日能研は大手中学受験塾としてよく知られています。生徒数の多さでは中学受験塾トップです。この記事では日能研に入塾・転塾する前に知っておきたい教材・テスト・クラス分け事情について紹介します。
日能研ってどんな塾?基本情報を知っておこう
最初に、日能研の基本情報についておさえておきましょう。
生徒数が多く中堅校に強い塾
日能研グループは、全国に140以上の教室を有し、その生徒数は約3万人。間違いなく、競争激しい中学受験塾の中でも最大手です。生徒数を集めているだけあって、日能研は幅広い志望校レベルに対応しています。けっしてサピックスのように難関校対策に特化した塾ではありません。
近年の合格実績を見ると、中堅校以下を志望する家庭にとって心強い塾だといえるでしょう。そのため、難関校や上位校受験メインの塾についていけなかった家庭の転塾先としても、高く評価されています。
近年、日能研における難関校レベルの合格率はそこまで高くなく、大手四塾の合格実績ではサピックス、早稲田アカデミー、四谷大塚、日能研の順番になります。
日能研の授業速度は遅め
日能研では、上位クラスであったとしても、授業速度は他塾よりゆっくりめに設定されています。時間をかけて思考力を育成するカリキュラムとなっているのです。逆に言えば、受験対策に割く時間はあまり多くありません。難関校志望者をメインターゲットにしている塾は、五年生までにほぼ受験範囲を終わらせて受験対策に臨みます。
基本的に中学受験塾は二月で学年が切り替わるため、一月までに学習を終えるのがスタンダードです。対する日能研は六年生の夏休み前までに、受験範囲を終わらせる配分になっています。つまり、五か月半以上の差があるのです。
なお、この二月から夏休み前までの五か月半の期間、多くの塾は徹底的にこれまでの復習をします。夏休みや秋頃からは過去問対策を始めるわけですが、その前にある程度実力を固められます。この点で、日能研は不利と言わざるを得ません。
しかし、日能研のこのゆっくりした進め方は、授業についていけない子供の数を減らします。結局、どれだけ急いで勉強を進めたところで、授業を理解できなければ意味がありません。塾の授業ペースが速すぎた子供にとっては、よい転塾先でしょう。
保護者との連携を重視
日能研は保護者へのフォローが手厚いことでも知られていて、頻繁に塾から保護者に状況を提供する機会を設けています。個別の面談以外にも保護者会や懇談会などが多く、受験を親だけで抱え込むようなことにはなりません。
日能研の教材ってどんな教材?
日能研の教材の使い勝手や評判はどうなのでしょうか。
日能研の教材の種類は
日能研の教材にはどんなものがあるのか以下見ていきます。
日能研のテキスト「予科教室」「本科教室」
三年生までは「予科教室」を、四年生からは「本科教室」を使用します。「本科教室」は「考えよう」や「深めよう」というタイトルで難易度が分けられています。
日能研のテキストでよく指摘されるのは「フルカラーではない」点です。四谷大塚や早稲田アカデミーで使用されている「予習シリーズ」の見やすさに比べると、印象が地味なのは否定できないでしょう。とりわけ、情報量の多い理科や社会に関しては、「フルカラーだったらもっとわかりやすくて便利だったのに」と思う家庭も多いはずです。ただし、その分、日能研のテキストはイラストや図がふんだんに使われていて、子供が読みやすいような工夫がそこかしこにされています。
また、本科テキストには「オプション活用」というページがあります。「オプション活用」は不足分を補うような問題が載っています。オプション活用まで手が回らない生徒も多いため、やるかやらないかは志望校レベルや生徒の能力によって変わってきます。基本的に入試レベルの難問が集められているため、上位クラスの生徒にとっては実力アップにつながるでしょう。
家庭で復習「栄冠への道」
日能研の「栄冠への道」は家庭学習用テキストです。他塾のこうした教材は、問題演習に特化したシンプルな構成になっていることがほとんどです。その点、日能研は「振り返り」に重きが置かれています。子供の心に寄り添う表現が取り入れられていて、他塾のテキストと比べてもかなり異色です。たとえば、勉強の導入部に子供の感情を問うような設問が配置されています。「日能研での自分の気持ちを振り返ってみよう」といった切り口で、子供の思考を促しているのです。
計算と漢字
日能研で基礎レベルを固めるために取り組む教材です。いわゆるドリルの位置づけで、時間をはかりながら解き、スピードと正確性をアップしていける内容となっています。
メモリーチェック
受験に必要な基本レベルの問題を集めた復習用テキストです。中学受験対策で必須の問題がピックアップされているため、絶対に解いておきたい内容となっています。厳選した情報を載せているため、厚みはありません。
算数強化ツール
「算数強化ツール」は「栄冠への道」と合わせて宿題として出されることもある教材です。実際の入試に対応できるよう、難易度の高い問題まで掲載しています。問題のレベルは、共通問題・応用問題と分かれています。
日能研は中堅校以下の層が厚い塾なので、応用問題レベルは必ずしもやる必要はありません。共通問題をきっちり解けるようにすることを優先しましょう。場合によっては「算数強化ツール」自体後回しにしても大丈夫です。レベルアップするための問題集であり、演習問題中心なので志望校レベルに合わせた取り組みが必要となります。
保護者から見た日能研の教材ってどう?
日能研は復習型の塾です。そのため、四谷大塚や早稲田アカデミーで使用している「予習シリーズ」のように、あらかじめ家庭で勉強する前提では作られていません。
そのため、子供に教える上で、難しさを感じる家庭もあるかもしれません。もちろん、子供が授業内容をしっかりと理解できていれば問題ないのですが、なかなかそうした子供ばかりではないため工夫が必要です。
日能研のテストってどんな仕組み?
日能研の代表的なテストについて説明します。
日能研のテストの特徴ってなに?
基本的に、日能研のテストは他塾と比べても、高学年のテストの種類がとても多いです。テスト結果はクラス分けにも影響するため、クラスによって指導内容が違う日能研においては、志望校に対応できるクラスに入れるよう頑張らなければなりません。
日能研のテストってどんなものがあるの?
日能研の代表的なテストについて紹介します。
学習力育成テスト
学習力育成テスト(育テ)は授業の理解度をチェックするためのテストです。二週間ごとに行われます。授業で学んだ内容をどれだけ理解できているかが問われます。
四~六年生対象の実力判定テスト
四年生前期は隔月で、四年生の9月以降〜六年生の4月までは毎月テストを実施します。自分の相対的な立ち位置を把握して、弱点を克服するためのテストです。
五年生対象のPRE合格判定テスト
五年生の12月に行われ、志望校8校までの合格判定が算出されます。
中学校・大学の会場では、最新の入試動向や学校情報を押さえた入試情報の説明、当日の出題解説を行う「合格支援保護者説明会」を開催しています。
六年生前期の志望校選定テスト
5月と6月に実施されるテストで、その名のとおり志望校選定を目的としています。ただ、テストの結果が出るだけではありません。今度、成績がどのように上がっていくかの予測も合わせて出るため、志望校がなかなか決められない子供にとって有益です。志望校・併願校の組み合わせの例が出るのも、心強いことでしょう。
六年生前期の志望校判定テスト
7月に実施されるテストです。志望校における合格の可能性がわかります。受験生には「志望者動向」が配布されます。
六年生前期の合格判定テスト
9月から開始し、トータル5回実施されます。さすが中学受験塾の最大手だけあり、全国12,000人以上が受験するため、膨大なデータを得られるテストです。同じ学校を志望する子供たちの順位や平均偏差値がわかります。合格判定結果は翌日にはウェブで配信されるため、スピード感があります。
六年生後期の合格力実践テスト
9月以降にトータルで5回実施されます。問題は選択制で「難関」か「総合」の二択です。「難関」は記述に特化した問題、総合はオールマイティに対応した出題となります。正誤表を通して自分の志望校の出題頻度がわかるため、受験対策に役立ちます。「ミスした問題の中で、全体の正答率が最も高かった問題を正解していたら、いったい何位だったのか」という仮定のデータも出るテストです。
六年生後期の合格力完成テスト・ファイナル256
12月と1月で計3回の実施です。3回にわたって繰り返し受けることで、弱点を克服し、志望校の出題分野の取りこぼしがないようにします。受験者全体の正答率および同じ志望校の受験生だけの正答率を算出し、どの問題が必須なのかを明らかにしてくれます。
時期 | テスト名 | 目的 |
---|---|---|
四年生 9月~六年生 4月 | 実力判定テスト | 相対的な立ち位置を把握 |
五年生 12月 | PRE合格判定テスト | 志望校8校までの合格判定 |
六年生 5、6月 | 志望校選定テスト | 志望校選定 |
六年生 7月 | 志望校判定テスト | 合格の可能性 |
六年生 9月~ | 合格力実践テスト | 志望校の出題頻度 |
六年生 12月~ | 合格力完成テスト・ファイナル256 | 志望者内での立ち位置と弱点 |
日能研のクラス分けってどうなっているの?
日能研のクラス分けの仕組みについて紹介します。
クラス分けの頻度と基準
日能研のクラス分けは四・五年生だと隔月、六年生だと毎月行われています。クラス分けの基準は隔週の学力育成テストと公開模試、日頃の学力をチェックして決められます。ひとクラスあたりの人数は20~30名ほどです。少人数制の塾が多くなっている中ではそこそこ多めといえるでしょう。
日能研のクラスはどういう編成?
日能研のクラス編成は教室によってかなり違うのが現状です。クラス名として「W」「M」「G」「R」といった表記がよく知られています。教室によってはこのアルファベットのクラスをさらにレベル別に細分化して編成しています。
しかし、これらの表記の基準は一律ではありません。まったくこうしたアルファベット表記を採用していない教室もあります。日能研に通っている人でも、他教室のクラス分けの表記はよくわからないことが多いようです。
そのため、クラス分けについて、詳細が知りたい場合は通う教室に問い合わせなければなりません。とりあえず、「応用クラス」と「基礎クラス」に該当するクラスがあり、教室の規模によって細分化されている、という認識でよいでしょう。テキスト自体はどちらのクラスも同じテキストを使いますが、季節講習では「標準テキスト」と「発展テキスト」に分かれます。学力育成テストの問題もクラスによって内容が異なります。そのため、上位校を目指すのであれば「応用クラス」レベルを目指す必要があります。
日能研でクラスアップを目指すには
日能研でクラスアップを目指すためにはクラス分けに影響するテストで好成績をとる必要があります。日能研の特徴は日常的な学力もチェックされている点です。クラスアップ基準が明示されていないため、自分のいるクラスで上位を目指すところから始めることになります。副教材を含め、たくさんの教材があるので、自分のいまやるべき問題集やそのレベルを把握した上で、取り組むようにしましょう。
- 頻度
四・五年生は隔月、六年生毎月 - 基準
学力育成テストと公開模試、日頃の学力 - 編成
「応用クラス」と「基礎クラス」があり、教室によってはクラス内で更に細分化 - クラスアップ対策
やるべき問題に絞って対策し、自分のクラス内での上位を目指す
中堅校メインの日能研ならではのよさを知ろう
日能研の教材はイラストが多用されていて、子供が構えずに臨めるような作りを意識しています。一方、フルカラーではないため、理科や社会など、色の情報があったほうがよい単元では、わかりづらく感じることもあるでしょう。
副教材も含めると教材の種類はたくさんあり、「どの問題集を優先するべきか」を見極めながら進める必要があります。志望校に最適なレベルのクラスを目指して学んでいきましょう。
クラスアップには、隔週の学習力育成テストや模試で好成績をおさめなければなりません。受けられるテストの種類は学年や時期によって異なります。日能研のテストは種類が多く、とりわけ六年生後期は受験目前とあって受ける回数も多いです。
日能研は難関校から中堅校まで広く合格実績を持つ塾ですが、中学受験塾の大手四塾の中では難関校にはあまり強くない傾向にあります。ただ、それは塾としての指導がよくないということを意味しません。授業速度がゆっくりとしている分、生徒の多くがついていきやすい塾なのです。