一般的に首都圏で中学受験対策といえば、小学三年生の二月からです。しかし、中には低学年のうちから対策をしている家庭もあります。この記事では、低学年からの中学受験対策としてどんな勉強をしておくべきか、科目ごとに紹介します。
国語・算数・理科・社会。低学年からの科目別受験対策
低学年からできる受験対策を科目別に見ていきましょう。
低学年からの国語の中学受験対策
問題集で勉強しても、なかなか点数アップにつながりづらいと言われる国語。どのように対策すればよいのでしょうか。
低学年で優先したいのは問題集よりも読書
低学年で最優先したいのは読書です。学年が上がるにつれて本を読む時間はなくなります。そのため、この時期は読書への関心を高め、語彙力や読解力を身に着けたいところです。
高学年になって、慌てて問題集だけで実力をつけようとする子供はたくさんいます。たしかに中学受験の国語対策では、多くの問題に挑む必要があります。国語の記述問題は、採点されるポイントをわかっていないと得点できないからです。マルをもらうためには相応のノウハウを知る必要があります。
一方で、そうした技術だけで太刀打ちできるほど、中学受験の国語は容易ではありません。早いうちから読書習慣を身につけておくと、やはり有利です。
読書しやすい環境を整えよう
できるだけたくさん、子供の興味をひく本を用意してあげるとよいです。好きな本にすぐに手を伸ばせる環境を整えてあげましょう。
ぜひ定期的に図書館に連れて行き、子供自身の手で本を選ぶ喜びを教えてあげてください。リビングに本棚を用意し、子供が自分の読みたいタイミングで手にとれるよう並べます。子供が特に気に入った本は、可能であれば買っておきましょう。
本を手あたり次第たくさん読むのもよいですが、気に入った本を繰り返し読む習慣も大切です。気に入った本であれば、子供は読み流さずに、ひとつひとつの言葉の意味や文意を理解しようと努めます。
読み終わった本の感想を親子で話し合うのもおすすめです。感想を言語化できるようになってきたら、今度はノートに感想をまとめるよう子供に促します。親はその感想を熟読し、共感できるところや興味をひかれたところにコメントを書いてあげましょう。
慣れてきたら感想に加えて、文章の添削もしてあげます。最初から添削に注力するとやる気をそぐ可能性があるので、様子を見ながら進めてください。文章の接続や言葉遣い、文体のおかしなところを直してあげるとよいです。その際には、ダメ出しをするのではなく「こうするともっと読みやすいね」とアドバイスする姿勢で臨んでください。
国語の中学受験対策でおすすめの知育玩具
国語の中学受験対策でおすすめの知育玩具は以下のとおりです。
「漢字はかせ 「へん」と「つくり」を合わせるゲーム」
遊びの中で漢字を覚える役に立ちます。小学生で習う漢字ばかりです。
「にほんごであそぼ ことわざかるた」
教育テレビで人気の番組「にほんごであそぼ」のことわざかるたです。
「57577ゴーシチゴーシチシチ」
短歌を作るゲームです。手持ちの手札で一番面白い短歌を作った人が勝ちになります。言葉で遊ぶ楽しさやさまざまな言い回しを覚える助けになるでしょう。作った短歌から、どんなストーリーが想像できるかをぜひ話し合ってみてください。
低学年からの算数の中学受験対策
難しいと言われる中学受験の算数。低学年からの対策はなにをするべきなのでしょうか。
計算力を培い、ミスを防ぐための取り組みを
中学受験経験のない親は、受験用の算数の問題を見て、だいたいぎょっとします。学校で習っていない計算も出ますし、そもそもの難易度が比べ物になりません。そのため、低学年のうちは、最低限学校での勉強を確実に理解しておく必要があります。
その上で、取り組むべきなのは、ミスなく、それでいてスピーディーに計算をこなす練習と、途中式をしっかり書くクセの定着です。
中学受験では、限られた時間で問題を解いていく必要があります。そのため、「いちいち途中式なんて書いていられないよ」と言う子供が多いです。しかし、だいたいそういう子供に限ってケアレスミスで点数を落としてしまいます。途中式を省いたり乱雑に書き殴ったりすると、字の見間違いからミスをしたり、見直しをしようにも字が判別できなかったりする事態に陥るためです。小さいうちから習慣づけておきましょう。順序としては、きっちり途中式を書く習慣づけをし、それが身についてから解くスピードを上げていきます。
計算以外でやっておきたいのは図形対策です。多くの学校で図形問題が出題されます。配点の高い問題での出題も多いです。しかし、子供たちの大半が口をそろえて「図形は嫌い」だと言います。とりわけ立体図形には苦戦します。中でも、立体を切断する問題では立体を想像する力が求められますが「わからない」と投げ出す子供が多いです。
立体図形へ苦手意識を持つ前に、知育玩具を使って遊ぶことをおすすめします。最近は立体パズルや知育系のブロックも多いです。ぜひ遊びの中で取り入れてみてください。
算数の中学受験対策でおすすめの知育玩具
算数の中学受験対策でおすすめの知育玩具は以下のとおりです。
「アルゴ ベーシック」
数字の並びから隠れた数を推理していきます。シンプルなルールですが、大人も頭を使います。
「空間パズル」
立体図形への想像力を育んでくれるパズルです。
低学年からの理科の受験対策
分野が多岐にわたる理科。低学年のうちに取り組んでおきたい内容はなんでしょうか。
子供向け図鑑を活用
早いうちから理科に関連することがらに興味を持たせておくと、学習がスムーズに進みます。子供向け図鑑をリビングに置いて、子供がいつでも手を伸ばせる環境づくりをしておきましょう。その子によって興味の方向性は異なるものなので、満遍なく読ませようとする必要はありません。興味のある分野をひとつ掘り下げていけば、関連する事柄が気になって、自然と他の図鑑にも手が伸びるようになるものです。映像付きの図鑑だと、より記憶に定着化しやすいでしょう。
遊びの中に理科を取り入れる
子供向けの化学実験図鑑を買うと、家にあるものでできる実験がたくさん載っています。水まきで虹を作るコツや、アイスクリームを作るコツなど、子供が大喜びする内容ばかりです。おすすめは小学館の図鑑NEOの「科学の実験」。子供と遊ぶときには、できそうなものから試してみてください。
もちろん、昆虫を採集し飼育するといった昔ながらの遊びからも多くのことが学べます。外遊びは植物や地学、天体を学ぶ絶好の機会です。親が先に図鑑を読んで解説してあげれば、通学路も公園も貴重な学びの場へと変化します。
「理科が好き」だと言う子供は、教科書から学ぶより先に、なにかしらの分野に関心を寄せて自分で調べて楽しんでいるケースが多いです。低学年のうちは、親子で楽しい遊びとして共有するやり方を目指しましょう。
理科の中学受験対策でおすすめの知育玩具
「中学受験マスターどこでも理科1〜3 お風呂ポスター 3枚セット」
中学受験に必要な理科の知識をまとめたお風呂ポスターです。毎日の入浴時間に楽しく知識を増やせます。
「電気回路実験キット」
電気回路も苦手意識の強い子供が多い単元ですが、遊び感覚で学ぶことができます。
低学年からの社会の受験対策
覚えなければならない知識が多い社会。低学年はどのように学ぶべきなのでしょうか。
歴史漫画で関心のきっかけを
よく「歴史を勉強する際は暗記ではなく流れを理解して」と説く先生がいます。もちろん、そのとおりなのですが、記憶しなければならない事項も多いです。早いうちから遊びを通して興味を引き出し、基本的な知識を身に着けておくとよいでしょう。
たとえば、歴史漫画シリーズを家庭に置いておくことをおすすめします。日本史も世界史も大手出版社から出ているので、余裕があれば全巻まとめ買いをして、手に取りやすいリビングに置いておきたいところです。
都道府県を早めに覚えよう
都道府県をギリギリまで覚えられない受験生が、毎年一定数います。その一方で、難関校狙いの子供は、低学年の段階ですでに覚えているケースも多いです。都道府県名を覚えると、一緒にスーパーに行ったときに、産地にも関心を示すようになります。旅行に行くときも、場所を認識した上で楽しめます。
社会の中学受験対策でおすすめの知育玩具
「学研の遊びながらよくわかる木製パズル日本地図」
パズルを使い、気負わず楽しく都道府県を覚えられます。
「地図記号かるた」
地図記号も早いうちから遊びの中で覚えておくことをおすすめします。
- 国語
読書の習慣を早いうちから身に付けさせ、語彙力や読解力を身に着ける。 - 算数
先ずは途中式を書く習慣を身に付ける、スピードを意識させるのはその後で。 - 理科
図鑑を基に親が先に知識を入れておき、子どもに解説しておくことで通学路すら学びの機会にする。 - 社会
都道府県を早めに覚えさせておき、行く先々の場所に興味を持たせる。
低学年のうちから楽しめる、受験にも役立つお出かけ先
楽しく親子でお出かけして、学びを得ることもたくさんあります。ここでは国語と理科と社会に関するお出かけ先を紹介します。
国語といえばやっぱり図書館。子供の興味を広げる借り方を
読書に力を入れている家庭は、図書館にも通い詰めていることでしょう。本を借りる際のコツとしては、子供が好きな本とその本に関連する本の両方を借りることです。
基本的には子供の好きな本を借りればそれでよいのですが、興味の幅をもう少し広げたいというときに同じ作者の本であったり、内容的につながっていたり、扱っている題材の図鑑であったりを足してみることをおすすめします。
理科のお出かけ先はたくさん。「面白い」がスタート
理科なら科学館やプラネタリウム、博物館、水族館、植物園、動物園がおすすめです。理科は分野が多岐にわたるため、行き先として選べる場所もたくさんあります。展示がある場所に足を運んでも、子供は解説を読み込まず、目につくものだけに飛びつくだけかもしれません。「面白い」と思うところからがスタートなので、それで十分です。
足しげく通う施設は積極的に年間パスポートを活用しましょう。だいたい年三回ぐらい通えば元をとれる施設がたくさんあります。
社会を学ぶには旅行が一番。足を運んだ経験が覚えをよくする
各地の地形や特産物、行事、気候などを学ぶには、実際にその場所へ足を運ぶのが一番です。長期休みに余裕があれば、ぜひいろんな場所を旅行してあげてください。実際、自分の行った経験のある場所について子供は嫌がらずに覚えます。その土地の歴史を学べる場所にもぜひ足を運びましょう。旅先ではぜひ、社会科見学を受け容れている施設も積極的に活用してください。子供の見ている世界を広げるチャンスです。
家庭でのフォローが難しければ教育サービスの活用を
低学年のうちからさまざまな学びの機会を作れたらよいのですが、なかなか家庭だけですべて対応するのは難しいものです。
受験に役立つ習い事としては、国語なら作文指導教室、算数ならアルゴクラブ、理科なら科学実験教室が挙げられます。しかし、そうした習い事すべてに通わせるのは費用面でも精神面でも難しいものです。親は送迎だけで毎日いっぱいいっぱいになってしまいます。
負担が大きい場合、送迎の要らない家庭教師サービスを活用するのも手です。家庭教師は家庭のリクエストに応じたカリキュラムで指導にあたってくれます。
家庭で親が必死になって子供に働きかけなくても、習い事を掛け持ちしなくても、家庭教師に「こうした内容をやってほしい」と伝えればそのとおりにやってくれます。送迎が不要な点もタイムロスがありません。低学年指導は比較的安く済むため、検討してみるのもよいでしょう。
低学年は学びの楽しさを知るよい時期
受験勉強が本格的に始まれば、学びの楽しさを知る機会も得難くなります。宿題と予習復習だけで毎日が終わっていき、「もういやだ」と投げ出す子供も多いです。「勉強≒押し付けられるもの」にならないためには、低学年のうちに知的好奇心を引き出してあげましょう。
国語も算数も社会も理科も、楽しく学べる方法はたくさんあります。家庭にちょっとした玩具を導入するだけで子供の反応は変わってくるものです。とりわけ、算数は苦手意識を持ちがちな科目なので、考える楽しさを早いうちから知ってもらいましょう。
学びとは遊びとつながっていて、けっして問題集を解くだけのものではないと教えてあげてください。難関校に受かる受験生はただ教えられた内容を覚えるのではなく、「どうしてそうなるのか」を考えます。知りたいと思う気持ちが育っているのです。ぜひ子供の知的好奇心を伸ばしてあげましょう。