分数を小数に直したり、小数を分数に直したりする計算は、整数の計算とは違って、親としても教えづらさを感じることが多いのではないでしょうか。この記事では、つまずきやすいこれらの計算の考え方について紹介していきます。
分数・小数の関係を理解しておこう
まずは分数・小数の関係を理解しましょう。
知育玩具で苦手意識を克服
最初に確認しておきたいのが、「そもそもちゃんと分数・小数の関係を理解できているのか」です。分数・小数の関係をよく理解しないまま、分数を小数に直す計算、あるいは小数を分数に直す計算に臨んでも、子供はやり方を丸暗記するだけで終わってしまいます。
分数・小数の関係を学べる知育玩具としてはラーニングリソーシズの算数教材「分数小数%が学べる」タワーキューブが挙げられます。小数から分数、分数から小数の計算を学ぶ上でも有用ですし、遊びながら感覚を養うことができます。
分数の基礎から怪しい場合は、公文出版「はじめての分数パズル」を導入に据えるのがおすすめです。パズルだけではなく表や問題集、分数カードもついています。なお、小数・歩合・百分率に直すとどうなるかについても、分数カードに記載されています。
分数と小数をひとまとめにした問題集を
分数と小数をひとまとめにした問題集はたくさん出版されています。だいたいが「分数・小数」あるいは「小数・分数」とわかりやすいタイトルですので、書店で使いやすい問題集を探してみるとよいでしょう。
分数の仕組み。押さえておきたい基本ポイント
分数を小数に直すためには、分数の仕組みを知っておく必要があります。
分母と分子
分数は分母と分子によって構成されます。たとえば、$\frac{1}{2}$ という分数において、分母は 2、分子は 1です。下の数字を分母、上の数字を分子といいます。
分数は、「ひとつのものを分けたうちのいくつか」を指すものです。
たとえば、ピザが 1 枚あったとしましょう。このピザを 5 人で分け合います。すると大きな 1 枚のピザは、小さな 5 切れのピザに変わるわけです。1 枚を 5 つに切り分けたうちの 1 切れを $\frac{1}{5}$ と表します。
1 枚を 5 つに切り分けたうちの 2 切れだったどうなるでしょう。$\frac{2}{5}$ ですね。
では、ピザを 3 つに切り分けていたうちの 2 切れはどう表記するでしょう。こちらは $\frac{2}{3}$ です。
真分数と帯分数と仮分数
真分数と帯分数と仮分数についても見ていきましょう。
真分数
真分数とは、分母の数が大きく分子の数が小さい分数です。
仮分数
仮分数は、分母の数が小さく分子の数が大きい分数です。
帯分数
帯分数は整数と分数がセットになっている分数です。
帯分数は仮分数に直せる
帯分数は仮分数に直すことができます。
なぜこうなるかといえば、1 とは $\frac{2}{2}$ のことだからです。$\frac{2}{2}$ と $\frac{1}{2}$ で合わせて $\frac{3}{2}$ です。
2 は 1 がふたつ、つまり $\frac{3}{3}$ がふたつです。よって、2 = $\frac{6}{3}$ となり、$\frac{6}{3}$ と $\frac{2}{3}$ を合わせて $\frac{8}{3}$ です。
仮分数は帯分数に直せる
仮分数を帯分数に直すこともできます。
$\frac{8}{5}$ は $\frac{5}{5}$ と $\frac{3}{5}$ に分けることができます。
$\frac{5}{5}$ はつまり 1 ですから 1$\frac{3}{5}$ です。
分数の分母と分子は同じ数でかけたり割ったりできる
分数の分母と分子は同じ数でかけたり割ったりすることが可能です。たとえば、$\frac{1}{2}$ の分母と分子にそれぞれ2をかけると、分数は $\frac{2}{4}$ になります。
「$\frac{1}{2}$ と $\frac{2}{4}$ は同じ値」と言われてピンとこない人はケーキで想像しましょう。ホールケーキを半分に切ったのが $\frac{1}{2}$ で、四等分したうちの二切れが $\frac{2}{4}$ です。
量としては同じですね。
同じ数字で割る場合も見てみましょう。
$\frac{3}{6}$ という分数で、分子と分母をそれぞれ 3 で割ると $\frac{1}{2}$ になります。
そのため、$\frac{3}{6}$ と $\frac{1}{2}$ は同じ値と言えるわけです。
分数は、分母と分子がそれぞれ同じ数字で割れる場合には割ります。これを約分といい、たとえば $\frac{2}{10}$ であれば、分母が 10、分子が 2 ですからそれぞれを 2 で割って $\frac{1}{5}$ です。
小数の仕組み。押さえておきたい基本ポイント
小数の基本を見ていきましょう。
1に満たない数
小数は 1 に満たない数を表すときに使います。
たとえば、0.1 というと、1 を 10 こに分けたうちのひとつです。0.01 は 1 を 100 こに分けたうちのひとつ、0.001 は 1 を 1000 こに分けたうちのひとつです。
0.5 は 1 を 10 こに分けたうちの 5 つとなります。
先ほど小数は 1 に満たない数を表すときに使うと説明しましたが、5.1 のように 1 に満たない数を含む 1 より大きな数を表す際にも使います。
小数部分の位について知ろう
たとえば、2.356 という小数があったとします。この小数のうち整数部分は 2 で、小数部分は 0.356 です。小数点のすぐ後ろの位を小数点第一位、その次を小数点第二位、さらにその次を小数点第三位といいます。
小数の問題ではよく「小数第一位を四捨五入してください」といった指示が出されます。2.356 の小数第一位を四捨五入すると、2 です。小数第二位を四捨五入する場合は 2.4、小数第三位を四捨五入する場合は 2.36 となります。
分数は小数に、小数は分数に直すことが可能
ここまでの基本を押さえた上で、いよいよ小数と分数の変換について見ていきましょう。
分数・小数を変換する際に知っておきたいこと
小数の 0.1 は分数の $\frac{1}{10}$ と同じです。どちらも 1 を 10 こに分けたうちのひとつです。0.2 であれば、1 を 10 こに分けたうちの 2 つですから分数では $\frac{2}{10}$、約分して $\frac{1}{5}$ です。
分数から小数に直す計算とは
分数から小数に変換する際には、分子÷分母をします。たとえば、$\frac{1}{4}$ の場合、1 ÷ 4 = 0.25 です。$\frac{1}{5}$ の場合、1 ÷ 5 = 0.2 です。
このように割り切れる場合であれば問題ありません。しかし、中には割り切れない計算もあります。
たとえば、分数の $\frac{1}{3}$ を小数に直す問題の場合、式は 1 ÷ 3 = 0.3333…となります。
割り切れませんから、おそらく四捨五入するよう問題に書かれているはずです。たとえば、もしこの問題で「小数第三位を四捨五入」と書かれていたのであれば、0.33です。
小数を分数に直す計算とは
小数から分数に変換する際には、次のような手順を踏んでください。
たとえば、「小数の 0.5 を分数に直す問題」で考えてみましょう。
まずは 0.5 = $\frac{0.5}{1}$ で考えます。分数の中に小数が組み込まれている表記では問題ですから、分母と分子にそれぞれ10 をかけて小数点を消します。
すると、0.5 = $\frac{5}{10}$ です。しかし、このままでは約分をしていないので分子と分母をそれぞれ最大公約数の 5 で割ります。よって、$\frac{1}{2}$ です。
では、少し難しい計算にもチャレンジしてみましょう。
0.146 を分数に直すとしたらどうしたらよいでしょう。まずは $\frac{0.146}{1}$ にして、分母と分子に 1000 をかけます。
そうすると $\frac{146}{1000}$ ですから、小数点が消えました。分母も分子も 2 で割ることができます。約分すると、$\frac{73}{500}$ です。
さらに歩合や百分率に直させる計算も
分数から小数に直したあと、さらに歩合や百分率に直させる問題もよく出ます。
歩合に直そう
たとえば、分数の $\frac{1}{2}$ を小数に直してから歩合に直すとするとどうなるでしょうか。
$\frac{1}{2}$ を小数に直すと 1 ÷ 2 = 0.5です。この 0.5 を歩合に直したら、どのようになるのでしょうか。
歩合において 1 は 10 割です。0.1 が 1 割、0.01 が 1 分、0.001 が 1 厘です。そのため、0.5 は 5割です。
百分率に直そう
分数の $\frac{1}{5}$ を小数に直してから百分率に直すとどうなるでしょうか。
$\frac{1}{5}$ を小数に直すと 1 ÷ 5 = 0.2 です。この 0.2 を百分率に直したら、どのようになるのでしょうか。
百分率において、1 は 100%、0.1 が 10%、0.01 が 1%です。そのため、0.2 は 20%です。
分数を小数に、小数を分数に直す問題を解かせてみよう
分数を小数に、小数を分数に直す問題を理解するには、実際に問題を解いてみるのが一番です。以下の基本問題を解かせてみましょう。
分数を小数に直す計算を解かせてみよう
以下の分数を小数に直しましょう。
分数を小数に直す際は、分子÷分母をします。
実際に解いた答え
- 2 ÷ 5 = 0.4
よって答えは0.4です。 - 3 ÷ 4 = 0.75
よって答えは0.75です。 - 5 ÷ 2 = 2.5
よって答えは2.5です。 - 3 ÷ 10 = 0.3
よって答えは0.3です。 - 3 ÷ 8 = 0.375
よって答えは0.375です。
小数を分数に直す計算を解かせてみよう
以下の小数を分数に直しましょう。
- 0.5
- 0.34
- 0.065
- 0.82
- 0.0125
小数を分数に直す際は、分子÷分母をします。
実際に解いた答え
- 0.5 = $\frac{5}{10}$
5 で約分して答えは$\frac{1}{2}$です。 - 0.34 = $\frac{34}{100}$
2 で約分して答えは$\frac{17}{50}$です。 - 0.065 = $\frac{65}{1000}$
5 で約分して答えは$\frac{13}{200}$です。 - 0.82 = $\frac{82}{100}$
2 で約分して答えは$\frac{41}{50}$です。 - 0.0125 = $\frac{125}{10000}$
125 で約分して答えは$\frac{1}{80}$です。
歩合や百分率に直す問題を解かせてみよう
- $\frac{3}{25}$ を歩合に直しましょう。
- $\frac{3}{5}$ を百分率に直しましょう。
- $\frac{9}{10}$ を歩合に直しましょう。
- 3 ÷ 25 = 0.12
よって答えは1割2分です。 - 3 ÷ 5 = 0.6
よって答えは60%です。 - 9 ÷ 10 = 0.9
よって答えは9割です。
四捨五入をする問題を解かせてみよう
- $\frac{2}{7}$ の小数第二位を四捨五入しましょう。
- $\frac{1}{9}$ の小数第一位を四捨五入しましょう。
- 1$\frac{2}{11}$ の小数第三位を四捨五入しましょう。
- 2 ÷ 7 = 0.285714……
よって答えは0.3です。 - 1 ÷ 9 = 0.111111……
よって答えは0です。 - 帯分数を仮分数に直すと13/11になります。
13 ÷ 11 = 1.181818……
よって答えは0.18です。
分数と小数の計算に挑む際、ありがちなミスって?
分数を小数に直す、あるいは小数を分数に直す計算では、よく間違いが起こります。どんなケースがあるのでしょうか。
分数から小数へ直す場合のミス
分数から小数へ直す場合の代表的なミスは以下のとおりです。
ひっ算で桁がずれる
分子÷分母の割り算をする際、複雑な計算だとひっ算を使う子供が多いです。ところが、ひっ算の書き方が雑然としているとミスが発生しやすくなります。桁の位置を合わせて書く癖をつけることが必要です。
分子÷分母ではなく分母÷分子をしてしまう
分子÷分母をするのではなく分母÷分子にしてしまうミスもよく見ます。こうしたミスをする子供は、分数をちゃんと理解できていないケースが多いです。
小数から分数へ直す場合のミス
小数から分数へ直す場合の代表的なミスは以下のとおりです。
約分をし忘れる
約分をし忘れるミスはミスの定番と言ってもよいぐらいです。必ず最後に分数を見直すよう子供に指導してください。約分をし忘れるタイプは、見直す癖が定着化していないケースが多いため、全体的にケアレスミスをしがちです。
分数にかける数字を間違える
たとえば、0.02 を分数に直す場合、まず $\frac{0.02}{1}$ にし、そのあと分母と分子にそれぞれ 100 をかけます。計算すると、$\frac{2}{100}$ になりますね。ところが、分母と分子にかける数字を 10 にしてしまったり 1000 にしてしまったりするミスがよくあるのです。そうした子供は小数部の数え方を復習することをおすすめします。
分数と小数の変換の問題は、基礎を固めさせてから
分数と小数の問題を解かせるにあたっては、ただやり方を丸暗記するのではなく、分数と小数がどういう関係にあるのかを理解させる必要があります。
分数と小数、百分率、歩合がどう置き換え可能かを視覚的に学べる知育玩具もあるので、機会があれば遊ばせてみるとよいでしょう。その上で、分数・小数に特化した問題集を、ぜひやりこませてみてください。
分数や小数の問題は、整数だけの問題よりも計算ミスが起こりやすいので注意しなければなりません。分数を小数に直す際には分子÷分母の順番で計算できているか確認しましょう。
小数を分数に直す際には、小数点の位置をチェックしてから計算に臨むよう促してください。さらに歩合や百分率に直す場合も、桁を勘違いしたまま解いてしまうミスが多いので、気をつけるよう呼びかけましょう。
ケアレスミスを多発しているなら、数字の書き方が乱雑になっていないかをチェックしたほうがよいです。日頃から「素早く」「読める字」で書くことを伝えておきましょう。