東京学芸大学附属国際中等教育学校はその名のとおり、海外に目を向けている学校です。特色ある外国語教育および国際理解教育が推進されています。この記事では東京学芸大学附属国際中学校を目指す家庭に向けて、勉強法を紹介します。
そもそも東京学芸大学附属国際中学校ってどんな学校?
東京学芸大学附属国際中学校とはどんな学校なのでしょうか。
練馬区東大泉に位置する学校
東京学芸大学附属国際中学校は練馬区東大泉にあり、西武池袋線「大泉学園」駅から徒歩8分ほどの場所にあります。
東京学芸大学附属国際中学校は六年制
東京学芸大学附属国際中等教育学校は、平成19年に創立された男女共学の中等教育学校です。国立大学の附属校として人気を集めています。中学校という名称から三年制を思い浮かべがちですが、六年制の学校で、一年生から六年生まであります。
国際色豊かな学校
生徒のおよそ四割が帰国生または外国籍の生徒であり、特色ある外国語教育ならびに国際理解教育を積極的に進めています。
東京学芸大学附属国際中学校の教育理念って?
東京学芸大学附属国際中学校の教育理念は、「グローバルな視野の育成」「多文化共生の教育」「多様性と共通の価値・ルールの確立」「社会参加を通した市民性の育成」「基本的な知識・技能の習得と特色ある中等教育のカリキュラムの開発」です。
MYPとDPのIB一貫教育を実践
2010年2月5日にIB加盟校(IB World School)に認定され、MYP(Middle Years Programme)認定校となりました。また、2015年3月31日にはDP(Diploma Programme)認定校にもなっています。東京学芸大学附属国際中学校は、MYPとDPのIB一貫教育を実践する初の国公立学校です。
なお、MYPは11歳から16歳までの生徒を対象とするプログラムです。生徒の創造的、批判的、内省的思考を育成するためのカリキュラムを提供します。
DPは16歳から19歳を対象としていて、知識や探究心、思いやり、共感力を育成します。2年間履修し、試験を受け一定の成績をとることで、大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能なプログラムです。
キャリア形成に積極的
東京学芸大学附属国際中学校はキャリア形成に積極的です。30以上の企業を招いてのジュニアインターンシップや、多様な職種・業種の人を招いてのキャリアエデュケーション、ワークショップを実施しています。六年生まであるので、学年が上がれば大学に向けた支援も手厚いです。
東京学芸大学附属国際中学校の入試概要
東京学芸大学附属国際中学校の入試概要をチェックしましょう。
受検までの流れ
東京学芸大学附属国際中学校ではまず、書類審査(志願理由書・報告書または成績証明書・活動実績申告書)があります。その後、A方式(作文検査)かB方式(適性検査)を出願時に選択し受検。そのあと、面接という流れです。
2023年度のA方式は募集30名に対し、志願者数160名、実際の受検者数154名で合格者数34名でした。B方式は募集30名に対し、志願者数159名で受検者数141名、合格者数34名です。つまり、A方式とB方式の合格者数はぴったり同じでした。過去4年を振り返っても、A方式とB方式は同数程度の人数を合格させているようです。
なお、東京学芸大学附属国際中学校では9月に別途編入学も行っています。そちらは2023年度では志願者21名、受検者20名で合格者は7名です。
全体の配点
書類審査100点、作文検査(A方式)または適性検査(B方式)100点、面接50点です。
募集要項等のダウンロードはホームページで
東京学芸大学附属国際中学校の募集要項は学校ホームページにPDFが用意されています。
東京学芸大学附属国際中学校における出題傾向
東京学芸大学附属国際中学校ではどんな問題が出題されるのでしょうか。
A方式とB方式に分かれる
東京学芸大学附属国際中学校の問題は作文検査のA方式か、適性試験のB方式に分かれます。学校を受ける際は、いずれかひとつを選択します。
A方式の検査内容
A方式の場合、作文検査を受けます。ひとつめは外国語作文で、検査時間は45分、85 点満点です。与えられた課題を理解し、豊かな発想をもって考えや意見を表現します。使用できる外国語は、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、韓国・朝鮮語のいずれかです。ふたつめは基礎日本語作文で、検査時間は30分、15点満点です。経験や知識に基づいて自分の考えを表現できるかが問われます。
B方式の検査内容
B方式の場合、適性試験Ⅰおよび適性試験Ⅱを受けます。適性検査Ⅰの検査時間は45分で50点満点です。検査Ⅰは大問2題で構成されています。自然環境等に関して、多角的な視点から考える問題や、実世界のさまざまな場面において、数理的に考えて対処する問題が出題されます。適性検査Ⅱの検査時間も45分で50点満点です。大問1題で構成されていて、社会問題等に関わる資料から問題を見いだし、自らの考えを表現します。
- A方式(作文検査)とB方式(適性検査)を出願時に選択する
- どちらの方式でも自分の考えを表現する力が求められる
東京学芸大学附属国際中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
東京学芸大学附属国際中学校に合格するためには、どんな勉強が効果的といえるのでしょうか。
過去問をホームページでチェックしよう
東京学芸大学附属国際中学校では、A方式・B方式両方の過去問をホームページで公開しています。さまざまな言語で受検できるため、過去問もそれに合わせて細かく細分化されています。自分の受ける予定の言語で問題をチェックしておきましょう。受検前に出題形式を知っておけば、イメージを固められます。間違いなく本番に落ち着いて臨むための一助となります。
面接対策をしておこう
東京学芸大学附属国際中学校では面接も重視されます。どのような点に気をつけるべきでしょうか。
面接の配点は50点
面接は確認程度という学校が多い中、東京学芸大学附属国際中学校の面接は50点分の評価対象となります。さまざまな質問に対応する準備をしておきましょう。なお、面接での使用言語は日本語です。
学校のホームページをチェック
面接ではこの学校でなにを学びたいのかを伝えるためにも、学校のホームページを隅々まで読み込んでおくことをおすすめします。自分のやりたいことと学校がどうマッチしているのかを説明できるようにしましょう。
海外経験で得た視点を生かしたアピールを
海外でどんな経験をしてきたのか、それによってどんな価値観を育んだのかを伝えられるとよいでしょう。またそれらを将来どう生かしたいと考えているかも説明できるようにしてください。
帰国生の場合の作文対策
帰国生は作文をどう対策するかが重要なポイントです。
外国語作文の評価基準
A方式・編入試の外国語作文では、豊かな発想で、自分の考えや意見を筋道立てて構成できるかどうかがチェックされます。常に自分の周りのものごとや出来事に関心を払って、考えを深めておきましょう。受検言語の文法を盤石にしておくことも大切です。言いたい内容をわかりやすく伝えるための練習をしましょう。そのためには構成力も必要です。
日本語作文の評価基準
A方式・編入試の日本語作文で問われるのは、今までの経験や知識に基づいて、自分の考えを適切に表現する力です。つまり主には言語運用能力が審査されます。
東京学芸大学附属国際中学校では前期週32時間(ホームルーム含む)のうち、英語の時間は6時間です。それ以外は日本語の授業がメインとなります。そのため、授業に対応できるだけの日本語能力を身に着けておく必要があります。
なお、入学後JSLを利用することは可能です。JSLとは「Japanese as a Second Language」(第二言語としての日本語)の略で、学習に参加できる日本語力を養うためのプログラムです。単なる会話だけではなく、抽象的・概念的な一般命題の学習にもついていけるよう学びます。
正確な日本語になるよう繰り返し添削してもらおう
日本語に自信がない子供には、練習が必要です。細かく採点して添削してくれるような家庭教師や塾の先生を探してお願いしましょう。書いたものはその都度、確認してもらってください。できるだけ読みやすく、滑らかな文章を書けるようにしたいものです。細かくチェックしてもらったら、指摘された点を書き直して再度提出しましょう。その繰り返しが文章力を向上させます。
なお、気をつけたいポイントとしては、下記などが挙げられます。
- 基本的な文法があっているか
- 一文が長く冗長になっていないか
- 読点をうまく使えているか
- 主語と述語は噛み合っているか
- 汚い字で書いていないか
- 相手に伝わる説明ができているか
- 常体・敬体が混ざっていないか
- 指示語を多用していないか
これらは帰国生に限らず当てはまり、文章を書き慣れていない子供がやってしまいがちな代表的なパターンといえます。一文一文をコンパクトにすれば、主語と述語が噛み合わない事態はだいたい避けられるので、注意して取り組んでみてください。
「いつどこで誰がなにをどうした」が伝わる?
日本語作文と外国語作文、どちらにおいても重要ですが、読み手に「いつどこで誰がなにをどうした」が伝わるように書きましょう。なにかしらの要素が欠けてないか、見直しつつ書き進めることをおすすめします。
自分のしてきた経験を整理しよう
帰国生の場合、自分の経験から得た視点を作文のテーマに落とし込まなければなりません。まずは作文の練習をする前に、これまでの経験を紙に書き出して整理してみましょう。その国で自分がどんなことをしてきたかを箇条書きにしていきます。その上で、海外と日本の生活の違い、文化の違い、言語の違いなどを比較し、感じたことを羅列してみてください。
海外経験を通して豊かな価値観を身につけられたか
帰国生を受け容れている学校の多くは、当然のことながら多様性を重んじています。そのため、生活や文化や言語の違いを尊重できる人間かどうかは、大切なポイントです。たとえば、海外経験の中で、かえって排外的な価値観を育んでしまった場合、それを作文に落とし込んでもまず評価されないでしょう。学校が掲げる理念と自分の得た価値観に共通するポイントとはなにかを見極めておきましょう。
適性検査対策はどうすればよい?
適性検査では、世界に通じる学力があるかどうか、あるいは教養を習得する素地として「問題を見いだす力」と「問題を解決する力」があるかどうかを検査します。
「問題を見いだす力」では、様々な事象に対して探究心を持っているか、分析的な目線で見ているかが問われます。一方、「問題を解決する力」では、論理性をもって、多面的に解釈できるか、自らの考えを表現できるかが重要です。そのため、問題集だけ解いていればよいわけではありません。
適性検査Ⅰでは、自然環境等について多角的な視点で考える問題、あるいは実世界のさまざまな場面において数理的に考え、対処する問題が出題されます。理科や算数の知識も必要となるため、基本的な事項は頭に入れておきましょう。特に算数は規則性の単元を理解しておくとよいです。
適性検査Ⅱでは、社会問題等の資料から問題点を見つけ、自分の考えを表現しなければなりません。自然環境や社会問題関連の時事について調べておきましょう。付け焼刃の知識で挑むのではなく、日々ニュースをしっかりチェックしておいてください。
- 問題集だけでは検査対策にならない
- 適性検査Ⅰは理科、算数の知識が必要になるので基本的な理解は必要
- 適性検査Ⅱは常日頃から時事ニュースに対して自分の考えを持つ癖付けが必要
学校の理念を理解し、作文もしくは適性検査対策を
東京学芸大学附属国際中学校に入学したいのであれば、国語・算数・社会・理科といった主要四科目ではなく、作文もしくは適性検査で合格を勝ち取らなければなりません。受検するのが帰国生の場合は、海外で学んだことをあらかじめ整理しておきましょう。その上で、帰国生ならではの目線を作文に十分に落とし込めるよう、言語運用能力アップを図ります。
適性検査の場合は、常日頃から環境問題や社会問題に関心を持ち、考えを深めているかどうかがカギとなります。多角的な論理性が大切です。受検生の年齢だと、まだ経験が少なく、多様な視点を持つのはとても難しいです。どうしてもわかりやすく単純でキャッチーな意見に絡めとられてしまいます。
そうならないためには、なるべく多くの専門的な情報に触れる機会を増やすとよいでしょう。塾の先生や家庭教師の先生にも、どういった教材、本、番組、サイトなどを参考にしたらよいかアドバイスをもらってください。