早稲田中学校は大隈重信の教育理念に基づき、坪内逍遥を中心として1985年(明治28年)に創設された中学校です。早稲田大学へはだいたい半数が推薦で進学します。この記事では早稲田中学校を目指す家庭に向けて、国語・算数・理科・社会の勉強法を紹介します。
そもそも早稲田中学校ってどんな学校?
早稲田中学校は、「誠」を基本とする人格の養成および個性の伸長により、国家社会に貢献し得る健康的で民主的な人材を育成することを目指しています。中高六年間の一貫教育を採用していて、生徒たちが志を実現できるよう学力向上を図っている学校です。
早稲田の中学校ですから、早稲田大学へ内部進学する生徒も多くいます。推薦入学制度が発足した1981年度から今日に至るまで、所定の推薦基準を満たした生徒を早稲田大学の各学部へと数多く送り出してきました。
学ぶ意欲のある学生をサポートする体制が整っていて、家庭の事情で学業が困難な生徒に向けて、学内奨学金制度を用意しています。大隈重信記念基金奨学金、大久保健男奨学金、校友会奨学金、早稲田中高奨学金などその種類もさまざまです。
各学年七クラスの編成で、生徒数は中学だけで約九百人となっています。施設としては六万冊の蔵書がある図書館のほかに、柔道場・弓道場・剣道場、プール、バッティングゲージなどスポーツ施設もひと通り揃っています。
早稲田中学校の入試概要
早稲田中学校の入試について見ていきましょう。
2023年度の倍率
2023年度は、第一回の受験者数が723人、合格者数が257人、第二回の受験者数が963人で合格者数は228人です。つまり倍率は、第一回が約2.8倍、第二回が約4.2倍となっています。なお、帰国生入試は第一回が受験者数4人に対し合格者数0人、第二回が受験者数8人に対し合格者数3人の2.6倍でした。
2024年度の入試
2024年度の入試は第一回が男子200名、第二回が男子100名の募集です。入試日程は第一回が2024年2月1日で、結果発表が2024年2月2日、第二回が2024年2月3日で、結果発表が2024年2月4日となっています。出願期間は2023年12月20日午前10時から2024年1月23日午後11時59分です。2024年1月10日10時から受験票の出力ができます。検定料は27,000円で第一回第二回とも出願した場合は54,000円です。なお、2024年度から帰国生入試の募集を停止します。
第一回 | 第二回 | |
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募集人数 | 200名 | 100名 |
入試日程 | 2024年2月1日 | 2024年2月3日 |
結果発表 | 2024年2月2日 | 2024年2月4日 |
出願期間 | 2023年12月20日午前10時〜2024年1月23日午後11時59分 | |
受験票の出力開始日時 | 2024年1月10日10時 | |
検定料 | 27,000円 | 27,000円 |
早稲田中学校における国語・算数・理科・社会の出題傾向
早稲田中学校における出題傾向を紹介します。
国語は物語文と論説文がひとつずつ
国語は配点が60点で時間は50分です。大問はふたつで、物語文と論説文がひとつずつ出題されます。物語文自体は読みやすい文章が出ることが多いですが、文章量は多めです。選択問題の選択肢は、文章を細部まで読み込めている必要があります。それに対して論説文は文章自体が難しい場合が多いです。基本的に文章には注釈がつかないので、語彙力がない子供にとっては難しいタイプの問題だといえます。
算数の出来が合格を左右する
算数の配点は60点で時間は50分です。大問は五つほどで構成されます。算数は合格者平均点が平均点より十点ほど開くことも少なくなく、2023年度の第二回では受験者平均点が18.8点、合格者平均点が29.6点でした。2022年度は第一回・第二回ともに受験者平均点と合格者平均点で、だいたい十点ほどの差がついています。四科目の中で一番、出来不出来の差が顕著です。
大問一は小問集合で、大問二から単元ごとの出題となります。頻出単元は図形で、平面図形も立体図形も出題され、図形だけで全体の半分以上を占めます。立体図形では立体の切断など難しい問題が多いです。ほかには速さや割合といった単元も出ます。
理科は全分野からの出題
理科の配点は40点で時間は30分です。大問は四つほど出ます。計算問題と選択問題が多めで、それ以外にも回路を書き入れる問題などが出ます。四つの大問はそれぞれ、化学・物理・地学・生物の全分野からの出題です。頻出単元は力のつり合いで、水溶液の計算問題も比較的多めです。各分野における実験・観察からの出題も定番といえるでしょう。
社会の公民は比較的易しめ
社会の配点は40点で時間は30分です。大問は三つで各分野からの出題となります。それなりに文章量は多めです。選択問題、用語を答える問題などがメインとなっています。全体的に図版や資料を用いた問題が出題される傾向にあります。
地理は各地域の特徴をよく押さえておきましょう。歴史は文化・外交・人名などを覚えます。公民分野の難易度はわりと易しめです。基本事項をいかに理解しているかがカギとなります。なお、公民分野では時事問題もあわせて出題されます。
- 算数によって合否が分かれることが多い
- とにもかくにも、まずは算数の対策に力を入れた方がよい
早稲田中学校に合格したい。どんな勉強が効果的?
早稲田中学校に合格するためにはどういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
物語文の選択肢で苦戦しないために
物語文は読みやすく、既存の価値観に一石を投じるような面白い文章を扱うことが多いです。ただし、選択問題では意外と苦戦する子供も出るでしょう。特に人物描写については文章中にちりばめられた情報を細かく読み取らないと、複雑な選択肢で間違えてしまいかねません。
あまり文章を読むのが得意ではない子供は、人物ごとに色分けして線引きをする練習をしましょう。たとえば登場人物Aを赤、Bを青と決め、その人物の描写の部分を色分けしていきます。最後に線を引いた部分だけ拾い読みして人物像をまとめてみるのです。そうすると、情報が整理されて理解が促されます。
比喩の意味を考えよう
物語文に慣れていない子供は、人物像や感情に関する比喩が出てきたときに理解が追いつかない場合があります。文中の比喩には線を引き、いったいなにを伝えたいのかひとつずつ考えてみるとよいでしょう。
自分の考えを発表した上で、塾の先生や家庭教師の先生に解説してもらいましょう。
選択肢で引っ掛からないために
もっともらしい選択肢が多いため、つい騙されてしまうのが早稲田中学の国語です。早合点しやすい子供は、選択肢の中にある正解の要素にだけ注目してしまいます。しかし、選択肢の中には、正解と間違いの両方の部分が落とし込まれているものもあるのです。必ずすべての選択肢に目を通す癖をつけ、重要な言葉には線を引く癖をつけましょう。
説明文では文脈で判断を
早稲田中学校の説明文において、文中で出てくる難しい言葉の意味を説明してくれることはほぼありません。そのため、文脈から語意を読み取って判断する力が求められます。前後を見て、その言葉がなにを指しているのか推察できるようにしましょう。
- 日頃から問題文に線を引きながら読み進める習慣を付ける
- 選択問題には引っ掛けが多いため早合点しないような読み進め方を習慣付ける
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
小問集合では特殊算も必要に
小問集合は特殊算を必要とする問題がよく出ます。受験に必要な特殊算はさまざまですが、ひと通り理解し使いこなせるようにしておきましょう。
図形の問題をどう解くか
算数では、平面図形および立体図形の問題がたっぷり出て、全体の半分以上を占めるほどです。つまり、図形が苦手なままでは、合格点をとることができません。まずは基本レベルから着実に解けるようにしたいところです。
図形の問題は数が多い分、難易度にも幅があるので、過去問を解いてどの難易度まで解けるようにするかを検討する必要があります。年度ごとに問題の難易度の上下が激しいですが、いずれの難易度であっても、受験者平均点より十点以上高い点数を目指しましょう。
そのためには、過去問のレベルと合格平均点を照らし合わせ、どの難易度まで解ければ合格平均点に辿り着けるかを考えなければなりません。解かなくてよい問題は、即座に捨て問に回せるようにしましょう。
平面図形と立体図形が苦手な子供は
平面図形と立体図形のどちらも苦手な子供は少なくありません。苦手な場合は図形の基本問題まではすべて確実に解けるようにしておきましょう。基本以外ではとりこぼしがある状態で入試に臨んで、合格点がとれるかは厳しいところですが、どのみち一足跳びに解けるようにはなりません。頑張れば解ける問題を確実に解けるようになるしかないのです。図形が苦手な子供は基本を固めて、他の科目で点数を補ってください。なお、年度によって正答率にはかなりムラがありますが、受験者の平均としては、半分程度しか得点できていない年度が多いです。
- とにかく図形の出題量が多いため図形が苦手なままだと合格は難しい
- 過去問を通して解けるレベルの難易度の把握と捨て問を見分ける力を付ける必要がある
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
頻出単元はやり込んでおこう
理科の出題は全分野からですが、頻出単元として力のつり合いや水溶液が挙げられます。滑車やてこ、中和や熱についてやり込んでおいてください。
計算問題を確実に
計算を必要とする問題がよく出ます。計算問題は難易度が高い年も多いですが、2023年度はそれほどではありませんでした。過去には光と音、溶解度や地震などの分野で計算問題が出ています。改めて解けるようにしておきましょう。
中には解き方は理解しているのに計算ミスが多い子供もいるはずです。「本番で解ければよい」と甘く見ずに、なぜ計算ミスをしてしまうのかを分析し、その原因を潰しておきましょう。意外と身についてしまっている習慣の中に、原因はあるものです。
平均より五点以上、上を目指そう
理科は国語や算数に比べると、比較的点数がとりやすいです。合格するためには平均よりも五点は多く得点したい科目です。できるだけ見直しをしてケアレスミスを防ぎましょう。
用語は確実に漢字で書けるよう
漢字で覚えなければならない用語は必ず漢字で書かなければなりません。受験が近づくと、わざわざ書き出して覚えている時間はなくなってきますが、覚えの怪しい漢字があれば積極的に書き出すようにしてください。
- 計算力は身につけておく必要がある
- 「力のつり合い」「水溶液」は頻出単元なためやりこんでおく必要がある
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
世界地理に注意
中学受験に臨む子供は「地理」と聞くと、中学受験のテキストでメインとして扱っている日本の地理を想像しがちです。しかし、早稲田中学校では世界地理の問題を出すこともあるので、準備をしておかなければなりません。世界地理を解けるようにするのは、学ばなければならない範囲が広く大変なことです。まずは、過去問をやり込んで出題傾向をおさえましょう。
グラフのデータから考えられるように
地理ではよくグラフを使った問題が出題されています。地域ごとの情報をグラフで整理している単元はいくつもあるため、すべて覚えるのは大変です。しかし、どの地域にどういう特徴があるのか、グラフを見ながら理解しておくようにしましょう。
図版の問題にも対応できるよう
社会は常日頃から資料をしっかり読み込んで、図版の問題が出ても、そこから情報を読み取れるように仕上げることが大切です。
時事問題対策をしよう
早稲田中学校は地理・歴史・公民と満遍なく出題されます。特に公民分野では時事も絡んできます。時事の勉強を疎かにしないようにしましょう。できるなら常日頃から社会問題や政治に関心をもっておきたいところです。早稲田中学校の問題は、自分たちがこれまでの歴史でなにを踏んできたのかを改めて考えさせる問題が多く出ます。たとえば、2023年度には沖縄の問題が出題されています。同じく2023年度には、アイヌについての知識を問う問題もありました。
- 世界地理が出題されることもあるため過去問を通して出題の傾向をおさえておく
- 常日頃から社会問題や政治に関心をもち、時事問題に対応できる状態にしておく
点差のつきやすい算数を中心に対策しよう
早稲田中学校の平均点を見ると年度によってかなり上下するので、その年の問題が解きやすいかどうかは半ば運のようなところもあります。しかし、算数の受験者平均と合格者平均に開きが生じやすいのは事実なので、まずは算数の対策に力を入れましょう。できるだけ立体図形や平面図形の問題をやり込んでおくとよいです。
国語は物語文・説明文、それぞれの対策が必要です。物語文では登場人物の心情を追えるようにし、説明文では難しい文章であっても文意をとれるようにします。理科は頻出単元があるので集中的に対策しておきましょう。計算問題はどの分野からも出やすいので、解けるように仕上げておく必要があります。社会は過去問をやり込んで、ある程度世界地理の問題を解けるようにしておいてください。時事問題も学びましょう。歴史や時事を通して自らの立つ場所を問い直すような問題が出る傾向にありますから、そうした目線を大切にしましょう。