中学受験における難関校の合格率で、サピックスに勝る塾はありません。そのため、多くの家庭がわが子をサピックスに入れようとします。ただ、「サピックスは親にかかる負担が大きい」という声もたびたび聞こえてきます。この記事では、共働き家庭にとってサピックスはどういう塾なのかの紹介に加え、共働き家庭におすすめの中学受験塾について説明します。
サピックスを選ぶメリットってなに?
そもそもサピックスを選ぶメリットはどこにあるのでしょうか。
開成の合格率が68%!圧倒的な実績
サピックスに入塾させるメリットはなんといっても、その高い合格実績にあります。たとえば、2022年度の開成の倍率は、全体の合格者の68%をサピックス生が占めていました。麻布は52%、桜蔭は66%です。これほど高い割合をサピックス生が占めているとなると、「なんとしてもサピックスに入れたい」と考える御三家志望の家庭が多いのも頷けます。
サピックスのテキストは受験の出題傾向が即反映される
サピックスのテキストは、最新の受験問題を分析し、出題傾向が即反映されます。他塾のような書籍タイプのテキストではなく、小冊子やプリントがメインであるため、臨機応変な改訂が可能なのです。そのため、必要な内容を効率的に学ぶことが可能です。
サピックスの講師陣の質の高さ
サピックスは毎年多くの難関校合格者を出しているだけあり、指導力のある講師陣が揃っています。他塾のような自習室はなく、授業で学んだ内容を家庭で復習する復習型の塾です。授業の質への自信がなければできないスタイルといえるでしょう。
競争意識が高く、緊張感がある
上位クラスになればなるほど、緊張感をもって勉強に臨んでいます。中学受験塾はどこも生徒同士を競わせるため、成績を可視化しますが、サピックスも例外ではありません。サピックスでは最上位クラスをαコースといいます。このαコースはα1、α2、α3……といった具合にさらに細かく分けられ、αより下のコースはアルファベットで分類されます。
なお、Aが一番下のコースです。子供たちは、組分けテスト、マンスリーテスト、復習テスト、サピックスオープンといったテストの結果を受けて、コースを移動します。そのため、常に緊張感をもって勉強に臨んでいます。
- 難関校への合格実績が圧倒的に高い
- 講師陣の質が高くテキストのアップデートが早い
- 緊張感を持ち高い競争意識を持って受験勉強に取り込める
共働き家庭にとってサピックスは大変?
共働き家庭にとっては、サピックスのどんな点が大変なのでしょうか。
中学受験塾に共通する大変さ
サピックスだけではなく、中学受験塾に通うと、相応の負担がかかります。具体的には、学習のサポート、送迎、弁当作りなどです。ただし、学習のサポートにおいては、サピックスならではの負担もあります。
サピックスの宿題量や復習量は多い
サピックスで出される宿題量は多いです。復習しなければならない問題もたくさんあります。コンスタントにこなせない生徒にとっては厳しい環境です。
サピックスには自習室がない
「授業が終わったら自習室で勉強して、わからないところは先生に聞いてきて」といったスタイルがサピックスでは難しいです。そもそも自習室がないので、授業で学んだ内容は適宜質問し、あとは家に持ち帰ります。つまり、家庭でサポートしてあげなければなりません。
サピックスでは配布物が多い
サピックスは、他塾よりも配布物が多い塾として知られています。小冊子やプリントをその都度、整理しなければならないため、手間がかかります。B5の冊子とB4のプリント、テスト等を管理しなければならないのですが、少しでも手を抜くとあっという間にどこになにがあるかわからなくなります。配布物の管理は、子供の力だけではなかなかできることではありませんから、たいてい親がサポートすることになります。
過去の配布物を必要に応じて、やり直せる環境を作る必要があります。毎回プリントを探すところから始めていては、学習が効率的に進みません。
負担が母親に偏るケースも
サピックスに子供を通わせている共働き家庭もありますし、決して不可能なわけではありません。しかし、家族の協力がないと厳しいのは間違いないでしょう。昔は母親がサポート役を一手に担いがちでしたが、近年は母親と父親、家族構成によっては祖父母が力を合わせて子供をサポートするケースが増えてきました。
しかし、残念ながらさまざまな事情で、母親に負担が偏るケースもまだまだあります。その場合は、受験サポートをある程度外注することをおすすめします。たとえば塾の宿題を親が見るのは大変ですから、家庭教師の「塾の補習コース」に一任してしまう手もあるでしょう。もちろん、お金のかかることですから経済的な事情が許すことが前提になります。
サピックス以外では、どんな塾・教育サービスがおすすめ?
サピックス以外では、どんな塾がおすすめとして挙げられるのでしょうか。
中学受験塾の基本情報をおさえよう
中学受験塾の基本情報は以下のとおりです。
グノーブル
カリキュラムや指導の仕方がサピックスによく似ている塾です。グノーブルはかつてサピックスの主要メンバーだった講師陣が立ち上げています。サピックスよりは小規模であるため、競争意識や緊張感という点では見劣りがするかもしれませんが、その分面倒見のよさを評価されている塾です。大手四塾に比べると生徒数もまだまだ少ないですが、高い合格実績を出しています。
四谷大塚
四谷大塚は、中学受験において優れたテキストである「予習シリーズ」でよく知られています。直営校は東京・神奈川・千葉・埼玉に限られていて、加盟塾が全国的に展開するスタイルです。四谷大塚のカリキュラムやテストシステムはよくできていますが、加盟塾の指導力や面倒見のよさはその塾次第なので、気になる塾があるならば一度見学に行きましょう。
早稲田アカデミー
早稲田アカデミーは大手四塾の中ではサピックスに次いで、高い合格実績を誇ります。早稲田アカデミーといえば、鉢巻を巻いて合宿に臨む姿が有名です。いわゆる「熱血」「体育会系」のイメージがある塾で、その分面倒見のよい塾です。テキストやテストシステムは四谷大塚のものを採用しています。ただし、早稲田アカデミーのテストは隔週で、四谷大塚のように毎週テストを受けるわけではありません。
日能研
日能研は幅広い生徒を集めている、中堅校以下に強い塾です。カリキュラムの進度がゆっくりしているため、授業内容についていきやすい塾だと言えます。その分、出題範囲を終えるのが六年生の一学期なので、志望校対策に割く時間は少なめです。他の大手塾は出題範囲を五年生のうちに終えているので、焦る家庭もあることでしょう。ただ、出題範囲を素早く終えたところで理解できていなければ、得点にはつながりません。腰を据えて勉強できるのが日能研の魅力です。
おすすめの中学受験塾は?
入塾・転塾する理由によっておすすめの塾も変わってきます。たとえば学習のフォローに物足りなさを感じているのであれば、サピックスのメンバーが立ち上げた、面倒見のよいグノーブルを選ぶという手もあるでしょう。
四谷大塚や早稲田アカデミーのように、サピックスよりはついていきやすいカリキュラムの塾を選ぶ手もあります。自習室で居残って質問に行けるシステムも、働く親の負担を軽減してくれるでしょう。難関校や上位校狙いではなく中堅校狙いにするというのであれば、日能研もよい選択肢です。
塾以外のおすすめ教育サービスは?
塾以外におすすめできる教育サービスにはどんなものがあるのでしょうか。
家庭教師派遣センターの中学受験コース
家庭教師派遣センターの中には、中学受験のコースを設けているところがたくさんあります。「家庭教師のノーバス」のコースを一例に挙げると、「オリジナルコース」「日能研併用コース」「サピックス併用コース」「四谷大塚併用コース」「早稲田アカデミー併用コース」「各塾併用コース」「進学塾入塾テスト対策コース」「志望校別対策・過去問対策」「面接対策」「公立中高一貫校受験対策コース」と細分化されています。
家庭教師派遣センターによい先生を紹介してもらえれば、一対一の指導も効果的なものになるでしょう。先生をランク付けしている家庭教師派遣センターもあり、「よい先生に巡り合えるかどうか」について、塾よりも予測が立てやすい面があります。志望校受験において高い実績を持つ先生にお願いできれば心強いです。
通信教育+補習としての家庭教師
家庭教師の授業を週に複数回入れようとすると、当然ながら支出が大きくなります。しかし、そこまでは経済的な余裕がない家庭も多いことでしょう。
そうした場合は、中学受験用の通信教育の教材を自分で進めながら、補習だけを家庭教師に頼むやり方もあります。もちろん、通信教育だけで受験対策をすることも可能ですが、わからない問題を効率的に捌くためにはサポート役がいたほうがよいでしょう。
通信教育の一例をあげると、2022年度、Z会は開成に32名、桜蔭に18名、灘に14名と難関校の合格者を出しています。
オンライン家庭教師・オンライン個別指導
昨今は需要の高まりから、オンラインの教育サービスも充実してきています。オンライン家庭教師あるいはオンライン個別指導という名称で、一対一の指導を提供している教育サービスはたくさんあります。オンラインと聞くとコミュニケーションに不足が生じそうなイメージがあるかもしれません。
しかし、サービスごとにオンライン機能の充実化を図っているため、対面より便利になっている点もあります。たとえば、web上でノートを共有したり二画面式で授業を進めたりといったサービスです。感染症対策にもなりますし、オンラインの教育サービスは無視できない選択肢でしょう。
- 他の中学受験塾に転塾する
- 家庭教師に切り替える
- サピックス+αという形で家庭教師や個別指導塾を補填のために利用する
転塾・家庭教師や通信教育への変更を考えたときに
サピックスから転塾、あるいは家庭教師サービス等への変更を考えている家庭に、知っておいてほしいことは以下のとおりです。
子供がサピックスの勉強についていけない場合
子供がサピックスの勉強についていけない場合は、転塾や家庭教師、通信教育を検討してみましょう。ただし、塾ごとにカリキュラムの順序は異なりますし、使用している教材も異なります。転塾をするのは、子供にとって負担もかかることをあらかじめ理解しておくとよいでしょう。
その上で、ついていけないポイントが特定の単元ではなく、学習のルーティン自体であるのなら、塾のペースと子供のペースが合っていないのかもしれません。転塾も含めて考えるのがよいでしょう。
家庭教師はサービスの良し悪し、先生の当たりはずれがあるため、納得のいくまでサービス選び、先生選びをする覚悟が必要です。通信教育は自分のペースになりがちなので、家庭教師を補助的に活用することをおすすめします。
親がサピックスのペースについていけない場合
家事であれ育児であれ、塾の補習であれ、外注できるものは外注し、それでも立ち行かないようであれば転塾や家庭教師・通信教育を検討しましょう。
ただし、子供本人は退塾したくないケースも多いです。その場合は、子供とよく話し合う時間をとりましょう。そうしないと、受験自体へのやる気を失ってしまう可能性があります。
親は受験合格を目的としていても、子供の目的はそこにはないかもしれません。むしろ、受験合格ではなく、塾で友達たちと会えることのほうが主目的化しているケースはよく見かけるものです。再度目標を設定し、共有する必要があります。
サピックスが難しければ、他の選択肢を
共働き家庭で、サピックスに通い続けることが難しいと感じるようであれば、親子で話し合い、納得のいく対策を取る必要があります。育児や家事、あるいは塾の補習を親が一手に担うのではなく、外注できるものは外注しましょう。そうして負担を減らしても、まだ難しいようであれば、転塾や他の教育サービスを検討するのをおすすめします。
サピックスはどうしても上位クラスに重きを置く塾なので、下位クラスに身を置くのであれば他塾や家庭教師サービスを活用し、腰を据えて勉強するのもよいでしょう。
自習室のある四谷大塚や早稲田アカデミーを選ぶのもよいですし、サピックスによく似たカリキュラムで面倒見のよいグノーブルを選ぶのもよいです。中堅校以下を狙うなら日能研もおすすめします。家庭教師サービスを活用し、自分に合った指導を受けるのもよいでしょう。対面、オンライン、幅広い選択肢があります。
納得いくまで吟味しましょう。