夏休みを過ぎると、中学受験本番に向けてアクセルを踏む子供が出てくる一方、ブレーキを踏む子供も一定数出てきます。受験疲れと焦りから「もう無理」と気持ちがくじけてしまうのです。特に多いのが、夏休み明けの模試の結果を受けて、「あんなに頑張ったのに模試の成績が上がらなかった!」とガクリとくるケースです。この記事では、子供が受験に焦りを感じたり行き詰ったりしたときの対処法について紹介します。
努力しても夏休み明けに結果が出ないケースは多い
夏休みは受験の合否に影響する、大事な時期です。しかし、頑張ったにもかかわらず成績が大幅にダウンしてしまうケースも少なくありません。
夏休み明けの模試で成績がガタ落ち!
夏休み明けに模試を受けてみて、その結果にギョッとした家庭も多いのではないでしょうか。夏休みになると、どの家庭も勉強に本腰を入れます。皆が本気になっている中で、突出した成績を残すのは容易ではありません。
そのため、この時期の模試は、「せっかく頑張ったのに成績がガタ落ち」という事態に陥りやすいです。経験豊かな塾講師や家庭教師であれば、あらかじめ家庭にその旨を説明します。先手を打って、「夏休み明けの模試の結果は、真に受けなくてよい。ここからが勝負だよ」と伝えるのです。
実際、これは口先だけの慰めではありません。夏休み明けから受験本番までの期間、まだまだ成績は変動します。そのことを知らず悪い結果だけを見てしまうと、「自分はこの程度なのか」と失望して、受験に挑む気概を失ってしまいがちです。
夏休み明けに成績が伸び悩んでしまったときには、いかに素早く気持ちを切り替えて努力を続けられるかがポイントとなります。
夏休みや夏休み明けの過去問の出来は気にしない
夏休みや夏休み明けのタイミングで、過去問に挑戦し始める子供は多いです。夏休み中、懸命に勉強してきた自負があるため、だいたいの子供は「もしかしたら合格ラインに届くかも」と淡い期待を寄せています。
しかし残念ながら、その時点では多くの子供は合格ラインにはほど遠い結果しか出せません。毎年、受験直前まで合格ラインに届かない子供が多くいるものなのです。夏休みの勉強は受験合格に欠かせませんが、合格に至るためには、夏休み明けからの取り組みの質こそが重要です。
子供の低い点数を目の当たりにすると、親としてはつい「こんなんじゃダメ」「もっと頑張って!」と喝を入れたくなります。しかしそこはグッとこらえて、今はあくまで途中経過だと割り切ることをおすすめします。
夏休み明けにパニックに陥らないために夏休みの復習はしっかりと
夏休み明けに、「間に合わない!」とパニックに陥らないためにも、夏休みのカリキュラムの復習は着実にこなしましょう。
間違い直しはその日のうちに
受験生が夏休み中にこなさなければならない勉強量は膨大です。塾に通っていれば朝から夕方まで夏期講習漬け、家庭教師の場合も通常授業とは別に夏期講習を受ける家庭が多いことでしょう。宿題の量もたっぷりです。
そのため授業だけで疲れてしまい、表面的に宿題を片付けてろくにやりこまない子供がどうしても出てきます。少しでも目先の負担を軽減したいというわけです。しかし夏期講習への取り組み姿勢が最低限のものだと、実力も最低限しかアップしません。その上、夏期講習が終わったあとに手を抜いた分のしわよせに苦しむはめになります。
着実に復習するためには、その日のうちに間違えた問題をやり直しましょう。理解できた問題は類題を洗い出して自力で解けるか挑戦してみてください。
わからない問題のとりこぼしを防ごう。付箋貼りのサポートを
授業で理解できなかった問題とどう向き合うかによって、成績は大きく変わります。そのため、「やり直しても理解できなかった問題」をその都度取りまとめていくことが大切です。
几帳面な性格の子供であれば、「理解できなかった問題」と「理解できた問題」を分けて、きっちり管理できます。しかし、たいていの子供はそうした作業が苦手です。問題集に付箋をつけてはみたものの、貼り方がいい加減なせいでカバンの中で剥がれ落ち「どこがわからないかがわからない」と嘆く子供はたくさんいます。
そのため、わからない問題の取りまとめは大人がやったほうが無難です。ただし、大人は大人で忙しいもの。「そんな細かなところまで手が回らないよ!」という家庭も多いでしょう。その場合は、家庭教師や個別指導を利用するとよいです。先生の方針にもよりますが、快く引き受けてくれるケースが大半でしょう。
夏休み明け、急に頑張れなくなる子供に注意
夏休み頑張り続けた影響で、ぽきんと気持ちが折れてしまう子供もいます。親はどのように子供をサポートしてあげればよいのでしょうか。
「もう勉強したくない」と言い出されたら
夏休み中に根を詰めすぎて、中には「もうこれ以上、勉強したくない」と言い出す子供もいます。疲れたとき、上手に休憩できる子供ならばよいのですが、まじめな子供ほど切り替えが上手くできません。親としても、「こんなに勉強漬けで大丈夫かな」と心配しつつも、休ませるべきなのか勉強させるべきなのか判断がつかず二の足を踏むケースが多いのではないでしょうか。
子供が疲れていると感じたら、息抜きする機会をとってあげるとよいです。ただし息抜きのしわよせで宿題や勉強に追われて、逆に負担を抱え込んでしまう子供もいるため、そこは塾や家庭教師に相談しアドバイスをもらいましょう。
「受験勉強のペースについていけない」と相談されたら
夏休みを境に本番に向けての追い込みについていけなくなる子供は、必ず出てきます。ろくに問題を理解できないまま、受験勉強を続けなければならない状況は楽しいものではありませんし、なにより効率的ではありません。「勉強してもわからない。ついていけない」と子供が訴えてきたのなら、できるだけ速やかに解決を図りましょう。
集団授業塾に通っている場合は、特に親・講師間での話し合いが必須です。具体的な対応としては「ついていける難易度に変更する」、つまり、「コース変更」がよいでしょう。ただ、この方法では子供のプライドが傷つく可能性がありますし、希望したからといって変更できる塾ばかりでもありません。その場合は家庭教師サービスを利用し、塾の補習授業をお願いしましょう。
家庭教師は一対一のスタイルですから、子供の能力にいかに最適化した指導を行うか、先生一人ひとりが模索しながら授業を進めています。受験までどのように勉強を進めていくのか、子供のモチベーションを維持するためにはどうするべきなのかを共有しましょう。それでも不安がある場合は、家庭教師派遣センターにもフォローをお願いするとよいです。
「受験自体をやめたい」と告げられたら
受験自体をスッパリとやめたがる子供もいます。多くは、夏休みが終わって結果が出ないことに希望を失った子供です。もしくは、夏休みに勉強に励み過ぎたあまり、燃え尽きてしまうパターンもあります。
こうした子供にはだいたいサインがあります。多くは「勉強したくない」とほのめかすようになったり、宿題のやり方が少しずついい加減になったり、といったものです。これはまずそうだと思ったら、速やかに塾や家庭教師に相談しましょう。
家庭だけで子供の気持ちを変えようとするのは難しいことです。受験において、子供の多くが親の存在を頼りにしているのは間違いありません。けれど、その一方で学年が上がるほど、親のアドバイスを疎んじる傾向が顕著になるのも事実です。
そのため、親が率先して「もっと頑張らないとまずいよ」「受験がんばろうよ」と喝を入れると逆効果になりかねません。「このままではまずい」という状況は子供自身わかっていて、けれど気持ちがついていかないのです。
そういうときは、あえて厳しいことは言わず「最近、元気ないね。大丈夫?」と子供を気遣う姿勢だけしっかりと打ち出しましょう。あとは信頼できる先生にサポートを求めてください。塾や家庭教師と連携し、子供の性格や成績に合わせて対応するとよいでしょう。
夏休み明けに優先して取り組むべき受験対策は?
夏休み明けに優先して取り組むべき受験対策を具体的に提示できれば、子供も「受験は無理!」と思わずに済みます。では、どんな受験対策が必要なのでしょうか。
過去問に取り組んで出題傾向を把握しよう
新しい年度の問題から過去問に取り組みましょう。古い年度から取り組んで新しい年度の問題を残しておきたがる子供もいますが、それでは直近の出題傾向を把握するのが遅くなります。
過去問をやる際には受験本番の時間配分で挑むことが大切です。時間どおりに解き、解けなかった問題は採点後に、塾講師や家庭教師の指導を受けて解きます。
困ったことですが、自身の点数を把握した途端、過去問を放り出す子供は多いです。点数が良くても悪くても、結果が出たことに安易に満足してしまいます。合格点がとれるかどうかのゲームになってしまっているのです。
たしかに、過去問がどの程度解けるのかを知ることもまた大切でしょう。しかし、それ以上に大切なのは、出題傾向を知ることと間違えた問題の解法を理解することです。
過去問のやり込みを子供が面倒くさがる理由のひとつに、解説を読んでも解けないレベルの問題が混在している点が挙げられます。いわゆる捨て問ですが、どれが捨て問なのかが子供には見極められません。ぜひ一度、塾講師や家庭教師に問題を解く優先順位を指導してもらってください。優先順位決めのノウハウは、親も知っておくと家庭での学習サポートに役立ちます。
ちなみに、過去問のやりこみを渋る理由として、「どうせ受験本番に同じ問題は出ないからいいんだ!」と主張する子供もよくいます。たしかに同じ問題は出ません。しかし、類題なら出る可能性はあります。
解けなかった問題と似た傾向の問題に出会ったときに後悔しないため、しっかりと過去問をやりこませてください。過去問は一度きりではなく、何周も解き、高得点をとれるレベルまで仕上げるようにしましょう。
志望校の頻出単元を分析。苦手部分を克服しよう
苦手単元全てを克服することが理想ですが、時間は限られています。優先順位として、志望順位の高い学校の頻出単元からこなしていきましょう。頻出単元は過去問をやることである程度把握できます。塾や家庭教師の先生は今年度なにが出るか、予想しているはずなので、アドバイスしてもらってください。もちろん、そうしたヤマは外れる可能性も高いです。しかし、残された時間を有効に使うためには、プロの経験則を頼ったほうがよいでしょう。
よく手当たり次第、わからないところを勉強し始める子供がいますが、夏休み明けからそれをすると肝心なところが終わらないまま本番をむかえる恐れがあります。なにより、わからない問題ばかりを手探りで解くのはストレスが溜まるものです。先の見えない不安感も手伝い、受験に対してモチベーションを保てなくなってくる危険性があります。
受験本番が迫ってくれば、子供も親も不安でいっぱいでしょう。しかし、その不安は家庭だけで抱える必要はありません。塾や家庭教師に手伝ってもらうようにしましょう。
子供が安心できる環境づくりと先生との連携を
「受験勉強なんてしたくないよ!」「もうやだ。受験やめたい!」と子供に言われたら、「これまでの努力はどうなるの?」と親も目の前が真っ暗になることでしょう。裏切られた気持ちになり、ついカッと頭に血がのぼってしまうかもしれません。
しかし、受験合格を目指す家庭において一番大切なことは、子供の安心できる居場所を用意することです。中学受験は親にも相当な負担がかかっています。それでも、誰よりも消耗しているのはやはり当事者である子供です。家庭が「気持ちを受け止めてくれない場所」になってしまうと、子供はストレスに耐えられません。
子供にネガティブな言葉で訴えかけられたら、たしなめる前に一度言われた内容をまるまる反復してみるとよいです。「そうか、あなたは受験勉強をしたくないんだね」「あなたはいま、受験をやめたいんだね」と、ぶつけられた気持ちを受け止める姿勢を見せてください。その場では、すぐに結論を出さず「わかった。ちょっと考えてみるね」と伝えます。その上で、記事で紹介したように塾や家庭教師と連携して、具体的な対策に乗り出しましょう。