中学受験はよく「親の受験」と言われます。親にかかる負荷が大きすぎるためです。そのため、共働き家庭は「はたしてわが家に中学受験が可能だろうか」と二の足を踏んでしまいがち。
この記事では共働き家庭の中学受験はどのようにすれば成功するかについて紹介します。
共働き家庭の中学受験におけるメリット・デメリットとは
共働き家庭の中学受験におけるメリットは、なんといっても収入面の安定性です。私立中学受験をすると、塾通いと、受験料、合格後の学費だけで莫大なお金がかかります。国立中学の場合でも塾代は私立中学と同様、覚悟しなければなりません。交通費だって地元の学校に通うのとは雲泥の差です。
その点、共働きならば、仮に片方が病気になるといった予期せぬトラブルに陥っても、収入が途絶えないため心強いです。
一方、デメリットは多忙なことでしょう。子供のサポートに時間を割きたくても、帰宅してから就寝まで通常の家事・育児タスクをこなすだけでジェットコースター状態という家庭が多いのではないでしょうか。
【共働きのメリット・デメリット】
メリット | デメリット |
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予期せぬトラブルでも収入が途絶えない | 多忙すぎて家事育児で手一杯 |
共働き家庭が中学受験に挑む上での心得とは
共働き家庭では「両親が力を合わせて子供をサポートする」という意識作りが必要です。もちろん、帰宅時間の差や休みの曜日などで、子供にかかわる量に夫婦間で偏りが出てしまうことはあり得るでしょう。
しかし、だからといって、子供のサポートを片方に任せきりにすることはおすすめしません。ただでさえ受験を控えてストレスがたまりがちな家庭内。子供を直接サポートする時間がとれない場合は、パートナーの負担を軽減するような働きかけをしてみてください。子供は両親の振る舞いをしっかり見ているものですから、夫婦間のみならず親子間の信頼関係構築にもつながります。
以前は中学受験といえば、母親がサポートに当たるイメージが強いものでした。近年では父親が子供の解いた問題の丸付けをしたり、お弁当を作ったり、送迎をしたりするケースもかなり増えてきています。その家庭に合ったベストなサポート体制を模索するのがよいでしょう。
共働き家庭は、中学受験専門塾・家庭教師のどちらを選ぶべき?
共働き家庭は中学受験専門塾と家庭教師のどちらが向いているのか、以下見ていきましょう。
塾の場合、共働き向きの方針を掲げるところを厳選して
子供の塾選びをする上で知っておきたいのは、家庭でのサポートが大前提となる塾が一定数あるということです。たとえば、圧倒的に難関校受験に強いことで存在感を放っているSAPIX。中学受験業界を牽引する、実績ある塾である事実は疑いようもありませんが、大量のプリント整理と宿題の山に追われることでも有名です。家庭でのサポート体制が整わなければ、授業についていくのは難しくなります。そのため、共働き家庭でSAPIXに通わせるには準備と覚悟が必要です。
一方、共働き家庭でも通わせやすい塾もあります。日能研・早稲田アカデミー・四谷大塚あたりはSAPIXほどには、親のフォローは必要ありません。塾には家庭の事情を伝え、家庭でどういうフォローが最低限必要なのかを聞き出してみてください。
「中学受験をしたいけれど、ほとんど手が回らない」という家庭では、中規模の塾や個人塾で信頼できるところを探したほうがよいでしょう。家庭に寄り添い「任せてください」と言ってくれる面倒見のよい塾はあります。地元の中学受験塾であれば、送迎の点でもハードルが下がり負担が減ることでしょう。
入塾説明会では細かなところまで質問して、悔いのない選択をしたいものです。丸付けの担当は塾なのか家庭なのか、食事を塾でとる場合はどんな風になっているのか、他の共働き家庭はどんな風に受験に臨んでいるのかなどを聞いてみてください。塾が家庭に求めている作業がどの程度なのかをあらかじめ把握しておくことをおすすめします。
SAPIX | 共働きだと大変 |
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日能研・早稲田アカデミー・四谷大塚 | 共働き家庭でも通わせやすい |
家庭教師の場合、負担を肩代わりしてもらえるのがメリット
家庭教師のよい点は、家庭の事情に合わせた臨機応変な対応をお願いしやすいところです。塾のように長年ブラッシュアップしてきたカリキュラムがないのは不安かもしれませんが、その辺りは家庭教師を選ぶ際に、条件を絞り込めば問題ありません。中学受験対策のベテランで実績ある家庭教師にお願いすれば、望む結果が得られやすいです。
ただし、中学受験では、塾にせよ家庭教師にせよ、多くは高学年になるにつれ授業回数を増やす必要性が出てきます。また、家庭教師という性質上、塾の集団授業に比べてもともとの予算も高くつきがちです。予算的に家庭教師だけにお願いするのは無理な場合、塾と併用するやり方を検討してみてください。
塾と家庭教師を併用するなら役割を限定する
塾と併用する場合は、家庭学習や補習対応のみを家庭教師に任せるとよいでしょう。予算が許すなら、「集団授業で勉強」「同塾の個別指導コースで苦手科目や単元の補習」「家庭教師でわからないところの取りまとめや再復習」といったように教育サービスを目的別に使い分けると無駄がありません。
共働き家庭に求められる勉強面でのサポートを家庭教師にまるっとお願いしてしまうのです。それだけで親の「仕事も家事も育児も中学受験も」という切羽詰まった状況はかなり軽減されます。
勉強のフォローと家事や育児が両立できない場合は
中学受験をする子供を持つ共働き家庭では、以下のような効率化が必要です。
スケジュールを固定し、生活のリズムを確立しよう
共働きの場合、朝は子供を送り出し、自分が出勤するだけで手いっぱいです。そうなると、夜、子供が塾から帰ってきてからの時間が勝負になります。
家事が立て込む時間でもあるので、夫婦がそろっているなら家事担当と受験対策担当で手分けをして当たりたいところです。どうしても夫婦がそろわないのであれば、中学受験対策に割く時間を固定で決めておいてください。
決められた時間がきたらなにを置いてもプリント整理や宿題チェック、勉強の進捗チェックをやるようにしないと、あっという間に就寝時間になってしまいます。子供が自分でできること、塾に頼めること、親がすべきことを明確に線引きしておくことが大切です。
家事の時間をできるだけ短縮してみよう
子供の中学受験対策の面倒を見るため、親の睡眠時間を削っている家庭もあることでしょう。しかし、やはりこれは健康上あまりおすすめできません。
睡眠時間を削るぐらいなら家事の時間を削りましょう。中学受験を控えている家庭は、できるだけ手抜きをしたほうがよいです。
アウトソーシングできるものはアウトソーシングして、家電も見直しましょう。「時短家電の三種の神器」として、「ロボット掃除機」「食洗機」「乾燥機付き洗濯機」がよく挙げられています。
ロボット掃除機はモノが多い家だと「ちゃんと掃除できないのでは」と購入を躊躇いがちですが、掃除を開始する前に床の上のモノだけあらかじめ移動させておけば大丈夫です。少し手間かもしれませんが、掃除中に別の家事を片付けられるため、時短につながります。
食洗機も洗って乾燥まで済ませてくれるため便利です。そのまま食器棚として機能する点でも重宝します。乾燥機付き洗濯機は天気の悪い日に利用するのはもちろんですが、共働き夫婦は毎日利用しているケースも少なくありません。朝、干す時間を省略できます。
料理においてはホットクックを導入するのもよいでしょう。材料を切っておけば調理をお任せできてしまう便利な機械です。あらかじめ決められたメニューに必要な材料を配達してくれる宅配食のサービスを活用するのもよいでしょう。弁当の配達などすでにできあがったものを届けてくれるサービスもあります。
真面目な人ほど「ちゃんと家事ができていない」と負い目を感じるかもしれません。しかし、時間は有限ですから、単純に優先順位の問題だと割り切って大丈夫です。できるだけストレスを軽減できる環境作りをおすすめします。
- ロボット掃除機
- 食洗機
- 乾燥機付き洗濯機
- ホットクック
塾弁はできるだけ手抜きをしよう
塾弁で最も簡単なのは、弁当配達業者と提携している塾を選ぶことです。必要な日に合わせて注文しておけば作り立てのお弁当が届きます。こうしたシステムを採用している塾は最近増えてきていますから、探してみてください。
しかし、弁当事情だけで塾を選ぶわけにもいかないですから、どうしても食事を自分で用意しなければならないケースもあるでしょう。その場合、できるだけ簡単に済ませられる工夫をしましょう。冷凍食品もためらわずに活用してください。手作りのおかずがいっぱいのお弁当は少数派なのが現状です。いろどりもよくおいしい冷凍食品はたくさんあります。一度レンジで温めなければならないタイプではなく、自然解凍で入れられるタイプを選ぶと楽でしょう。
いっそ作らずお金だけ渡して子供にコンビニで買ってきてもらうのも手です。ただし、食事を購入するためには、子供が塾の外に出なくてはなりません。中には安全性の観点や、なかなか戻ってこない子どもへの対策から、買い物を塾が認めていない場合もあります。一度、塾側へ確認してみてください。
忙しくてもここだけは押さえておきたい中学受験のポイント
どんなに忙しくても、わが子の精神状態だけは気にかけてあげたいものです。中学受験で思い詰めてメンタルに不調をきたす子供は少なからずいます。家庭だけで対応しようとせず、塾や家庭教師にフィードバックしてください。中学受験は、周囲が協力して子供を支えなければなかなか乗り切れるものではありません。
また、志望校と併願校を選ぶ際は塾と時間をかけて話し合いましょう。第一志望に入学できるのは三人に一人と言われるのが中学受験です。第一志望に入れない可能性のほうが高いわけですから、併願校選びは重要です。
受験校すべて落ちる「全落ち」を経験すると、子供は挫折感を覚えます。できるだけそれは避けて成功体験を積ませてあげたいものです。
親だけで負担を背負い込まないことが成功の秘訣
共働き家庭で中学受験を成功させるためには、家庭で引き受けるタスクを最小化できる環境を整えることが大切です。そのためには塾や家庭教師を選ぶ際に一切妥協しない姿勢が求められます。細部に至るまで質問をぶつけて、こちらのニーズを正確に伝えることで、途中でやめずに済む教育サービスを選び抜きましょう。
共働き家庭は時間がない分、ダブルインカムの安定性という強みがあります。塾と家庭教師を組み合わせ、家庭に求められがちな負担をアウトソーシングすると上手くいきやすいです。あとは夫婦の協力や先生との連携、家事の効率化で乗り切ってしまいましょう。仕事と家事と育児に加えて中学受験対策までするとなると、忙しさで精神的に参ってしまいがちです。家庭の空気が悪くなると、子供は安心して勉強できません。親だけで抱え込まないようにしましょう。