王道の出題が多く、問題レベルもそんなに難しくありません。選択問題や語句を答える問題がメインです。記述問題も毎年二問出ます。だいたい、歴史と公民で一問ずつ記述が出る構成です。記述は思考型の設問が多く注意が必要となります。図表の読み取りが必要なケースもあります。
地理は日本の問題だけではなく、日本とつながりの深い国を扱った問題も出題されます。
- 合格者平均点の高い年は、ケアレスミスが合否を分けてしまう
- 特に算数が合否の分かれ目になりやすい
桐朋中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
桐朋中学校に合格するためには、どういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
漢字の書き取りでは失点しないように
漢字の難易度は高くないので、失点しないように確実に覚えましょう。標準レベルの問題ばかりです。
速読ができるように
国語は速読ができるようにしておきましょう。七千字程度ですが、記述問題の量を考えると問題を解くのに時間を割きたいところです。文章を読み込むのに手間取っていてはタイムアウトしてしまいます。
記述の練習をしておこう
抜き出しの問題ではなく、自分で考えてまとめるタイプの問題が多いです。解答欄に収まるようにポイントを絞って書く練習をしておいたほうがよいでしょう。過去問をやって、足りない分は問題集で練習してください。ただ要約するだけではなく、説明する力も必要となります。
- 漢字は取りこぼしをしないように確実に覚える
- 「速読」出来ないと時間が足りなくなるので必ず身に付ける
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
計算問題で失点しないように
桐朋中学校では冒頭で三問程度計算問題が出ます。分数や小数、括弧を使った計算です。計算が苦手な子供は毎日問題数を決めてドリルをこなしてください。わかっているつもりでもミスが多いのであれば、慣れるまでやり込みます。
計算ミスは問題慣れしていないケース、途中式を乱雑に書くためミスを頻発してしまうケースなどさまざまです。原因を突き止めて対策しましょう。
大問二の小問集合は確実に解く
大問二は小問集合です。このあたりの難易度は低めに設定されているため、確実に解けるようにしましょう。問題集の基本レベルをしっかりと固めて、とりこぼしなく解けるまで周回してください。
平面図形・速さ・数の性質あたりで点差をつける
受験者平均点と合格者平均点では十点前後開きがあります。他の科目は五点程度なので、算数が合否の分かれ目になりやすい科目であるのは間違いありません。
では、算数における点差をどこでつけるかが問われるわけですが、平面図形・速さ・数の性質あたりの単元をやり込んでおきましょう。この辺りの単元は頻出であるというだけではなく、やや難しめの問題が出題される傾向にあり、比較的点差がつき易いです。
難易度順の出題。捨て問の判断は素早くしよう
年度や回によって平均点は上下するので、「何割とればよい」とは一概に言えません。しかし、桐朋中学校の問題は難易度順なので、捨て問の判断は比較的容易です。
- 計算問題はミスの原因を突き止めながらドリルをやりこむ
- 平面図形・速さ・数の性質の単元をしっかりやり込む
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
実験や観察の問題が解けるように
桐朋中学の理科では実験や観察の問題が多く出ます。時間が30分しかないので、サクサク解いていかなければなりません。標準レベルの問題も多く、受験の問題集をやり込んでおけばある程度確実に点はとれます。
しかし、中には図表を読み解いて答えを書くような、思考力タイプの問題も出ます。思考力タイプの問題は、知識問題に比べるとどうしても時間がかかるため、焦りを感じる子供も少なからずいるでしょう。見慣れない問題に出会っても、手順を踏んで解けるよう、過去問で慣れておくようにしましょう。
その際に合わせて時間配分の感覚を磨いておくとよいです。理科の平均点は年度や回によって十点前後違いますが、高いときには合格平均点が60点中45点を超えてくることもあるので、できるだけすべて解くようにしてください。
計算問題が解けるように
理科は計算問題も複数出題されます。基本的な計算も多いですが、表やグラフの数字をちゃんと読めていないと間違えてしまいがちです。図表やグラフを見ながら解く計算に慣れておきましょう。
また、計算問題の小問が連続して出題される場合、前の計算でミスをするとそのまま連鎖的に間違えてしまい、大きな失点となるケースがあります。一問一問確実に得点できるようにしたいところです。
- 過去問を活用して時間配分と思考力タイプの問題に慣れる
- 図表やグラフを見ながら解く計算に慣れて一問一問確実に解く習慣を付ける
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
地理は白地図でやり直して
社会はどうしても、最初に学ぶ地理から順に抜けていきやすい傾向にあります。受験前にどれだけ復習できるかが大切です。桐朋中学校対策では、白地図を通して地域の情報を覚え直しておいてください。加えて、日本と周辺諸国の関わりなども出題されるので、こちらも覚え直しておきましょう。
歴史は流れを説明できるように
歴史は流れを説明できるようにしておきましょう。歴史では並べ替えの問題が出ます。各単元で扱う時代の流れはもちろん、全体の歴史の流れも説明できるとよいです。学習漫画も積極的に活用しましょう。
公民分野の基本を頭に入れて
選挙制度や三権分立など公民分野の知識を固めてから臨みましょう。うろ覚えだと、数字や用語を混同しやすい分野なので、何度も覚え直してください。
また、公民分野は社会問題と絡めた出題も多いです。直近の選挙や話題になっている法改正などには注目しておきましょう。時事のテキストを学ぶことはもちろん大切ですが、リアルタイムでニュースを追いかけたいところです。
- 地理は忘れやすいので受験前に白地図で復習する
- 公民分野の知識を固め、日々のニュースを通して社会問題も頭に入れるようにする
年度や回によって合格者平均点に開きがあるので注意
桐朋中学校の合格者平均点を見てみると、2023年度だけでも開きがあるのがわかります。2023年度は、国語の第一回が57.6、第二回が67.3。算数の第一回が68.3、第二回が78.6。理科の第一回が38.8、第二回が46.6。社会の第一回が44.3、第二回が41.5でした。つまり、同じ年でも科目によって十点程度の差がついているのです。そのため、昨年度の基準だけで「何割解ければ合格」とはいえません。確実に受かるラインとして目指すなら八割でしょう。一問でも多く正答を導き出せるよう頑張ってください。
国語は記述問題が多いので、時間がかかります。速読に対応できるようにしておきましょう。要点をまとめて説明する力も必要です。算数においては大問一、二で確実に得点できるようにし、それ以降の問題は頻出単元をやり込んで対策しましょう。理科は実験・観察の問題や計算問題をやり込んでおきます。社会は全分野から出るのでとりこぼしのないようにしてください。
合格者平均点の高い年は、ケアレスミスが合否を分けてしまいます。スピードだけでなく正確さが必要です。問題量が多い科目にも対応できるよう、過去問をやり込んで時間配分を間違えないようにしましょう。過去問に取り組む際には本番を意識して、タイマーを使ってください。